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     第2章 [曲]と[直]で流行が変る

       5 食品は、容器を変えても中身を変えても売れる

              内側も外側も同じ考え方を適用できます。
 

パッケージのデザインはこうなる

  耐久消費財の次は食品の話です。
  1999年に発売された缶コーヒーの「ファイア」です。
キリンビバレッジは八月に主力ブランドを刷新し、新たに『FIRE(ファイア)』を発売。メーカーシェアを七月の二・二%から九月、一気に一七・六%まで伸ばし、二位に躍り出た。 直火仕上げによりコーヒー豆本来の香りを引き出したのが特徴。CM効果と炎の形にエンボス(彫り込み)加工した
   
特徴的な缶のデザインが相まって、消費者をひきつけている。」(日経流通新聞1999年11月6日付6面「売れ筋Special」より)
  エンボス加工は、かなり前ですが、衣料品でも流行ったことがあります。
  乗用車「ウィルヴィアイ」のところで、表面にデコボコを付けるのも「曲」の表現だとお話ししました。このエンボス加工もフラットな面をデコボコにするので「曲」です。
  缶コーヒーの缶はもともと円筒形なので、けっこう丸いのですが、それが当たり前なので、円筒形というだけでは〔曲・直〕の循環に対してほとんど中立です。
   
「曲」、「直」どちらにも入りません。こういう、循環要因のシーソーのどちら側にも属さない中間のデザインを「参照点」と言います。この参照点の位置にある形に対してどちら側に振れているかで、その商品の「曲」「直」が決まります。エンボス加工は、丸い円筒をさらに曲げますから「曲」です。
 当時は、「20歳の女性で『曲』が1997年10月から99年6月まで」ですから、1999年8月発売の「ファイア」は、流行に間に合わなかったように見えます。でも缶コーヒーのヘビーユーザーはオジサンなので、それを考えるとちょうど良いタイミングです。 
  この「ファイア」の1年余り後に出たのが、
 
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−流行予測 37段目−
日本たばこ産業(JT)の缶コーヒー「ルーツ」です。
『今月は完敗だ』。十月の主要コンビニエンスストア各社の販売時点情報管理(POS)データがはじき出した缶コーヒーのブランド別売り上げ順位を見て、サントリーの商品企画担当者はため息をついた。JTが九月下旬に発売した『ルーツ』が初登場で2位にと躍り出たのだ。」(日本経済新聞2000年11月23日付12面12版「攻防缶コーヒー」より)
JTは『ルーツ』の発売に向け、胴体の一部がくびれたユニークな形状の缶を採用。多額の広告宣伝費も投入し、一気に大型ブランドとする戦略だ」(同)
  缶コーヒーは円筒形なので、側面が1次曲面です。これにくびれを入れたことで一部が2次曲面になりました。1次曲面が当たり前のものを2次曲面にすると、そのデザインは「曲」になります。逆に、2次曲面が当たり前のものを1次曲面にすると「直」です。ようは参照点に対してどちら側に来ているかということですから、曲面のなかにも「曲」「直」の区別があるわけです。
  「ルーツ」が出た時の「曲」は「ファイア」と同じ
   
でしたから、「20歳の女性で、1997年10月から99年6月まで」です。「ルーツ」の2000年9月発売というのは、20歳の女性で「曲」の時期が終わり、「直」の活性期に入ってから1年以上たっています。
缶コーヒーのフアンはオジサンが多いということを考えても遅い方に寄りすぎです。遅い方に寄っていると、一時的にはヒットしても、定番として生き残る力がいちじるしく弱まります。*1
  斜めドラム式洗濯乾燥機の話で、垂直や水平が当たり前のものを斜めにすると丸いところがなくても「曲」型デザインになるという話をしました。食品にも同じタイプのデザインがあります。ここでは、その例として紅茶のティーバッグを見てみましょう。
最新週の日経POSデータでは、同社が今春発売した「 リプトン イエローラベル」二十五袋入りがシェア一二・四%でトップ、五十袋入りが〇・四ポイント差で続く。
  ピラミッド型のティーバッグにしたことで紅茶が広い空間を動くため、紅茶の香りや
   
□を△にすると曲おいしさをより引き出すことに成功したという。」 
(日経MJ2002年6月1日付「テレコン・POS情報」より)
  これまでのティーバッグは、縦線横線で囲まれた四角い形でしたが、それを斜めの線が多い三角に、平べったい形を立体的に変えました。ですから、「曲」型デザインです。斜めだらけなのですから丸くなくても「曲」です。
  当時の「20歳の女性は『曲』が2001年4月から02年12月まで」ですから、ピラミッド型ティーバッグが発売された2002年4月は50歳前後までの女性が「曲」でした。タイミングとしてはちょうどいいのではないでしょうか。
  じつは、三角バッグの紅茶は以前からあります。片岡物産の「トワイニング紅茶 三角バッグ・リーフティー
 
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−流行予測 38段目−
がそれです。こちらも、リプトンと同じ三角錐です。三角にした理由は、紅茶の葉を十分に開かせるためということで、リプトンとは少し違います。ティーバッグ用の茶葉ではなくて、ポットに入れるタイプのリーフティーを使ったので大義名分が違ってきたのでしょう。
  この「トワイニング紅茶 三角バッグ・リーフティー」が発売になったのが、1991年の初め頃です。当時は、「20歳の女性で『曲』が1990年10月から92年6まで」でしたから、ちょっと早めですね。事実、主婦だけでなく若者にも人気だったそうです。 
  いままでは、食品といっても容器の形でした今度の話は、食品そのものが「曲」になっています。以下の記事は、即席カップ入りスープのシェアランキングの話しです。
味の素が八月十七日に発売した『クノール スープパスタ』が絶好調のスタートを切った。
 一位の『きのこクリーム』(シェア四八・五%)と二位の『完熟トマト』(同三三・九%)を合わせたシェアは八二・四%に達する。
   
 ラセン型のショートパスタをスープに絡ませて食べる新しいタイプの商品。『きのこクリーム』のカロリーは百九十キロカロリーと、それだけでも軽い食事になる。
 関東地区限定にもかかわらず上位を独占。一層の市場の拡大を目指し、十六日からは関西、東海地区でも販売を始める
」(日経流通新聞2001年11月3日付より)
  関東地区でしか売っていないのに、8月の発売で、10月末のシェアが82%ですから圧勝です。   当時の「20歳の女性は『曲』が2001年4月から02年12月まで」ですから、「曲」のスタート直後の爆発です。ヤングと超ヤング(子供)が熱烈に支持したのでしょう。
  食品の場合、形より味の方が重要なので、大爆発したのをラセン型パスタのせいだけにするのは乱暴すぎます。でもラセン型が、消費者を引きつけている理由のかなりの部分を占めていることは間違いありません。
  やはり、容器よりも食品そのものが「曲」になっている方が強力ですね。では、そういう例をもう1つ。
   
クルクルと何でも巻いてしまう「巻き現象」について述べた清水優子さんのリポートからの抜粋です。
「プランタン銀座(東京都中央区)は13日までの2週間、地下の洋菓子売り場でロールケーキを一堂に集めた『くるりんロールケーキフェア』を開催している。
 チョコレートとプレーンのスポンジを虎模様に仕上げた『タイガーロール』や、マロンクリームとクリを包み込んだ『抹茶ロールケーキ』など目にも舌にもおいしい約30種がそろう。企画したフーズ担当の加園幸男さん(37)は『ロールケーキは祖父母の世代まで楽しめるお菓子の原点。素朴さが見直されているのでは』と話す。
 02年8月、世界的に活躍するパティシェ、辻口博啓さん(37)がロールケーキ専門店『自由が丘ロール屋』(同目黒区)を開店。盛り上がったロールケーキ人気は衰えず、屋内型テーマパーク、ナムコ・ナンジャタウン(同豊島区)は来年1月末まで、 約150種を集めた『ロールケーキ博覧会』を
 
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−流行予測 39段目−
開催中だ。」(毎日新聞2004年12月10日付14面12版「何でも巻いちゃえ」より)
  ロールケーキは外側の形が円筒形に近いので、一応「曲」ですが、カットしていないケーキはたいてい丸いので、それだけなら、特別「曲」を強調したデザインとは言えません。ロールケーキを「曲」にしているのは、その断面の渦巻きです。
  当時の「20歳の女性は『曲』が2001年4月から02年12月まで」でしたから、「自由が丘ロール屋」が開店した2002年8月は60歳代前半までの女性が「曲」でした。ほとんどの女性をとりこにできるタイミングです。結果は大当たり、ほかの高級フランス菓子店もつぎつぎと参入しました。
  お菓子のもっと新しい流行では、ロッテが2005年2月1日に発売したチョコレート「エアーズ」があります。細かな気泡が入ったチョコレートで口どけのなめらかさを売り込んでいますが、これは他社がすでにやっているのでそれほど新鮮ではありません。
  「エアーズ」が新しいのはそのパッケージです。
   
箱を組み立てる時の山折り線が直線ではなくて波うっています。それにつられて箱の上面と正面が波状にゆがんでいます。わずかな変形ですが、我々には、箱は直方体に決まっているという思い込みがあるので、このくらいのゆがみでも立派な「曲」型デザインに見えます。
 「20歳の女性のタイミングで『曲』が2004年10月から06年6月まで」ですから、2005年2月1日発売の「エアーズ」が出た時は、若い人だけが「曲」だったわけです。事実客の中心は中高生になりました。曲型パッケージの流行は、これから男性や中年へと広がっていきます。
  缶コーヒーの「ファイア」はエンボス加工の凸凹で「曲」を表現しました。今度はパッケージ全体を凸凹にした例です。次の記事は、日経MJの「新製品週間ランキング」です。
4位に急上昇したサントリー『ウーロン茶 500mlペットボトル』=写真=は、ボトルを従来の直方体から面を増やしたクリスタルカットに改めたもの。
   
パッケージより中身見た目で味を引き立てようと言う試みが奏功した」(2005年6月24日付9面より)
  発売日が2005年6月14日で、ランキングの調査期間の途中だったので4位でしたが、実際の勢いはもっとあります。この直後から1位を長期間続けました。
  サントリー「ウーロン茶 500mlペットボトル」で、前と変わったのは容器だけです。フラット型から、凸凹型に変えました。つまり、容器の魅力だけで人気を押し上げたわけです。
「20歳の女性のタイミングで『曲』が2004年10月から06年6月まで」ですから、比較的若い人が支持しているとわかりますね。
  食品は、パッケージの形よりも、そのものの形の方が優先します。そのものの形よりも味の方が優先します。
 
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−流行予測 40段目−
味のトレンドは、「曲」「直」とは周期が違う別な循環要因に従っています。形の流行に、〔曲・直〕だけでなく、他の循環要因が関係しているのと同様に、味の流行にも複数の循環要因が関係しています。
 
  味以外のことに関しては、中身の食品も外側のパッケージもはたらく循環要因は同じです。中身で成功したことはパッケージでも試してみましょう。パッケージで成功したことは、中の商品でも試してみましょう。
 
  流行は人気者を作りますが、人気者は流行を作りません。あなたが売りたがっている商品を、人気タレントやスポーツ選手を使って、その人気だけで流行させることはできません。ただ彼らは、小ヒットを中ヒットに、中ヒットを大ヒットにすることならできます。

 
 
   
 
 
*…弱まります。
日清食品のチキンラーメンの人気が西高東低なのは、発売時期が違っていて、西の方が早かったからだ。
 
(続く)
 
07/07/5転載、08/09/29更新、
14/11/10レイアウト変更
     
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