−流行予測 1段目−
注、以下の文は「インテリジェンス+1」03年5月号に載ったものです。
超高層マンションブームの先行きに不安材料が出ている。経済誌の記事にも載るようになった。過去を振り返ってみると、マンション業界は好況と不況を交互に経験している。今回のマンションブームは5回目に当たる。マンション市況になぜ循環があるのだろうか。金利や税制、融資制度の変更など様々な理由が挙げられているが、実際につき合わせてみると、必ずしも理屈どおりにはなっていない。 私が「あり⇔キリギリス」と呼んでいる流行循環がある。人々が長期的、計画的に物事を見て行動するのが「アリ」、先のことを考えずに刹那的な行動をとるのが「キリギリス」である。 |
どちらも交互に流行している。キリギリスの流行期には、我慢をすれば使わずにすむことに金を使ってしまう人が増える。マンションや乗用車、家電などの耐久消費財が売りやすくなる。
私は先日パソコンを買い替えた。それまで使っていたパソコンが壊れて使えなくなったから買い替えたのではない。調子が悪くなり、性能にも不満が出てきたからである。これは私だけではない。パソコンを買い替える人のほとんどは、それまで使っていた物が壊れる前に買っている。それは他の耐久消費財でもいえることで、たとえば乗用車を買い替える人のほとんどは、それまで乗っていた車が壊れたから替えるのではない。調子が悪くなったから、性能やデザインに不満があるから替えるのである。マンションも同じである。終戦直後ではないのだから、夜露をしのぐ場所が今すぐ必要だという人は |
まずいない。それまで住んでいたのが手狭なマンションであるにしろ、古い賃貸住宅であるにしろ、我慢して住み続けることは可能であったはずである。
耐久消費財は、買う人の多くが、我慢すれば出費をしなくてもすむことに金を使っている。だからアリの時期になると、先々のことを考えて現金を残しておこうとする渋チンが増えるので売りづらくなる。それで、キリギリスの流行と正の相関を持つ。なかでも、豪華マンションやスリーナンバー車、AV家電など、必ずしも必需品といえないものと、キリギリスは相関が大きい。それで、こういうものは好不況の循環が特にはっきりしている。 もっとも、キリギリスと相関があるといっても、それだけで個々の耐久消費財の人気が決まるわけではない、荒っぽい近似ができるというだけのことだ。 |
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マンションブームをみてもサイクルが一定していない。今回はいつもより早めに人気が沸騰して早めに軟化している。
キリギリスの流行はピークを過ぎ、これからアリが復活してくる。高層マンション市況の不透明感はそれを先駆けている。むだ金を使いたくない渋チンが増えはじめ、価格感度が高くなる。ファッション業界では、デフレ対応のやりすぎを反省し、高価格帯を強化することが流行していたが、これからは、反省をしすぎたことが逆に問題になってくる。高ければ売りづらく、安ければ売りやすいという当たり前のことを再認識するようになる。次に消費者に価格抵抗の壁ができ、Tシャツならいくらまで、ジャケットならいくらまでという価格の上限ができてくる。 |
そして、消費者が価格にシビアになったことを表す流行語ができる。70年代のアリの流行期には「価格志向」というコトバがハヤった。その次のときは「良品廉価」あるいは「高感度低価格」であった。次のアリでは「価格破壊」が流行した。その次は「デフレ」であった。毎回流行語は異なるが、中身はそれほど違わない。流行語の使用頻度がピークになったころには、肝心のアリは終わっていたというのも共通である。
次は次回も同じであろう。時代を表す新しいコトバが広まったころには、次のキリギリスが復活してくるに違いない。 「ファッション不況のサイクルを読む」 |
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