SPAの潮流と消費者心理サイクル 日本型SPA(製造小売業)またはメーカー系SPAと呼ばれる企業群が、ヤング市場でここ数年破竹の勢いで勢力を伸ばしてきた。すでに店舗数は、旧勢力のヤング専門店チェーンをリョウガしている。 それが去年(98年)の後半になって、さすがのメーカー系SPAにも息切れが見られるようになった。今まではSPA絶賛記事が多かったファッション業界紙も、このごろは批判的意見も載せるように変わってきている。 バブル時代に大手ヤングレディスチェーンが手がけていた旧SPAと今のSP |
Aは、やり方が根本的に違うという主張が今までは通っていた。 だが、旧SPAのやり方を冷静に振りかえってみると、今のSPAのやり方とそれほど違わない。違ってみえたのは、メーカー系SPAの成功があまりにも鮮やかだったからである。 同じようなことをしていても、勝ったか負けたかの結果が違っていたので評価も逆になっていてのだ。スポーツ新聞とプロ野球の監督の関係に似ている。 旧SPAの失敗は、今ではだれの目にも明らかである。大手専門店チェーンは、その後遺症に現在も苦しんでいる。 だが、敗戦組みSPAといえども初めから苦戦していたのではない。最近のSPAほどではないが、始めた当初はそれなりに利益をあげていた。だからこそ、バブル崩壊で破綻したとはいえ急激な出店攻勢に出ることができたのだ。 当時のSPAのやり方はこうである。 |
――まず、シーズン初めに多様な商品を少量ずつ店頭に並べる。この中には自分のところで企画した自社オリジナル商品もけっこうある。 次に、その中から売れた商品を見つけ、前もってラインを空けておいた協力工場ですばやく追加生産をする。他社の売れ筋も、気がついた時点でつぎつぎと投入していく。それを可能にするために縫製工場や生地屋には極端に短い納期を要求する。当時は、QR(クイックレスポンス)という言葉は一般化していなかったが、やっていたことは今のQRと同じである。 そのシーズンのテーマだコンセプトだと言っているのはシーズンの初めだけである。後からの投入商品は、今売れているかどうかで決めるため、店頭の商品バランスは急激に崩れる。 DCブランドなどで以前見たことがある商品が買いやすい価格で出ている。 |
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ー2段目− | |||||
コピー商品だから、売っている時期はオリジナルより当然遅いのだが、それなりに値段もこなれている。それで消費者は、あの欲しかったデザインが私にも買えると感激して買う。 こういう保守的な消費者が多かった時は旧SPAは採算があっていた。ところが、消費者が商品に鮮度と個性を要求する、私が「対立視」と呼んでいる時期になると苦戦が始まった。 今回のSPAブームは、前回と出ている役者が違うし、時代も違う。旧SPAブームと全く同じ結果になるとまでは私も思わない。 ただ、他人と同じ物を欲しがり、デザインに妥協し、商品寿命が長い、コピー商品にとって有利な、私が「同一視」と呼んでいる時期に同じようなことをやっているのであるから、次の「対立視」の時期になったときの結果もそれなりに似ているはずだと考えている。 同一視の流行のピークはミセスで97 |
年、ヤングは96年である。 どちらにしても今はピークを過ぎた下りである。同質化コピー商品にとって不利な「対立視」の時期がめぐってきつつある。 (トレンドセッター99年3月号より) 01年9月13日追記 対立視の流行はすでにピークを過ぎた。これからまた同一視があがってくる。これは消費者の本能の循環の結果であるから必然である。 日本型SPAまたはメーカー系SPAと呼ばれていたビジネスモデルも元気を取り戻すだろう。 だがそれは、「日本型SPA]、[メーカー系SPA」というネーミングの復活を必ずしも意味しない。 ビジネスモデルも服のデザインと一緒で、ほとんど前と同じモノが復活したときに前回とは名前が変わってしまう場 |
合がある。だから、「日本型SPA」という言葉が復活するかどうかは分からない。コトバの流行の研究を後回しにしているので、前回と同じネーミングが復活するかどうかは現時点では断言できない。 私に分かるのは、「日本型SPA」、「メーカー系SPA」と呼ばれていた所と全く同じやり方、あるいはほとんど同じやり方をする所が出てきて、そこが成功するということである。 それをマスコミは新しいビジネスモデルであるかのように報道するかもしれない。 だが、全く新しい商売のやり方などというものはめったに出てくるものではない。多くの新ビジネスモデルは、既存ビジネスモデルの順列の入れ替えか、皆が忘れてしまった旧ビジネスモデルの復活である。そのてんでは、服のニューデザインとなんら変わらない。 |
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秋冬苦戦の反省は間違いだらけ
更新'01年10月10日
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01/10/15