第6章 [エレガンス]と[カジュアル]もしくは[束縛]と[自由]
8 欧米のほうが遅れている流行もある 「ジャパンクール」が世界のトレンドです
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流行のタイミング(位相)は
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す。
もしタイミングが同じなら、日本が「エレガンス」の時に欧州も「エレガンス」で、日本が「カジュアル」の時に欧州も「カジュアル」になります。これだと、〔エレガンス・カジュアル〕の循環要因に関しては、日本と欧州の相対的位置関係が変わらなくなります。 これは、2車線の直線道路を並行して走っている2台の車のようなものです。速度も同じ、加速減速の量もタイミングも同じなら、2台の位置関係はずっと同じままです。横並びならいつまでたっても横並びだし、どちらかが後ろを走っていれば、その車はいつまでたっても後ろです。 ただ、実際は、欧州と日本では〔エレガンス・カジュアル〕のタイミングが違うので、また2台の車にたとえると、日本が前へ飛び出すこともあるし、欧 |
州が前へ飛び出すこともあります。それはどちらも12年に1回ずつ起こります。
これまでは日本が「カジュアル」でした。欧州はそうではありませんから、日本の方が前を走っていました。それで、日本が欧州の後ろを走っていた時に通用したノウハウが使えなくなりました。 ここ数年は、欧州のショップで買ってきた商品をそのままコピーして売ると、失敗が以前より多くなりました。欧州の人気ショップの内装やビジネスモデルをそっくりまねて日本でやると、仲間内やマスコミはともかくとして、肝心の消費者が反応しません。 デザイナーが、欧州のコレクションやストリートファッションをそっくりまねてデザインを発表すると、量販店の店員にもばかにされるほど遅い商品になりました。欧州からの直輸入品は、その価格の高さを納得させられるだけの鮮度が維持できなくなりま |
−トレンド予測 150段目− | |||||||
した。
そうなった原因は、日本と欧州の相対的位置関係が、6年前とは逆になっているということですから、以前日本で通用していたけれど、このところダメになっていたこういうノウハウが、欧州では使えるようになっていました。 日本のショップで買った商品をそのままコピーして欧州で売ると、実際に売れることが多くなりました。日本オリジナルの人気ショップを、そのまま欧州へ持っていった場合、成功の確率が以前より高くなりました。 日本のデザイナーが欧州へ進出した場合、向こう で評価される、つまり成功する可能性が上がりました。日本からの直輸入品は、その鮮度の高さを評価されました。これを日本人がやれば輸出です。 以上の話は、「理屈の上」ではなくて、すでに実際に起こっているできごとです。 次の文は、欧米人のサンプル買いについての坂下宗弘*1のリポートです。 「渋谷109*2にまた足蹴く通うようになって、思ったのが、海外のお客様が増えたこと。アジア圏だけでなくアメリカ? ヨーロッパ? なお客様がどうみても増えてる.。」 |
(http://plaza.rakuten.co.jp/paradisegarage/2006年4月19日付より)
「いつの間に増えたのか西洋の方(ふるっ)。白人って表現で大丈夫? ほんといつの間に増えたのってぐらい眼につく。アジア圏のお客様より見た目でわかるってのもあるけど…。女性の方二人ずれとかならまだしも、西の海外の方が男一人でショップ袋を二つも三つも持ってマルキュー*3の館内を歩いている。そんなのもちょくちょく見かける。 もしか、サンプル買い*4?? どうみても、そんな海外のお客様もいる。実際、コレクション見ていてあんた、マルキューのあそこパクったでしょ! そう思えるものもある。 ほんとうのところ、どうなのか店長に聞いてみると、 『海外のお客様が多いです。結構、買ってくれま〜す』。――英語喋れるの? 『ぜんぜ〜ん』。――どうやって接客してんの? 『『This is No1! No1 Selling』これで押し切っちゃいます。ナンバーワンに弱いですよ、海外の人って』。 ほんまかいな? それってやっぱりサンプル買い? 普通におみやげ!?かな? ワンフレ |
ースで押し切るのはいいけど、顔に似合わずたくましいのね、店長さん。」(同)
日本ブランドの進出もすでに始まっています。 「新興メーカーの間で海外進出熱が再び盛り上がっている。以前と異なるのは、日本のカジュアルブランドへの評価が高まって進出が求められている点だ。合同展からの参加要請や、海外のショールームがブランドを発掘する動きが目立っている。有力店のバイヤーの来日も目立ち、世界への挑戦がにわかに現実味を帯びてきた。」(繊研新聞2006年1月4日付15面より) 「デザイナーの高倉一浩さんは東京発のカジュアルブランドに対する関心の高さを実感している。『ヨーロッパのバイヤーにとっては新鮮で、バランスの良さが評価されているのでは』と言う」(同) この流行は、消費者ではなくて供給側のそれですから、「自由(カジュアル)」の活性期だけでなく、「自由と束縛の中間」の時期になっても続きます。 2008年からヤング市場は「エレガンス(束縛)」になります。すると、これまでダメだったビジネスがよくなり、良かったビジネスが悪くなります。 |
−トレンド予測 151段目− | ||||||||
欧州のショップで買ってきた商品をそのままコピーして売ると成功するようになります。 欧州の人気ショップの内装やビジネスモデルをそっくりまねて日本でやるとヒットしやすくなります。デザイナーが、欧州のコレクションやストリートファッションをそっくりまねてデザインを発表すると、それなりに評価されます。欧州からの直輸入品は、その生きの良さが評価されます。デザイナーやメドインジャパンの海外進出は失敗が増えます。
業界がそのことに気付くのはもっと後ですから、あなたが始めればフロントランナーになれます。 |
*1 坂下宗弘
人気ブログ「パラダイス・ガレージ」の管理者。 *2 渋谷109 渋谷にあるファッションビル。セクシーカジュアルの中心。 *3 マルキュー 渋谷109の愛称。 *4 サンプル買い コピーして作ることを目的に商品を買うこと。 【関連ページ】 欧州がカジュアル後進国になる 09/03/25転載 |
目次 0 / 第1章 流行の原因には「特定要因」と「循環要因」の2つがある 1-1 / 1-2 / 1-3 / 1-4 / 第2章 「曲」と「直」で流行が変る 2-1 / 2-2 / 2-3 / 2-4 / 2-5 / 2-6 第3章 デザインの流行は「上比長」「下比長」に分かれる 3-1 / 3-2 / 3-3 / 3-4 / 3-5 / 3-6 / 3-7 第4章 「同一視」と「対立視」を知って流行を読む 4-1 / 4-2 / 4-3 / 4-4 / 4-5 / 4-6 第5章 「アリ型人間」と「キリギリス型人間」は交互に現れる 5-1 / 5-2 / 5-3 / 5-4 / 5-5 第6章 「エレガンス」と「カジュアル」もしくは「束縛」と「自由」 6-1 / 6-2 / 6-3 / 6-4 / 6-5 / 6-6 / 6-7 / 6-8 第7章なぜ、まったく同じ流行が起きないのか(3つの理由) 7-1 / 7-2 / 7-3 / 7-4 「理詰めのトレンド予測 ウエブ版」1段目へ トップページへ |
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