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 欧州がカジュアル後進国になる
注、以下の文は、オンワードライフデザイン発行の「インテリジェンス+1」03年9月号に載ったものです。欧州において「ジャパンクール」が流行することを当時予測していました。衣料品では、コスプレやゴシックなどの日本発ヤングカジュアルファッションが実際に欧州で受け入れられましたね。
 
半年ほど前、今秋冬のコレクションが、ミラノ、パリ、東京と相次いで開かれた。どこもエレガンスファッションのオンパレードであった。昨年はカジュアルを主張していた東京コレクションも、今年は欧州と同じくエレガンスである。ブッシュを支持する小泉さんのように従順だ。
 
だが、エレガンスといっても欧州と東京では追求の度合いが微妙に違っていた.欧州が大人のエレガンスを堂々と発表していたのに比べて、東京コレクションのエレガンスには何かためらいが感じられた。

どこの国のデザイナーも当然、教科書に出てくるようなクラシックなエレガンスを、そのまま発表しているわけではない。崩したりゆがめたりと、それぞれ独自性を主張している。その崩し方が東京の場合、欧州より大きいのだ。日本のデザイナーはエレガンスになりすぎることを恐れている。
 
欧州のコレクションがエレガンスなのは、欧州のストリートの流行をそのまま反映しているからだが、日本はそうではない。今の日本のストリートファッションはエレガンスではない。カジュアルである。世界の潮流に逆らうのは怖い。日本のお客様に逆らうのはもっと怖い。…ということで日本のデザイナーは腰が定まらない。エレガンスとカジュアルの間を行ったり来たりしている。
 
エレガンスブランドは、ひところは飛ぶ鳥を落とす勢い
だったが、このごろ元気がない。客を引きとめようと、デザインをカジュアルに寄せることで生き残りをはかっている。それでも、よりカジュアルなブランドへとヤングの流出が続いている。百貨店のドル箱だったOLも、これまでのOL御用達ブランドからヤングカジュアルブランドへと、支持する店が変わってきている。それで、同じフロア内でも好調ブランドの入れ替わりが起こっている。それだけでなく、OL向けブランドを集めすぎた百貨店から、ヤングカジュアルブランドが集積しているファッションビルや駅ビルへと客の流出が起こっている。それはファッションビルも同じで、エレガンスブランド、OL御用達ブランドを集めすぎたビルの苦戦が始まっている。
 
以前のエレガンスの流行期には、大学生や高校生が日焼けを避けるようになり、OLっぽいお姉さまファッションにあこがれて、そういう店にヤングが集まった。
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−ファッション予測 2段目−
小中学生もお姉さまファッションにあこがれた。ヤングブランドをそっくりコピーしたジュニア服の売り場に子供が群がり、大人のように化粧をしていた。
 
カジュアルの流行期にはこれが逆になる。ファッションリーダーの年齢が若くなる。OLやヤングミセスのほうがピュアヤングの影響を強く受ける。
 
先ほどのコレクションの話でも触れたが、欧州と日本ではエレガンスの流行期が大きくずれている。欧州がカジュアルで日本がエレガンスのときは、欧州のほうが、カジュアルファッションに対する関心が強くなり、新しいデザインの市場拡大スピードが高くなる。それで、インポートセレクトショップやインポート下着のように、欧州ファッションの直輸入がビジネスになりやすい。あるいは、欧州のストリートファッションを日本のデザイナーがコピーして発表しても「クリエーション」として通用してしまったり、市場調査と称して向こうの店で売れ筋を大量にサンプル買いし、それをそのままコピーして売っても、企画力があるとほめられるなどということが起こる。
 
今は、日本がカジュアルで、欧州がエレガンスであるから、以前の日本人が欧州へ行ってやっていたことを、あちらのファッション業界の人がやる番だ。日本のストリートファッションのコピーが欧州のコレクションに出てくる。あちらの企画屋がサンプル買いにやって来るようになる。
 
私は、今まで経験したことのない特別なことが起こると言っているのではない。欧州の業界人が日本に通い詰める流行は、過去の同じタイミングでは毎回起こっていることだ。2度あることは3度ある。3度あることは4度ある。今回も同じことが起こるはずである。
 
 04年11月2日当ページへ転載
 

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−ファッション予測 3段目−
以下、08年10月8日加筆
現在(08年10月)は、この原稿を書いた当時とほぼ逆のタイミングに来ている。つまり、これからの日本と欧州の関係は当時と逆になる。
 
@ 日本のカジュアルブランドは元気が無くなり、離れていく客を引き留めようとエレガンスシフトする。
A ジュニアがハイティーンのマネをし、ハイティーンが20歳過ぎのマネをし、20歳過ぎが0Lのマネをする。OLがファッションリーダーになるとともに、彼女らが支持するデザインがミセスっぽくなる。
 
B 「逆ジャパンクール」が流行する。欧州における日本文化の影響力が落ち、反対に、日本では欧州の流行の影響力が強くなる。それで、欧州の文化を積極的に紹介したり、そのままコピーしたりすると、成功の確率が上がる。
 
この流行については拙著「理詰めのトレンド予測」(秀和システム)に詳しく載っています。
13年11月26日に以下を加筆
カジュアルとエレガンスは12年周期で交互に流行しています。カジュアルのピークからエレガンスのピークまでが6年、エレガンスのピークからカジュアルのピークまでも6年、合計12年です。この文章が書かれたのが03年ですから、今から10年前になります。ということで、あと2年でこの文の12年後になります。つまり、2015年がカジュアルの次のピークとなります。山登りに例えると、今(13年11月)はカジュアル化の7合目といったところです。アダルトメンズのように遅い市場では3合目です。早くても遅くてもカジュアル化が進んでいることにはかわりありません。つまり、この文に書かれているようなことがこれからまた起こるということです。そちらに向かって進んでいるということです。
 
日本がカジュアル山の頂上に立ち、そのことに欧州の人たちが気がついたとき、「ジャパンクール」の流行が欧州でまた起こります。「ジャパンクール」という言葉は復活するとは限りませんが、当時と似たような現象が欧州で起こります。
 
でも、そうなるのは日本がカジュアル山の頂上に登った後ですから、これから何年も先の話です。2016年ごろからでしょうか。日本のマスコミがそれに気がつくのはそのさらに後です。役人や政治家がその流れにうまく乗ってやろうとして、政策提言なんかを始めるのは、前回の事例から推定するとさらにさらに遅れて2022年ごろになるかもしれません。2022年と言えば、日本では次のエレガンスのピークが来ているタイミングです。逆だろうが!大外れ!」  
 
【関連ページ】
長期的に今どんなトレンドが来ている
 
欧米の方が遅れている流行もある
 
次は
「シブチンが増え、売れる価格帯が動く」
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最終サイト更新 13年11月26日