−トレンド予測 1段目−
(日経新聞11年10月13日付31面11版、より抜粋)[デジタルフォトフレーム
デジタルカメラや携帯電話で撮影した写真をそのまま飾れるデジタルの写真立て「デジタルフォトフレーム」が家庭に広がってきた.紙の写真立てとは違い多くの写真をスライドショーのように楽しめたり、動画も再生できたりする点が受けている。結婚式の記念写真や子供の成長記録を入れたギフトとしても利用が増えている。]
[調査会社のGfKジャパンによると、家電量販店での販売台数は前年比3〜4割減で |
推移しているという。
◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇ モード工学の森田洋一です。左の記事をもとに流行予測の説明をします。消費者が商品を判定評価するときの基準を「参照点」と言います。私の造語ではありません。行動経済学で使われている用語です。何でもかんでも森田語では話が通じにくくなりますので、他の分野の用語でもモード工学の説明に使えるのならこれからもどんどん取り入れるつもりです。
|
消費者がデジタルフォトフレームを見たときの参照点は何でしょうか。デジタル無しフォトフレーム、つまり普通の写真立てです。デジタルフォトフレームが家電量販店にたくさん並び、広告が大量に流れるようになったのは最近のことですから、大多数の消費者にとって全く新しい商品です。判定基準はデジタル無しフォトフレームしかありません。これは、初期の電気釜、初期の電気こたつ、初期の電気冷蔵庫の参照点が電気無し○○だったのと同じです。
写真立てに入れる写真は原則1枚です。デジタルフォトフレームでは何十枚もの写真を入れます。それを同じ写真立てで重ねてみます。 |
|||||||
−トレンド予測 2段目−
もちろんスライドショーには時差があって、ある特定の瞬間に映っているのは1枚です。何枚も同時に見るわけではありません。が、前の写真を忘れる前に次の写真が出ますので、消費者の頭の中では複数の写真が混じります。つまり複合します。デジタル無しフォトフレームを参照点にしている消費者にとって、デジタルフォトフレームは複合商品なのです。 私が言っている「複合」とは、参照点に対して混ざる流行、つながる流行、一体化する流行です。これと逆の流行が「単離」です。単離とは、参照点に対してバラバラに分かれる流行、分離独立する流行です。複合と単離は一定の周期で交互に流行しています。つまり循環しています。 |
今年(11年)は多くの市場で複合の流行が終わって単離のタイミングに入っています。なので、複合商品であるデジタルフォトフレームの苦戦がすでに始まっています。
【この文、11年10月29日記】 【関連ページ】 ヒット番付1位 AKB48 ロッテリア 複合店に軸足 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |
(日本経済新聞11年10月15日付広告欄より抜粋)
[多くの読者の熱い支持に後押しされて、ついにミリオンセラー!!
人生がときめく片づけの魔法
近藤麻理恵]
◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇
|
|||||||||
−トレンド予測 3段目−
片づけ本が扱う二大テーマは分類と廃棄です。分類は、ある基準をもとに区分する。つまり、物と物との間に仕切り線を入れることですから単離の流行です。私が言う単離とは構成要素を分離独立させる流行のことです。 捨てる方も単離です。だって、全部捨てたり何も捨てなかったりしたら片づけになりませんから。廃棄では、捨てる物と捨てない物を分けて、捨てる物を自分と関係が無くなる |
距離まではなします。
ただし、片づけ方を説いた本のすべてが単離というわけではありません。93年に中央公論社新書から出てやはりミリオンセラーになった「『超』整理法ー情報検索と発想の新システム」(野口悠紀雄著)は、単離とは逆の流行にあたる複合です。なぜなら、「超」整理法は分類すなわち区分を否定しているからです。(Bookデータベースによると)「『整理は分類』という伝統的な考えを覆し、『時間軸検索』という新しい発想から画期的な整理法を提案」しています。 単離の流行はもうしばらく続き、その後で仮需が実需を追い越します。つまりバブル化します。 【この文、11年11月14日記】 |
||||||||
−トレンド予測 4段目−
(日本経済新聞11年10月20日付1面より抜粋) 次の文はコラム「春秋」からのものです。 [普段はやや寂しげな商店街を、どっと繰り出した若い大人たちが行ったり来たり。「街コン」と呼ばれる催しだ。コンはコンパ、つまり飲み会の略称。] [参加者は1人何千円かを事務局に支払う。一定数の居酒屋、バー、カフェなどが貸し切りになっており、飲み放題で自由にはしごする。参加証代わりに腕輪を支給し、それを目当てに声をかける、という具合。今週末だけで札幌、福島、大阪など10カ所近くで開かれるほどの盛況ぶりだ。] [始まりは2004年、栃木県の宇都宮市だという。若者に地元の街を知ってほしい店主たちが発案し、恋人探しだけでなく、地域の知り合いを増やしたい若者の心をとらえた。ここ1、2年 |
で全国各地に広がり、…]
◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇ 街じゅうが一軒の飲み屋になっています。もちろん実際は催しに協賛する店と、参加する若者との間だけで通用しているつくりものの世界ですが、感覚としては、街全体が店で来街者全員が同じ店の客です。
本来はバラバラであるはずの別な店がつながって一つの店になっているわけですからこれは合体(複合)の流行です。 「合体」とは、参照点(判断の基準、当たり前の常識)に対して混ざる方へ、つながる方へ、複合化の方へ、一体化の方へ片寄る流行のこと |
です。これと逆の流行が「分離」です。単離ともいいます。分離とは、参照点に対してバラバラに分かれる流行、それぞれが独立する流行のことです。複合と単離は一定の周期で交互に流行しています。つまり循環しています。
街コンでは店だけでなく客も一体化しています。別な店にいる客も、商店街を歩いている人も(腕章を付けていれば)同じ店の客ですし、互いに声を掛け合う飲み仲間です。 もちろん、コンパなのですから参加者にとって恋人作り仲間作りという目的があります。それまでの他人が友人や恋人同士になり、すでに知人であればさらに友情を深める場が街コンです。これって、ソーシャルネットワークのフェイスブックと同じですね。人間同士のつながりが強くなるのですから、この部分でも街コンは合体(複合)の流行になっています。 |
|||||||
−トレンド予測 5段目− 宇都宮の街コン(宮コン)が始まったのが2004年の8月、全国各地に広がったのが2009年ごろからですから、街コンは、始まりと全国ヒットの時期が約5年ずれています。これは宇都宮の街コンと今回の街コンブームの間に1回流行のお休みがあったからです。つまり、合体とは逆の分離の流行がその間の時期を支配していたからです。 そして、今(11年12月)も次の分離の時期にすでに入っています。ということは、街コンは(少なくとも消費者側からみたときは)拡大に急ブレーキがかかるタイミングだということです。 【この文、11年12月07日記】 |
|
ちょっと脱線
11年11月28日発行の横山町問屋新聞向けに、「分離」の流行について原稿を書きました。ワイシャツの流行の話を始めにして、衣料品のデザインの話を中心に説明しました。もちろん小売店の取るべき対策もね。チャンスがあったら読んでみてください。 〔合体・分離〕(〔複合・単離〕)という循環要因の面白いところは、具体的なデザインの流行にも、抽象的な概念の流行にも強く働いている点です。利用範囲が広いですね。 (^^♪(^^♪(^^♪(^^♪(^^♪(^^♪(^^♪ |
|||||
−トレンド予測 6段目−
(繊研新聞11年11月11日付1面より抜粋)
[百貨店向け婦人服ブランドの
コート商戦 ウール動く
非ウール
新機能に支持]
[市場に氾濫した感があるダウン、中わた使いはデザインや機能で新鮮さを出した商品が売れている。サンエー・インターナショナル「ボディドレッシングデラックス」は10月のコート売り上げが前年比約2倍。取り外し可能なフォック
|
スファーを襟、前立て、袖、裾に付けた70a丈が比較的高単価な9万円にもかかわらず、「昨年同時期の売れ筋トップ品番に比べて約3倍の量が売れた」。]
◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇ |
これは各構成要素が分離独立しているのですから、まさに「分離」の流行です。「分離」とは、参照点(判断の基準、当たり前の常識)に対してバラバラに分かれる方へ、断絶の方へ、それぞれが独立する方へと片よる流行のことです。以前は分離のことを私は「単離」とも「閉鎖系」とも言っていました。それ以外にもこれまでいくつかネーミングを考えたのですが、どれも帯に短したすきに長しで、現在は「分離」に統一しています。
これと逆の流行が「合体」です。複合ともいいます。分離と合体は一定の周期で交互に流行しています。つまり循環しています。分離商品は、魅力で考えれば今の商品ですが、供給が増えるのはこれからなので、市場占有率で考えればこれからの商品になります。 |
|||||||||||
−トレンド予測 7段目−
【この文、11年12月20日記
【関連ページ】 分離デザインがヒットする ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ご意見ご感想などございましたらお教えください。メールには代表の森田洋一が全部目を通しています.気楽にどうぞ。 mm@e−yosoku.com |
(繊研新聞11年12月26日付5面より抜粋)
[無から生み出す
[今の消費者は[企画にコストをかけている商品を選ぼうとしている」とみる。] ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇ |
現在の若者が、同質化した商品を安くても嫌がり、独創的な商品を高くても好むようになったのは、現在が「対立視」の流行期だからです。対立視が流行しているときの消費者は個性や独創性を大事にします。そういった物にお金を払います。独創性は価格に転嫁できますので「企画にコストをかけて」も採算が合います。逆に、どこにでもある平凡な商品には消費者は価値を認めませんから安くても売れなくなります。それで安かろうダサかろう商品は採算が合わなくなります。
以下の文は拙著「理詰めのトレンド予測」からの抜粋です。 「あなたが街を歩いていて、向こう側からやってくる人が、あなたと同じ服を着ていることに気が付いたとします。そういうとき、あなたはどう思いますか。 |
||||||||
−トレンド予測 8段目−
その人をニコニコ笑って見ますか。その日は一日中気分がいいですか。それとも、ムカッと来て腹が立ちますか。その日は一日中気分が悪いですか。
自分と同じ服を着ている人を見て、ニコニコする人が増える時期を〔同一視」といいます。物事の共通点に関心を持ち評価する流行です。 『「同一視』が活性期のときの消費者は、物事の細かい違いは気にしません。ものを買うとき、商品とほかの条件を天秤にかけます。他人と同じものを欲しがります。大量に同じものがあると買いたくなります。 自分と同じ格好をしている人を見て、ムカッ腹を立てる人が増える時期を「対立視」といいます。物事の違っている点に関心を持ち評価する流行です。 |
対立視が活性期の消費者は、物事のわずかな違いを気にします。デザインも性能も妥協できません。商品に鮮度を求めます。他人と違うものを欲しがります。少ないことに魅力を感じます。」
対立視は約7年で循環しています。ということは、この記事の出た2011年の7年前の2004年あたりにもこの記事とよく似た記事が新聞に載っているはずです。それを見てみましょう。 以下の文は、04年3月3日付の繊研新聞13面からの抜粋です。 [デザインだけでなく、素材やパターンも重視するーー。“省かない服。を支持する20代前半の女性が増えてきた。今秋冬、きちんと作り込んだ決して安くない商品が、意外なほどよく売れた。] |
今年は2012年ですから、その7年前は2005年になります。その頃の記事を見てみましょう。初めは2005年11月22日付の繊研新聞1面からの抜粋です。 [あるアパレルメーカーの営業責任者がこんなことを言っていた。「最近、値段のことを言われることがほとんどない。おもしろい服が売れる時代に入ったようだ」] 次が2006年1月20日付の日経MJ6面に載ったサンエーインターナショナル社長三宅正彦氏の発言の一部です。 [昨秋以降、どのブランドもファッション性が高 く、一つ上の価格帯の商品が売れている。][最近『ビバユー』で外部デザイナーを起用し販売を伸ばしている.とんがった感性を社内で育成するのは困難。] |
|||||
−トレンド予測 9段目−
どうです。最近のファッション業界とよく似ていますね。新聞にはこういうよく似た記事が7年に1っぺんずつ繰りかえし繰りかえし出てきます。ということは、今回の7年後の2018年から19年にかけてもやはり同じような記事が出ることになります。 私が7年後の対立視について今言っていることは、現象が起こってから理屈をこねる後知恵後講釈ではなくて現象が起こる前に説明している「先知恵先講釈」です。7年後がすでに読めているのですから対策を立てるのも超余裕です。 【この文、12年01月23日記】 |
(日本経済新聞夕刊12年01月11日付11面抜粋)
[ベストセラーの裏側
康熙奉
「朝鮮王朝の歴史と人物」 韓流ドラマの理解のために]
昨年7月の発売以来、約5カ月で10刷37万部を記録。続編として同じ著者の『古代韓国の |
歴史と英雄』『朝鮮王宮 王妃たちの運命』も10月、12月に出され、それぞれ4刷16万部、3刷14万部に達した。]
[あくまでドラマを入り口に歴史を解説する。] [読者層は50代から60代の女性が中心で、70代や80代も多い] ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇ |
|||||||||||
−トレンド予測 10段目−
テレビドラマのフアンが見る本ならそのための内容の本を読むのが参照点(判断の基準、当たり前の常識)です。それには粗筋や名場面、俳優の解説などが載っており歴史には深入りしません。歴史書も同じことで、韓国の歴史は詳しく書かれていても、テレビドラマの解説は載っていません。こちらもそれが参照点です。そのもともと別々であるはずの本が一冊になったらヒットしたのですから、これは「合体(複合)」タイプの流行になります。合体の流行にもいろいろな種類がありますが、これはお菓子のアルフォートの流行に近いタイプです。アルフォートではチョコレートとビスケットが合体していますね。 「合体」とは、参照点(判断の基準、 |
当たり前の常識)に対して、つながる方へ、接合する方へ、混ざる方へ、一体化する方へ変化する流行のことです。この逆の流行が「分離」です。合体と分離は交互に流行しています。 流行(循環要因)には年齢による時差があります。「朝鮮王朝の歴史と人物」が発売されたのが2011年7月ですから、中心読者になった高齢女性は当時はまだ「合体」のタイミングだったことになります。ぎりぎり間に合いはしましたが、タイミングはやはりもう少し早いほうがベターです。 【関連ページ】 ヒット番付トップ50 1位 AKB48 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |
||||||