注、以下の文は「インテリジェンス+1」03年3月号に載ったものです。 去年(02年)の百貨店は散々であった。 春夏の全国百貨店売上高は、3月をのぞいて前年割れが続いた。特に夏物の時期がだめで、同じように悪かった量販店をさらに下回った。稼ぎ頭の衣料品が低迷したことがこたえた。 そのなかでもひどかったのが魔の7月で、落ち込みの大きさは百貨店マンを嘆かせた。 その前の年(2001年)の百貨店は、不況のトンネルを抜けて回復基調にあった。それで、店舗改装や販促強化など、攻めの営業に転じはじめていた。そのやさきの不振である。攻めの営業をしたのにもかかわらず売り上げが落ちたのだから、ダメージは大きい。 秋冬になっても景気の良い話は聞こえてこなかった。 |
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ファッション業界の景気の動向を考えたとき、その原因として外せない流行がある。それを「超経験」と私は言っている。非日常性の流行である。 超経験のタイミングでは、面白いディティールや、派手なプリント、奇抜な加工などが売れ筋になる。 と同時に、タンス在庫を陳腐化させ、新しいウエアをいつもより魅力的にするので、衣料品全般が売りやすくなる。シンプルな服は売りづらくなるのだが、ファッション商品は鮮度の高さがもともと売りなので、超経験の流行は全体ではプラスに働く。 超経験の時は新製品や新提案が受け入れられやすくなる。これは衣料品でなくても同じで、たとえば乗用車でも、フルモデルチェンジの新型車がよく売れる。デザインがそれほど違わなくても新し い使い方を提案すればやはり売れる。 だから厳密に言うと、超経験は他の業界の景気にもプラスに働く。ただ、新デザインと新提案のカタ |
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マリのようなファッション衣料ではこの流行がより強力に働いている。 ファッション業界の景気の動向が、他の業界と一致していない場合があるが、一致しない理由の中で、この長経験の流行が大きな部分を占めている。 「目には青葉、山ホトトギス、初ガツオ」という言葉がある。同じカツオでも初物はより価値がある。超経験の時期の消費者は、この初物の新鮮さをより高く評価する。衣料品は、それぞれのシーズンごとに売れ出すのが早くなる。そのかわり落ちるのも早い。 去年(02年)の春夏は、百貨店の中心顧客であるミセスが、超経験とは逆の流行である「常経験」のタイミングにあった。今までと違っていることを評価しなくなっていた。 だから、大型改装をしても、いろいろなイベント |
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−流行予測 2段目− | |||||||||||
を行っても効果が薄かった。 衣料品に逆風が吹き、デザインに請った物ほど苦戦した。ミセスはシーズン先取りを評価せず、ジャストシーズンの服しか買わなかった。前倒しで投入した秋物が動かず、盛夏物は足らなくなって。機会ロスと見切りロスを同時に招いた。 秋冬も売れたのはジャストシーズンの物だった。秋物は晩秋になってもなかなか勢いが落ちず、早期投入した防寒物はなかなか動かなかった。 超経験と常経験は替わりばんこに流行している。今年のミセスは超経験のタイミングである。この流行に関しては、全部が去年と逆になる。 面白いデザイン、凝ったデザインの服が売れるようになる。シーズンに先駆けて買う人が増える。シーズンの切り替わりが早くなる。 ミセスは改装やイベントにも反応する。自分の普段の生活圏から離れた都心店の方を郊外店より支持する。 |
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そして、去年の反省をやりすぎた百貨店はこの変化に乗り遅れる。 04年10月1日当ページへ転載 08年6月2日レイアウト変更 追伸 このページの文章は02年の百貨店ミセスの話です。でも古く感じませんね。07年秋冬に百貨店ミセスで起こったこととよく似ているからです。 ファッション不況には循環があります。何もかも同じになるわけではありませんが、いくつかの指標に関してはほとんど同じことが繰り返し起こっています。つまり、ファッション不況も流行なのです。 この部分08年8月29日加筆 |
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