森田洋一です。以下の文章は'97年8月5日付けの繊維経済通信にのったものです。
  私が講師をした「97年/夏季特別セミナー」の内容を報じています。
  ホームページはいつでも好きな場所を書き換えることができます。大変便利なのですが、言ったことの、書いたことの過去の記録というてんではあまり感心しません。いつでも変えられるのですから信用されませんよね。
  そのてん活字になって配布されたものは、後から修正が効かないので信用できます。それで、当時の記事を載せることにしました。
  ただ、私が直接記事を書いたわけではありません。講演のテープをもとに繊維経済通信の方でまとめた記事です。それで私はこうは言ってない。言うはずがない。という部分は最低限修正しています。それ以外の部分は、記事の文章をそのまま載せました。
  また、全体が長すぎますので一部割愛しました。
  全部読みたいという方は図書館でご覧ください。または当研究所までご連絡ください。

 
97年/夏季特別セミナー
大胆予測!
ファッションビジネス

=消費市場の変化を起点として、いろ・かたち・素材・ブランド・売り場の変化そして生き残りのための企業戦略を読む=


(1) 3つの約束
  私は講演に入る前に必ず3つの約束をしています。
  まず第1の約束は、ものごとを断定的にお話する。よくあるように、去年までの話はやたら詳しくてわかりやすいのだが、これからの話になるとあいまい模糊
として、皆さんが、「一体全体、どう判断したらいいのだ」と悩んでしまう講演が多いと思う。
  そういうことがないように気をつける。
  もし、「お前のの言い方は曖昧だぞ」ということがあれば、遠慮なくご指摘いただきたい。言い直したいと思います。ただし、わからないことはわからないと申し上げます。
  2番目の約束として、すぐこれからの話をする。これも私はよく言うのですが、10年後の話はだれも覚えてはいない。100年後の話であれば、だれも生きてはいない。皆さんが日々のビジネスで悩んでいらっしゃるのは、「今年どうしようか、来年どうしようか」ということだと思います。そのことを中心にお話してみたいと思います。
  ただし、再来年以降は全く役にたたないというのでは困るから、なるべく先々にもお役に立てるような話を
 
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−ファッションビジネス 2段目−
したいと思います。
  3番目に、仕事に直結する話をします。一般教養にはならないかもしれないが、きょうお帰りになってすぐお役に立てるような話をします。
  仕事に直結するすぐこれからの話、しかも断定的な話をするので、これからお話することが正しいか間違っているかはすぐにわかります。
  ですから、ここで私がしくじったら大変なことになるわけですが、しかし、そうならないという自信があります。
  まず今回の話の前半は、デザインの話について、特に形を中心に話したいと思います。後半は、ビジネスのやり方について触れていきます。
  どちらも流行が関係し、消費者の気持ち、消費者の行動を知ることが大事だという点で共通しています。
  後半の話は、現場の方よりも、社長さんであるとか部長さんであるとか、どちらかと言うと経営管理者あるいは
のもてる話になると思います。

(2)消費者に聞け
  私がこういう仕事に入るきっかけとなったのは、15年ほど前のことですが、ある大手自動車メーカーの研究室の方と一緒に共同研究したことに始まります。そのときの研究テーマは、自動車のデザインの科学的考察でした。そこで私は、流行は科学であると確信しました。
  ちょっと乱暴な言い方ですが、自動車には角張っている自動車と、丸い自動車があります。この二つに大別されます。丸い自動車がどのくらい丸くなっているかというのを、点数化しました。各年のベストテン車を取って、めちゃくちゃ丸いのはプラス1点。ちょっとだけ丸いのはプラス0.5点。逆にめちゃくちゃ角張っているのはマイナス1点。というふうにして、それの平均点を求めました。
  これを、アメリカ市場と日本市場の
両方でやってみました。表をみてお分かりの通り、平均点が波をうつように変化しています。ある時期、平均点が丸い方に寄ってしまう、つまり丸い自動車ばかり売れてしまう時代。それから角張っている自動車ばかり売れている時代がある。それからまた丸い自動車が売れる時代があるといった具合に波をうつ、つまり繰り返しています。
  アメリカの市場だと、これは戦前までさかのぼることができます。機械的に繰り返している。実際に、平均点が丸型の方に寄ってしまう時代と角張っている方に寄ってしまう時代が、かわりばんこに来ています。これがほぼ一定の周期で、繰り返し起こっています。
  例えば日本で、90年前後はどんな自動車がはやっていたかというと、パジェロ、レガシー等等。あの当時はやっていた自動車はみな角張っていました。逆に当時苦戦した自動車は、ブルーバード、トヨタカローラ等で、
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−ファッションビジネス 3段目−
丸っぽいデザインでした。
  一昨年発売されヒットした車にビストロがあります。この自動車の特徴は、開発費が普通の常識の100分の1で、売り上げが当初予定の30倍だということでした。大当たりを取ったデザインですが、何が違うかおわかりになりますか。レトロ車ということで、全体に丸みを強調しています。90年前後には丸い自動車が苦戦して角張った自動車がヒットしていたわけですが、最近は丸い方へ戻ってきました。
  ただ、以前のデザインに戻ったわけではありません。例えば、先ほどのビストロも丸っこいのですが、前回流行した丸い自動車とは形が違います。だから、繰り返しているといっても、同じ形を繰り返しているわけではありません。ほかのことには全部目をつぶって、ただ丸いか角張っているかだけに注目すると、繰り返しているという事実が見えてきます。
れるか、大きなヒントをつかむことが出来ます。それは丸っこい形であるということが予測できます。
  もちろん、これ1つだけではデザインできない。しかし、リスクは減ります。角張った自動車を作ってはいけないということだけは分かりますから、リスクは減るわけです。
  (別なグラフを示して) この表は輸入車のものですが、ドイツ車がアメリカ車の何倍売れているかというのをグラフにしてみました。
  ドイツにもアメリカにもいろいろな車がありますが、平均すると、ドイツ車の方がアメリカ車よりも丸い。アメリカ車は、シャープなエッジなどを強調するデザインが概して多い。
  ドイツ車とアメリカ車は、最初はそんなに差はなかったのですが、時代とともにどんどんドイツ車の方の人気が上がっていきました。相対的にアメリカ車の方の人気は下がっていった
のですが、90年代に入ってその流れが変化し、相対的にアメリカ車の人気が上がってきました。
  ところが最近、またこれが変化し始めました。
  ただ、これは輸入車の比率だから、例えば「ドイツの工場で作ったアメリカ車はどうなるのだ」とか、「日本のメーカーがつくった逆輸入車はどうする」等いろいろな問題があるので、何倍売れているかという個々の数字は大して意味がないと思います。
  ただ、傾向として、丸っこい自動車が売れていたのが、その後流行が鈍るようになったが、それが最近再び売れ行きが復調しつつあるということだけ憶えていただければいいと思います。
  こういう方法を15年前にやったわけです。このときに出した結論のとおりに変化しましたが、このやり方には問題点がありました。当時は、それはわかりませんでした。
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−ファッションビジネス 4段目−
  問題点の1つは、角張っているか丸いかというのは、厳密にいうと正しくない。正確に言うと、真っすぐか曲がっているかです。
  例えば、お店で服を飾るときにわざと、ナイロンテグスなどを使って服を曲げて見せたりということをします。それから、今もはやっていますが、ショルダーバッグでも斜め掛けというのがあります。
  だから本当は、真っすぐか曲がっているかという流行で、角張っているか丸いかというのは厳密には正しくはありません。
  例えば最近の歯ブラシでも、曲がったデザインのものが多い。これは剃刀でも同じ傾向がみます。今はこういう曲がったデザインのものがどんどん出てきています。
  ただ、自動車の場合は、人を乗せなければいけないし、エンジンを入れなければいけないというので、真ん中が
ふくらんだデザインにならざるをえません。だから、曲がっているデザイン イコール丸っこいデザインになるわけです。
  問題点の2つ目は、先ほどの平均点を取るというやり方は、仮需と実需の分離が不完全になります。
  私はよく言うのですが、ほとんどつくっていない商品、ほとんど仕入れていない商品はほとんど売れない。全くつくっていない商品、全く仕入れていない商品は全く売れない。
  結果として売れたか売れなかったかで流行を判定しようというこの表は、グラフをとるとゆがみます。しかも、完全な一定の周期になりません。それに近い周期になるが、何年何ヶ月という機械的な繰り返しでは出てきません。
  仮需が混じることによる問題点がもう1つ、タイミングが実際より遅れて出てきます。丸っこいデザインが本当に一番売れるときよりも、グラフの丸さの
ピークは後ろにきます。
  ただし、ベスト10車を数値化するというこの方法には長所があります。だからきょうお話したのですが、自動車というのは登録されているので、どんな自動車が何台売れたかわかっています。我々素人でも確認できます。例えば自動車工業振興会の資料を使ってもいいし、全く自動車業界と関係のない人でも確認できます。
  だから、皆さんの中で「おれはこんな繰り返しがあるなんて信じないぞ」という方があれば、私はたんかを切ろう。
「あなた、これをやってごらんなさい。自動車業界と関係のない人でも、どんな形が売れたか、何台売れたかというのは資料が公開されているのだから、点数にだしてごらんなさい。ちゃんと繰り返しがでてきますよ」と。
  これが衣料品業界と違うところです。衣料品業界は、どんな形の服が全国で何枚売れたか、だれも知らない。
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−ファッションビジネス 5段目−
  それともう1つ、今申し上げた曲がっているか真っすぐかというデザインの流行は、自動車だけではないということを言いたい。アパレル業界のウエアも一緒です。
  ということは、今は自動車では、曲線、曲面を強調した方に人気が移っていますから、服では、曲がっているデザインの方に人気が移っていることになります。
  例えば、タイトなパンツがはやるとき、以前だったら直線的なタイトなパンツが売れました。今は、ブーツカットとか、ラインを曲げることによってタイトを表現するパンツの方に人気が移っています。
  これはトップスでもそうです。前の真っすぐな時代は、例えばちびTなどがよい例だが、ただ単に直線的なままサイズが小さくなった。最近のはこれをボディシェイプだとか、曲線、曲面を強調してタイトにする方へ変わっている。
ユニークな上比長・下比長の理論、夏に長袖が売れる秘密

  今のは、「角張っている・丸まっている」からの流行について述べてみました。
  次に、上比長(じょうひちょう)・下比長(かひちょう)という、また別な形の流行について説明します。角張っているか丸まっているかよりも、こちらの方が服にとって重要な流行であると思います。
  服を着ている人を見たときに、上が相対的に間延びして下が詰まって見えるデザインと、逆に上が詰まって下が間延びして見えるデザインがあります。
  別掲写真のキュロットスーツをみますと左側も右側も言葉の上ではキュロットスーツですが、明らかにデザインが違います。左は上部が間延びして下が詰まって見えるデザインです。
右側は上が詰まって下が間延びして見えるデザインです。
  これは常識で考えても分かりますが、2つのデザインが同時にはやることはありません。一方のデザインがはやっているときは、もう一方のものははやっていない。
  これはキュロットスーツの場合です。次に自動車の場合を考えますと、先のキュロットの例と同じように、デザイン的には、上が詰まって下が間延びしているか、上が間延びして下が詰まっているかというのがあります。
  最近の自動車の例で言うと、ムーブという自動車があります。これは上が間延びして下が詰まって見えるデザインになっています。
  これは今、服でも一緒で、現在は、上が間延びして下が詰まって見えるデザインが売れる時代です。
  別表は、2年前にファッション商品の小売業界誌に発表した表に加筆して、
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−ファッションビジネス 6段目−
もう少し細かく具体例を加えたものですが、これが戦後50年間に何がヒットし売れていたかというのを表したものです。
  最後の表の左側が余白になっている。ここはこれから起こることなので、皆さんで記入していただきたい。
  このときに何がヒットしていたか、何が値段が通っていたかである。それを記入していただきたい。
  過去のものでもよい。若い方は別として、ある程度年配の方は、「おれはこのときにこういうものをやってもうかったよ」というご経験があると思います。それを記入していただければ、さらにこの表が充実することと思います。
  2年前にこれを発表したときに、私はこういう予測をしました。「これからロングトルソーが復活する」。言葉がが復活するのではなく、以前ロングトルソーと言っていたようなデザインが復活するという意味です。
  前回、上が間延びして見えるデザインがヒットしたときには、ロングトルソーという言葉がはやった。そのときと同じように胴体が長くなる。長く見えるデザインがあがってくると言いました。
  それから、ジャンパーが苦戦してジャケットがヒットすると言いました。当り前です。典型的なジャンパー、ブルゾンは、丈が短い。典型的なジャケットは丈が長くなる。
  だからこれも言葉にこだわらないで、そういうアイテムが象徴するするデザインの商品がヒットするとお考えいただきたい。例えば、名前がジャケットとついていても、スペンサージャケットは丈が短いから逆になります。
  だから、ブルゾンと言ってもいいし、ジャンパーと言ってもいい。ともかく、丈が短めのトップスが苦戦して、丈が長めのトップスがヒットする。
  それから、シャツアウトが復活すると言った。
シャツのように、ズボンやスカートの中に入れるのが当たり前のものを外に出すことが、今度は流行の先端になって、おしゃれな人ほどそれをやりたがるようになるということになる。
  それから、裾リブ、裾付属が復活すると言った。
  なぜ、裾リブ、裾付属が復活するか。先ほど、服を着ている人を見たときに上が間延びして見えるデザインがヒットすると言いましたが、例えば同じ丈のトップスを比べた場合、裾側に付属がついていると、上が間延びして下が詰まってI見えます。だから、上比長、上が間延びして見えるデザインが流行しているときは、裾側に付属がついたものに有利になります。
  一番わかりやすいのが、高校生がよく着ているセーターです。以前はなかったのだが、今はみんな付属がついています。
  ただ、これとよく似ているので
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−ファッションビジネス 7段目−
間違えるといけないのが、マウンテンパーカー型というか、ヘソの高さに紐がついているとか、切り替えがある商品です。これはショート丈のトップスとロング丈のトップスを重ね着したように見えるので、逆に下比長型のデザイン、というより途中の、移り変わりの時のデザインです。
  だから、あるデザインが上比長が下比長かの判断は、全身を見たときにどちらが間延びして見えるかということが優先しています。同じだった場合には、今度は単品で見たときにどちらが間延びして見えるかというのが、2番目に重要になってきます。
  (ホワイトボードに描いた、裾付属の付いたトップスの図と、ウエストに切り替えのあるトップスの図を指して、)この場合は、これくらい何かについていても、全身で見たときの比率は変わらない。だから、今度は単品で見たときにどちらが優先するか、どちらが
間延びして見えるかということがきいてきます。だから、これとこれは逆の流行だということです。
          市場予測 
  夏物なのに長袖が売れる。確かに長袖が今売れています。去年と今年は夏物で長袖が足りなくなっています。これが一番わかりやすいのがメンスです。サラリーマンのワイシャツです。というのは、サラリーマンのワイシャツは長袖と半袖しかないからです。
  去年、今年は長袖が足りなくなる年です。これもわかりますね。半袖と長袖のシャツを着た人を並べて比べてみるとわかると思いますが、長袖を着た人のほうが上が間延びして見えます。だから、長袖を着た人は上比長。上が間延びして見えるデザインが流行する時代は、長袖の方が需要オーバー、供給過小になります。
  今年の夏は猛暑でしょう。
これだけ暑いのだからもう半袖しか売れない、長袖など全然売れないということが起こってもよさそうなものですが、実際には(オジサン市場では)長袖が足りなくなっています。これが流行の現実です。〜略〜
         市場予測
  ショルダーバッグがヒットする(と業界誌で2年前に書きました)。今も出ていて、若い方はキャンパス地のショルダーバッグをぶら下げています。ショルダーバッグというのは普通のかばんに比べると柄の部分が伸びています。そのために上が間延びして見えるデザインのときにはショルダーバッグが出てきます。
  先ほどの自動車が角張っているか丸まっているかの話でも言いましたが、同じデザインが復活すると言っているのでは無論ありません。上が間延びして見えるか、上が詰まって見えるか
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−ファッションビジネス 8段目−
だけで見ると、かわりばんこに出てくるということです。〜略〜
          市場予測
  余談ですが、ファッション評論家の実川元子さんが先般、ある業界紙の「ファッション裏事典」というコラムに寄稿していた。タイトルは「ベスト」。
  「阪神タイガースが久方ぶりに好調なため、ファンとしては毎晩プロ野球ニュースを見るのが楽しみだ。だが、気になることが1つある。なぜ、スポーツ解説者やキャスターはポロシャツかボタンダウンのシャツの上にベストを着るのだろうか。
  たまたま梅雨寒の日だったせいもあるが、あるスポーツニュースで、並んでいる4人が全員ベストを着ていたことがあった。政治家がゴルフの時によく着るタイプだ。そこでつい、テレビスタジオで野球を論じるとき、ゴルフウエアのようなベストを着る効用が
どこにあるのかを一生懸命考えてしまった。暇ですね、私も……」と書いている。
  実川さんは高校生の娘さんがいらしゃる。つまりおばさんです。野球解説者は、昔は現役でバリバリならした選手でも、今はおじさんです。
  おじさんから見ると、ベストというのは格好いいファッション、ナウいファッション、あるいはそこまで行かなくても、「まあ無難やな」というファッションです。ところが、このおばさんから見ると、もうこれはダサいのです。「何、あの格好。それもそろって着ているなんて」ということです。
  ベストが売れるか売れないか、ベストが格好いいか格好よくないかと言うのは、いくつかの流行要因があるから、ベストがいつ売れたかを調べても、機械的なサイクルは出てきません。
  その中で1つ重要なのは、Sサイズの流行です。ここ何年か、
チビシャツが出てヤングで売れたが、小さいサイズの服、小さく見える服がヒットした。そのときに、当然ベストもたくさん出てきたわけです。
  ところがこれはもうすでに、おばさんのタイミングで、そのベストが気に入らないという方へきています。今、ちょうど、Sサイズの流行からLサイズの流行に変わってきている。
  だから、かばんや何かでも、若い人、ナウい人ほど大きいかばんを持つようになっています。サイズでも、ルーズで大きいタイプがこれからワアッと広がる変わり目に入っています。
  ただ、間違えてはいけないのは、先ほど言ったように、ベストに機械的なサイクルがあると言っているのではありません。これからもベストの流行はあるでしょうが、小さい流行です。今のような、ベストさえ着ていれば無難だという時代はもう終わりだということです。〜略〜
  
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−ファッションビジネス 9段目−
今、天然繊維調、流行は繰り返す
キーワードはかたくてネトネト

  さて、ここまでは車のデザインをもとに形の流行について述べてきましたが、次に繊維素材について触れてみます。
  現在は、「天然繊維が復活」と騒がれています。この天然繊維の流行がどこまで行くのかというと、96年春だから、去年、ヤングの女の人の商品力、魅力の方では、かたい天然繊維の流行のピークでした。
  ということは、ここから生産が増えてくるので、メーカーさんなどから見ると、この魅力のピークの辺りが流行のスタートになります。これからどんどん生産量がふえていく。いろいろな統計を取ってもどんどんふえていくということです。これがしばらく続きます。
  これが98年の秋冬になると、
今まではかたい天然繊維調だったのが、柔らかい天然繊維の流行に変わってきます。
  原料で見ると、天然繊維の流行は続きます。ウールの使用量、麻の使用量、綿の使用量や相場で見ると、それ以降も天然繊維の流行が続きます。だからここ当分は天然繊維ブームだと言うことが出来ます。
  だだ、本当に天然繊維らしい天然繊維が、値段が通って商売としておいしいのは、先のことではなくて今です。
  というのは、この流行を天然繊維というのは厳密に言うと正しくない。ネトネトしていると言うか、粘性の流行、ねばりけの流行なのです。かたさの流行でもあります。今は、かたくてネトネトしている素材が値段が通る時代に入っています。
  これの逆が、さらさらしてやわらかい繊維です。初期のころの新合繊などが典型的です。
  この流行には繰り返しがあります。
  正確に言うと、私はこの流行を「変形抵抗」と言っているのですが、形を変えること、変形させることに対して抵抗する性質の流行です。
  ネトネトしているというのは、形を変形させようということに対して抵抗している。それから、かたいというのも形を変形させようとすることに対して抵抗している。
  そうすると、両方、かたさとネトネトを足したものを考えると、この数字が大きくなったり小さくなったりということを繰り返している。現在は、変形抵抗の数字が大きい方が流行しています。
          市場予測
  紡績企業やメーカーに行き「同じ時期にヒットした生地、あるいは、同じ時期に止まった生地を並べてみてください」と頼みます。そして、並べてもらって、触ってみるとわかることは、 
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−ファッションビジネス 10段目−
かたいものはサラサラしていて、やわらかいものはネトネトしている。つまり、かたさとネトネトの合計が一定になっている。
  これは別に誇張していっているのではなくて事実です。
  (ホワイドボードに図を描いて、)こちら(縦軸上)がかたい。こちら(縦軸下)が やわらかい。こちら(横軸右)がネトネトしている。こちら(横軸左)がサラサラです。
  生地メーカーへ行って聞いてもそうなのですが、いついっても成り立っているのは、同じ時期に売れた生地、同じ時期に止まった生地を並べていただくと、(この図上で)こういう右肩下がりの線上に並ぶことです。
  かたい素材はサラサラしている。やわらかい素材はネトネトしている。この関係はいつでも成り立っています。
  ただ時期によって、時代によって、これ(右下がりの線)がこちらへ
行ったり、こちらへ行ったりしているのです。
  今は、こちら(右上)側に来ている。こちらが値段が通る。こちら(左下)が値段が通らない。一番通らないのが、サラサラしていてやわらかい素材で、初期のころの新合繊などがそうです。
  こちら(右上)がかたい天然繊維、麻だとかウールだとかそういうものです。これは今までがピークだから、これから今度は戻ってきます。
  ただ、これは、魅力のピーク、一番値段が通る、一番新鮮な商品で見ると戻るといっているだけで、これからこちら(右上)のほうの数の流行がくるので、メーカーさんから見ると、これからしばらくはこちらが続く。だから、これから5年後、10年後の話は別として、これから今年、来年ぐらいまでは、こちらオンリーで考えていただいた方が儲かる。(等セミナーにいらした)ほとんどの企業の方はもうかるはずです。 
        市場予測 
この、ネトネトしているかサラサラしているかというのは、原料と関係が深い。天然繊維調のものはネトネトしています。
  それから、かたいやわらかいというのは、後加工と関係が深い。撚りをどうしようかとか、太さをどうしようかということと関係しています。
  天然繊維ブームが来て、それが今度(逆へ)戻ってくるときは、今まで売れて
いたものの原料を変えるというのは、業界の人たちには抵抗があります。だから、加工で性質を変えようとするので、こちら(縦軸方向)の変化がこちら(横軸方向)の変化より大きくなります。ということは、仮需で見ると、これはこういうふうに回転する。
  実際の流行はこう(右上に)上がってこう(左下へ)下がってくるのですが、仮需で見ると右回りになります。
―――10――――――――――――――――――――――――――――ファッション予測と流行予測、次へ

−ファッションビジネス 11段目−
  これ(ネトネトしていてかたい時期)がすぎると今度は、仮需で見ると、ネトネトしているけれどもやわらかい繊維の方が値段が通るようになります。業界でもてはやされるようになります。ということは、やわらかい天然繊維調です。
  起毛させてやわらかくするとか、いろいろな方法があります。
  前回の例で言うと、超長綿ブームとか、海長綿ブームとか、それからハイゲージブームと、天然繊維をやわらかくすることによって値段を通そうとする流行がありました。
  今回も同じだと思います。
  逆に、こちら(図の左下)からこちら(右上)へ行くときは、それまで売れていた繊維、合繊はやめるというのはやはり抵抗があるので、それまで売れていた合繊をかたくすることによって値段を通そうという流行がありました。ジョーゼットブームなどです。末期のころの新合繊などというのはみんな
こちらでした。ポリエステルなどを硬くすることで延命をはかりました。


       
    
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01/11/6