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     第2章 [曲]と[直]で流行が変る

       3 家電やケイタイを正しく分類すれば予言者になれる

              いままでが簡単に説明できれば、これからも簡単に説明できます。
 

機能は、流行を大きくし、長持ちさせる

  乗用車の話が続いたので、ここで話題を変えます。「ブルーフレーム」という英国製石油ストーブの話です。
  ブルーフレームは昔からあるストーブで、私は、子供のころに叔母の家で使っていたのを覚えています。今でも売られているストーブですから若い方も知っているかもしれません。石油ランプの技術をもとに作られたストーブで、形も石油ランプに似ています。 縦に長くて、垂直線を軸にした軸対称です。下が膨らんだ円筒形に近い形です。つまり「曲」です。
   
この「曲」型石油ストーブが1960年秋から冬にかけて大ヒットしました。きっかけは雑誌「暮らしの手帖」に載ったことです。
それは目玉企画『商品テスト』につながる。複数メーカーの商品の性能を自前で試験して結果を誌上で報告するもので、商品の売り上げを左右した。石油ストーブを取り上げた五十七号(六〇年)では、英アラジン社製『ブルーフレーム』が一位となり、飛ぶように売れたという。」(日本経済新聞2004年3月14日28面「芸文百話」より)
  当時は「20歳の女性で『曲』が、1959年4月から60年12月まで」でしたから、石油ストーブを
   
取り上げた「暮らしの手帖1960年12月5日号」が出た時期は、性別年齢ともかなり広い範囲の消費者が「曲」になっていたタイミングでした。だからヒットしました。ブルーフレームがヒットしたのは、「暮らしの手帖」がほめたからではありません。芥川賞や直木賞を取って、ジャーナリズムの注目を集めた作品が、すべてベストセラーになるとはかぎらないのをみても分かるように、マスコミがほめても売れないときは売れません。たとえマスコミがほめなかったとしてもかなり売れたであろう商品を、マスコミがほめたから大ヒットになったわけです。
 
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−流行予測 37段目−
機能は育ての親   「ブルーフレーム」が「曲」型デザインだったのは、それがカッコよかったからというよりも技術上の要請でした。同じように技術上の理由で丸くなったものに、電子レンジの回転テーブルがあります。
  「入社五年目の七三年、営業部の係長だった町田*1は、回転テーブル式の電子レンジ販売で名をあげた。加熱むらを抑える効果が一目で分かる茶碗蒸し作りの実演を発案。自らエプロン姿となり店頭で調理してみせた。これが評判を呼び、レンジのシェアを二年で三倍に急伸させた」(日本経済新聞2000年8月21日付「リーダーの研究」より)
 回転テーブル式がヒットした1973年といえば、巨人がV9を達成し、オイルショックがあった年です。
   
「20歳の女性で『曲』が1973年4月から74年12月まで」ですから、ドンズバというよりも早めのタイミングです。その結果ロングセラーになりました。ロングセラーを作るには、この、早すぎるほど早くというのが鉄則です。
 
  つぎはリクルート事件があった年、1988年2月に発売の丸み強調家電の話です。
三洋電機の単身者用二槽式洗濯機『コパ(COPA)の売れ行きが好調だ。発売は今年二月だが、『このクラス最大のヒット商品』(量販店)になっている。 『二‐四月実績は計画に比べ四〇%増』(三洋電機)で、今後もこのペースが続きそうだ。
  『かわいらしさ』を前面に押し出したのが受けた。従来の洗濯機には見られない丸みを強調、後側面カバーがない前周デザインで、どの方向からでも使える。タイマーのダイヤルも半球形。体積もこれまでの二・二`c(洗濯容量)クラスに比べ二五%小さくコンパクトだ。
   
排水ホースは底部に収納し、外観をスッキリまとめている。
  『遊び心があり、洗濯機らしくないものを』が開発コンセプトで、デザインにこだわる一人暮らしの女子大生をターゲットにした。購入者アンケートでも『デザインのよさ』を八〇%以上の人がトップに挙げている。色は白、グレー、ピンクの三色。洗濯層、脱水層の内側も同色でコーディネートしている。
  若者向け商品とあって、洗濯機というのを避けて『シングルズ・ウォッシャー』と名付けている。購入者は一八‐二〇歳が半数近くを占め、残りも大半は二〇歳代。性別では女性が六〇%と多いが、『意外に単身赴任の男性も買って行く』(量販店)ようだ。
」(日経流通新聞1988年5月19日付より)
  当時は、「20歳の女性で『曲が』1987年4月から88年12月まで」でしたから、1988年2月発売の〔コパ〕はタイミングが合っています。回転テーブル式電子レンジは機能と結びついていましたが、これはそうではありません。 買うほうもファッションだと思っています。
 
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−流行予測 38段目−
こういう「曲」は衣料品の「曲」と同じですから、短命になりやすいことが欠点です。
  つぎは、技術や機能と結びついたデザインの例です。
  若い方は知らないかもしれませんが、昔のテレビの画面は角が丸くて中央部分が手前に出っ張っていました。セッケン箱のフタのような形でした。見る側の人間にとっては、映画のスクリーンのように平らで長方形になっていた方がいいのですが、技術上の都合で、そういうおかしな形にならざるをえませんでした。
  消費者が、四角くて平らな画面で番組を見たいと思っていることは、家電メーカーも当然知っていましたから、時代とともに、ブラウン管の顔の部分は、より平らに、より四角くなっていきました。そして、ブラウン管式テレビとしては究極まで平らで四角い画面のテレビが出ました。1997年7月発売のソニー「WEGA(ベガ)シリーズ」がそうです。
業界全体では販売が低迷するテレビも、ソニーの平面ブラウン管を搭載した大型テレビ
   
『ベガシリーズ』は突出した売れ行きを示している。外見上、他社製品との違いが明らかな点が受け入れられており、中村末広専務は『今年度の国内テレビ販売台数は前年度比六〇%増が見込める』と家電不況などどこ吹く風だ。」(日本経済新聞1997年12月5日付13面12版「減速感強まる大型消費財」より)
  当時の「20歳の女性は『直』が、1996年2月から97年10月まで」でしたから、「ベガシリーズ」が発売になった1997年7月は、女性なら60歳代半ばまで、男性なら40歳代までが「直」の時期でした。発売のタイミングはドンピシャリだったことが分かります。
  平らで四角い画面が「直」の活性期にヒットしたからといって、「曲」のタイミングになったら曲面のブラウン管が流行るかというと、それはありません。平らで四角い画面がそうでないものより優れているという考えは、この時期に限らずいつでもあります。「曲」の時期だってあります。だから、人気は曲面ブラウン管に戻らないのです。
   
  とはいえ、「曲」の時期になればその影響は当然あります。「直」の時期には、平面ブラウン管が優れているという考えがより強くなり、評価するようになっていましたが、「曲」になるとそれほど評価しなくなります。つまり、平面ブラウン管は、「曲」のタイミングでは過大評価から過小評価に変わります。そのため、販売スピードが落ちたり、値崩れを起こしたりします。
 
  曲面強調型の曲の話が続きましたので、歯ブラシのように、軸線が曲がっているタイプの曲の例を出しましょう。軸線が「曲」のタイプだと、「曲=曲がってる」という関係がストレートでわかりますよね。
  私が最初に使った携帯電話は平べったい棒状の一体型でした。今使っているのは二つ折り式です。あなたも同じではありませんか。あなたの携帯電話も以前は「真っ直ぐ」な一体型で、今は「曲がってる」二つ折りではないですか。
  携帯電話が真っ直ぐな棒状から、二つ折り主流に変わったのは、1999年2月発売のNEC
 
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−流行予測 39段目−
N501 i 」の大ヒットがきっかけです。
  じつは、二つ折りの携帯電話の流行は「N501i」が初めてではありません。その前にもヒットしています。まずその前史から。
メーカー各社は端末の小型化にしのぎを削っていたが、小さくするほど、口と通話口の距離が離れていく。『距離を縮めるため、端末の形にカーブをつけたら』と考えた。 商品化の課題は、端末が厚ぼったくならないよう、薄く作ることに尽きた。全部品の薄型化に『あと〇・〇五_』と微細な加工への挑戦を続けた末、当時の自社製一体型機種で厚さ四・二a、重さ六百六十cだったのを、厚さ三・二a、重さ二百五十cまでスリム化した二つ折り機種を、九一年に発売することができた。しかし、思わぬつまずきに見舞われた。
 珍しさもあり、最初は飛ぶように売れたのだが、数か月後、ちょうつがい部分のケーブルが切れるなどの不具合がわかり、売り上げが一気に落ち込んだ。問題を解消しても評判の回復は
   
機能性と商品寿命難しく、二つ折り型の売れ行きは低迷した。
  だが、そんな中で田村さんらはあきらめずに開発を続けた。『画面の面積が広くとれ、ボタンの誤作動も防げる二つ折りのメリットが、見直される時代が来る』と確信していたからだ。読みが現実になったのは、九九年二月。NTTドコモの携帯電話インターネットサービス『iモード』の開始で、画面が見やすい二つ折り型の人気が爆発した。
  二つ折り型は、ちょうつがい部分の強度確保や、独特な回路仕様の設計に高度な技術が必要で、他社は一朝一夕には追いつけない。その結果、十一社がシェアを奪い合う『iモード』用端末の半分以上をNEC製が占めるようになった
   
(読売新聞2001年4月11日付11面13版「21世紀日本企業」より)
  「20歳の女性は『曲』が、1990年10月から92年6月まで」ですから、第1回目に二つ折りが流行した1991年は、4周期前の「曲」にピッタリ当てはまっています。ということは、1回目の流行はヤングが中心だったわけですね。 二つ折りとしては2回目の流行になる「N501i」の発売が、iモードの開始と同じ1999年2月ですから、「20歳の女性は『曲』が、1997年10月から99年6月まで」ということを考えると、支持する人の年齢の幅が1回目より広かったと想像できます。
  ここで気をつけなければいけないことは、インターネットサービスの i モードが二つ折りの大流行を作ったわけではないという点です。第1回目の流行は、 i モード無しで起こっています。 i モード無しでもヒットできるわけです。そこをカン違いしてはいけません。
  ただ、二つ折りが i モードに向いた機能であったことで、流行が大型化しましたし、長寿命化しました。 i モードに向いているという機能は、二つ折りの
 
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−流行予測 40段目−
流行を作りませんでしたが、メーカーにとってとびきりいい方へ、二つ折りの流行を変形させました。それが第1回目のときは、すぐに壊れるというマイナスの機能が、流行の短命化をもたらしました。
  第1回目と第2回目のどちらの場合も機能は、流行の規模を小さくしたり大きくしたり、短命化させたり長命化させたりと、流行を作るほうにではなくて変形させるほうに働いています。
 
  デザイン(見てくれ)で物を買うことに後ろめたさを感じる人はけっこういます。客があなたの商品を買うとき、その形に機能の言い訳が付けられるのなら、その言い訳を客に教えてあげましょう。
   
 
*1……係長だった町田
後にシャープの社長になる町田勝彦氏のこと。  
 
(続く)
 
07/06/7転載、08/09/25更新、
14/12/05レイアウト変更
 
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