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予測は情報で決まるか

問い:  私の友人で○○で造り酒屋をやっている人がいますが、昨今の業績低迷で海外生産を考えているようです。
そこで、誠に勝手ながら、マーケティング全般を含めどのような情報源をチェックしておけば参考になるのかご助言いただければ幸甚に存じます。宜しくお願い致します。
 
@@@@@@@@@@@@@@
モード工学研究所の森田洋一
森田洋一です。トップページでも言いましたが、「どの業界もそれなりに特殊です。でも、流行はどこも一緒です。」
 
私は、全分野に共通する流行原理を食品の味の研究で見つけたことがあります。
お酒のビジネスをやっているからといって、酒業界だけで流行を見ないことです。

消費者は、酒を買うときも、他のものを買うときも同じ一つの頭で判断しています。ですから、流行には普遍性があります。ラーメンの流行に関する情報は酒の流行に関する情報ですし、書籍のベストセラーの情報も酒の流行に関する情報です。そういう目で見れば、我々はお酒の情報に囲まれて暮らしていることになりますね。
 
それに、流行を知るのに特別な情報源はいりません。あるに越したことはありませんが、無いから皆目分からないということはありません。一般消費者だってその気になれば、関心があればお酒の流行の情報は入ってきます。ましてプロともなれば、他の業界の人が知らないことだって分かっています。  

流行を予測するための情報は、市場を読むための情報は、流行以外のことを知るための情報に比べて足らないということはありません。むしろ多いほうでしょう。ただあいまいなのです。信頼性が低いのです。
 
人間は自分に近いものほど関心が高くなりますが、同時に客観視が難しくなります。情報を発信するほうも、受取るほうも、ドグマ、主観、願望に支配されすぎます。流行は社会現象ですが、自分も参加者ですから、自分自身を見つめるというめんがあります。供給側の人間でしたら、自己保身の本能も働きます。自然科学が対象にしている分野に比べると、自分に近すぎます。客観視が難しいのです。
 
それにたとえ、自然科学者が持っているような客観的で信頼性に優れた情報が手に入っても、それだけで欲しい答えが出るということは

―――16――――――――――――――――――――――――――――――ファッション予測と流行予測、次へ

ー流行予測Q&A 17段目−
ありません。それで出るのなら科学に理論体系はいりません。以前、情報ブームがありました。知りたいことが分からないのは情報不足だからだという、情報さえ集めれば何でも分かるという錯覚がありました。でも、金を含んだ泥は金ではありません。そのままではただの泥です。情報ブームバブルは破裂しました。情報は、生のままでは食べられません。料理をしておいしく食べられるようにします。まず、情報を後講釈に使うのをやめましょう。情報をもとに仮説を立てましょう。
 
私は、仮説は仮設だと思っています。仮縫いだと思っています。「名探偵コナン」という漫画をご存知ですか。テレビアニメにもなっています。「名探偵コナン」では、まずヘボ探偵の毛利小五郎が迷推理を働かせて犯人を断定します。もちろん間違っているのですが、それを今度は主人公の江戸川コナンが、毛利探偵の矛盾を突き、真犯人を当てます。
漫画では、毛利小五郎をカッコ悪く、江戸川コナンをカッコ良く描いていますが、私はどちらも大切だと思っています。毛利探偵の迷推理という叩き台がなければ、その批判もありません。それよりはるかにましな仮説も生まれません。自然科学の分野では、学会というのがあって、その中で毛利探偵の役をする人と、コナンの役をする人が現れます。でも、流行予測の分野ではまともな「学会」なんてありませんから、一人二役で両方を演じる必要があります。
 
  流行を予測するにはまず、独断と偏見をもとに荒削りな仮説を立てます。この段階では主観まる出しでかまいません。つぎに、それを批判して、矛盾を突きます。それで生き残ったなら、仮説の一次審査はパスです。つぎに新しい情報でさらに仮説をチェックします。刑事ドラマに出てくる「裏を取る」をやります。事実が仮説より後になります。
 
新しい情報でチェックして間違いが無ければ
それは、「真理である」という証明にはなりませんが、「後講釈ではない」という証明にはなります。「先講釈」です。先講釈だといっても、たまたま運良く一致してしまったということはありえるわけです。コナンの役をやったつもりが、まだ毛利小五郎だったということです。仮説のチェックは繰り返し行うことが必要です。
 
この文、03年4月16日記 
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−流行予測Q&A 18段目−

市場の変化は世代論で説明できるか

問い:  以下は貴サイトからの抜粋です。
★☆★  今の女性はパンツもスカートもタブーではありませんが、昔はパンツがタブーでした。昔の女性は、テニスをするときもロングフレアスカートをはいていたそうです。私が子供のころの女の子は体育のときにチョウチンブルマーをはいていました。あれは、女がパンツをはくことがタブーだった時代のなごりです。そのタブーがちょっとだけ緩んできた時代のなごりです。
 
おばあさんでは、パンツ派がスカート派を圧倒しています。それは、女らしさを出すことがおばあさんではタブーだからです。でも、その女っぽさのタブーはメンズほど強くありません。ですから、おばあさん向けボトムス
  
担当者は、ヤングの担当の人ほどには悩みませんが、一応スカートのことを考えます。
 
このような弱いタブーの場合、流行期には売れますが、タブーのない分野より採算の合う期間が短くなります。そして流行から外れた場合には全く売れなくなります。★☆★
 
上の文面にあるように女性には世代の違いで、女らしさの表現のしかたに制約があったとのことのようですが、太平洋戦争の影響からはじまり、現存する世代の80代からして、どのように変化したのでしょうか?
年をとると女性らしさを控えるのか、それとも女性らしさを控えなければいけなかった世代だからより年をとると控えているのか。
また行き着く質問は花柄についてですが、年配の女性ほど花柄好きで、若い女性ほど趣味が男性っぽくモダン、シンプル好みのようですがどうしてでしょうか?
年をとっても今の若い女性は、変化しない
のでしょうか?
制約がなくなると、お互い男も女もユニセックス化するのでしょうか?
一見若い女性のほうが女っぽいですが、おんなっけが多いとゆう意味で。
がしかし年配の女性のほうが女っぽい情緒的な柄(花柄、唐草など)を好んでいるような気がしますが、
年配の女性で大柄なチェック柄など着てませんよね。
ー以下略ー
 
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モード工学研究所の森田洋一
答え:  森田洋一です。私は現在52歳です。私がヤングだったころは、スソを切りっぱなしにした穴の開いてるジーンズに、背中まで伸びたロングヘアーでした。当時のヤングにとって、それは特別なカッコウではなく、奇抜な
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−流行予測Q&A 19段目−

カッコウでもありませんでした。でも当時のオジサン達は、そういうカッコウを「汚い」と言っていました。ホテルでは、ジーンズで出入りすることを禁じていました。
 
その時代のヤングにとって「カッコいい」ことが、年配の人にとって「汚らしくて、みっともない」ことだったというのはよくあります。上の世代にとって「汚らしくて、みっともない」としか見えない、そこまでいかなくても「ついていけない」ということです。年配の人の「ついていけない」は、ヤングだけで終わる流行現象がたくさんある理由の一つです。
 
いつの時代のファッションだって同じです。自分がヤングだったときの流行とそれほど違わないときはいいのですが、その時とは大きく違うものが流行すると、昔ヤングだった世代は抵抗します。前回のカジュアルの流行期には、茶髪、顔黒、厚化粧、ポックリサンダルの女の子が大勢現れましたが、マスコミのオジサン

達はそれを「山姥ファッション」と言っていました。今、ヤングでカジュアルが復活していますから、そういう例はまた増えるでしょう。
 
テレビのコマーシャルに、初老のオジサンが2人一緒にジャズを口ずさむというのがありました。ジャズが流行していたときにヤングだった世代は、ジャズが流行していないときでも、他の世代よりジャズを好みます。ヤングだったときにハワイアンが流行していたという世代は、ハワイアンが流行していないときでも、他の世代よりハワイアンを支持します。どの世代も、自分がヤングだったころの好みをいつまでもl持ち続けます。
 
先ほど言いましたように、私がヤングだったころはジーンズがヤングの制服みたいになっていましたから、今でも私の世代は「Gパン」を好みます。でも、私がヤングだったころの、今の私の年齢ぐらいのオジサンは、ジーンズをはいていませんでした。ジーンズなんて
「汚らしくて、みっともなくて、ついていけない」ものだったからです。
 
「紺ブレ」とジーンズのミスマッチが流行したことがあります。そのとき私も、金ボタンの紺ブレザーにジーンズというカッコウをしていましたが、それを見て「許せん」と言った人がいます。おジイさんではありません。私よりちょっとだけ年上の人です。ちょっとだけ年上ということは、ヤングだった時期がちょっとだけ私より前だったわけですから、ファッションの好みもその分違っています。
 
その人がヤングだったころは「TPO(時、場所、場合をわきまえる)」にうるさいファッションが流行していましたから、正統派トラッドウエアにジーンズを組み合わせるというのは「許せない」ファッションだったわけです。
 
「紺ブレ」が流行していたときに私も紺ブレを着ていたと言いましたが、だからといって私が
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−流行予測Q&A 20段目−

特別にヤングのファッションに寛容だということではありません。私が紺ブレを着たのは、長髪、プリントシャツやTシャツ、ボロボロジーンズという、社会の約束事なんかクソ食らえというファッションが流行している時に、私がヤングをやっていたからです。だから「紺ブレ」は受け入れやすかったのです。
 
80年代にスーツをファッションとして着る流行がありました。当時「ニューヤング」と呼ばれていた若者がそれを着ていました。そのときに私は、「許せん」とは思いませんでしたが、「ついていけない」とは感じました。私にとってスーツは、仕事のために仕方なく着るもので、ファッションとしては絶対に着たくないものだったからです。スーツを着ることがカッコいいという感覚が理解できなかったのです。
 
ご質問の柄の流行についてですが、年配の女性が柄物を好むのは着物のこだわりのせいです。戦前の女性は着物が普段着でした。

私の母は絣の着物で小学校に通ったそうです。戦後、女性は洋装に変わりましたが、着物のこだわりはかなり後まで残っていました。
 
私が子供のころは、ヤングでも今のヤングよりプリントをたくさん受け入れていました。当時のヤングは、今は60歳代後半ぐらいでしょうか。それより上の世代なら、着物のこだわりや美意識がさらに強かったはずですから、その影響も強く残っていると思います。
 
着物のこだわりが影響しているのはプリントだけではありません。ワンピースやコートなどの重衣料を年配の女性が好むのも、着物のこだわりです。着物ってワンピースでしょ。私が子供のころは、夏になると、もうワンピースしかないというくらいの市場占有率でした。
 
百貨店のミセス売り場へ行くと、合繊を使ったものが多いのに驚かされますが、これも着物のこだわりです。シルクの着物のこだわりで
す。ただこれは、昔の女性がみんな絹を着ていたというのではありません。昔だって絹は特別な素材でした。また母の話になりますが、小学校の卒業式に着た振袖は木綿だったそうです。絹の着物にあこがれていたころ、シルクが別格扱いだったころのこだわりが、シニアミセスを合繊好きにしています。
 
ということは、今のヤングがおバアさんになったころのおバアさんは、今のおバアさんほどにはプリントや重衣料、合繊を好まないことになります。流行しないということではありませんよ。流行も非流行も今と同じようにちゃんとあるでしょう。そういう流行期、非流行期をならしてみたときの市場占有率が今よりも落ちているだろうということです。
 
年配の人の柄が小さいのは、私の子供のころもそうでした。年配ほど色がくすむのと同じです。こういうのは、その世代がヤングだったときの流行がどうだったという話とは別です。
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−流行予測Q&A 21段目−
今のヤングをみても、同じ柄の流行でも年齢が上がるほど小さくなるようです。
 
ということは、柄の大きさと年齢との逆相関はこれからもあるということでしょう。もっとも、これだって変化しないと言っているのではありません。ただの約束事ですから、長い目で見れば変わっていきます。
 
それと、ミセスの企画担当の人なんかがよくやりがちなのですが、こだわりや約束事という、短期では変わらないことで、短期に変わる狭い意味での流行を説明してはいけません。それをすると、これからはゆっくりとしか変わらないことになりますから、今売れているものが変わったらどうしようという不安から開放されます。それで、そういうナンセンスにしがみつきたくなるんですが、市場を読む能力がガクンと落ちます。

 
たとえば、柄物の流行が終わるとき、ヤングが
先に無地になります。その後も、年配の市場では柄物の流行がしばらく続きます。それを、シニアのこだわりや約束事で説明してしまうと、次の変化、つまり、シニア市場での柄物バブルの崩壊に自分も参加してしまうことになります。
 
柄物の流行と最も強い相関を持つ流行要因は、超経験と言いますがかなり短い周期を持っています。本当のおバアさんならともかく、そこまで行かない市場では、バブル崩壊はそれほど先のことではありません。
 
この文、03年6月4日記

      モード工学代表 森田洋一 
 
 
 
●検索サイトで「流行予測」と打つと、当サイトが上位表示します。
 
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−流行予測Q&A 22段目−

商品企画は何を参考にするか

問い: こんにちは、いつもHPを拝見している◇◇(株)の○○です。お世話になっております。
  うちの会社は“△△”を作っています。
−中略−
  今回、写真のような……の製品を企画しております。発売時期を半年後の9月半ばとして、流行の観点から検討評価してみたいのですが、どんなものを参考にしたらよいのかご教示いただけないでしょうか。 
  勝手なお願いで恐縮ですが、ぜひよろしくお願い申し上げます。
 
  ’04.3.17
   ◇◇(株)
    ○○
 
 ほんとうはご意見をいただけるととてもうれしいのですが……  
 
@@@@@@@@@@@@@@@ 
モード工学研究所の森田洋一
答え ○○さま
  モード工学研究所の森田洋一です。
 
今日の日経新聞37面に「横浜赤レンガ倉庫2号館」が苦戦しているという記事が出ています。
  「■横浜市のみなとみらい(MM)21地区で2002年4月に開業した商業施設『横浜赤レンガ倉庫2号館』。明治時代の倉庫を転用し、初年度は予想を大幅に上回る来客数と売上高を達成した。だが、最近は売り上げが伸び悩んで想定外の高コスト体質もあらわになり、運営会社の横浜赤レンガは対応に懸命だ………
  しかし、開業効果が薄れた2年目は前年比で来場者は約2割減、売上高は約3割減の見通し。」 
赤レンガ倉庫2号館は商業施設ですが外観は明治時代の倉庫のままです。内部も倉庫時代の雰囲気を残しています。つまり、デザインが商業施設らしくありません。2年前の開業当時は大成功とマスコミが報道しましたが、来館者は年配の人が多く、ヤングのお客はたいしたことはありませんでした。

当時私は、「これは流行の末期の症状が出ている。来年以降は尻つぼみだ。」と言っていましたが、そのとおりの結果が出たようです。

横浜市には「ラーメン博物館」という有名な商業施設もあります。内部は昭和30年代の街を再現させていて、その中に有名ラーメン店がいくつもあるという趣向です。私も子供をつれて行ったことがあります。本当の30年代を知っている私からみるとかなり違うと思うのですが、若い人は知りませんから、自分の知らない時代がここにあると思って楽しんでいるようでした。
 
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−流行予測Q&A 23段目−
ここをまねした商業施設が、去年全国にたくさん作られました。昭和30年代風商業施設を作るバブルが発生しました。私ん家の近所にも昔の店の内装を再現したとうたった焼肉店が最近できました。
 
2001年11月から順次発売されて、ヒットした「タイムスリップグリコ」は、グリコといっても子供は関心を示さないで、初めから大人の男性中心でした。今は懐メロシリーズが中心で、ロッテや ブルボン、バンダイなど他のメーカーもぞくぞくとパクリ商品を投入しています。こちらもバブル発生ですね。

私は、その商品そのもののデザインではなくて、別な分野のデザインを採用したものや、懐かしさを売りにしたものはダウントレンドであると考えています。

送っていただいた写真を見ると、私が子供のころの▽▽を連想させるデザインになっていま
すね。それも、いままでの▽▽風△△よりさらに表現がリアルになっています。正直言って危険だと思います。
  企画がどこまで進んでいるのか、○○さんがどこまで関与しているのか分かりませんが、理想を言えば、△△は△△にしか見えないデザインのほうが安全だと思います。▽▽に見えるリアルなデザインを変えたくないのであれば、対象年齢を思い切って上げた方がベターだと思います。
 
  ○○さんは□□部で一番若いんじゃないでしょうか。しかも女性です。ということは、新しいデザインを新しい、新鮮だと感じるのは、誰よりも早いはずです。古いデザインをつまんないと感じるのも誰よりも早いはずです。では、どれだけ早いのかお話ししましょう。、ここから先のことは内緒ですよ。トップシークレットですからね。……
 −中略−
私の知っている若い男性で、アダル
ト(オッチャン)カジュアルの企画をやっている人がいます。デザイナーでもなんでもなくて、普通の学校を出た人です。その人は街を歩いていて黄色を着ている人が増えたなと思うと黄色をやります。ニットを着ている人が増えたなと思うとニットを企画します。

わたしはその人に言いました。「それでいい。増えたなと思ったものをやれば、企画はあまり外れません。でも、大まじめにカウントしちゃだめですよ。本当に増えたものは売れません。増えたってことは、もう買っちゃったってことなんだから売れません。増えたものは売れませんが、増えているように感じたものは売れます。増えていると思うのは気になっているからです。気になっているものは記憶に残りやすいので、実際より多くあるように感じます。若いあなたの目を今チカチカさせるものは、後になってアダルトの目をチカチカさせます。企画と販売の時差を考えると、それがジャストタイミング
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−流行予測Q&A 24段目−
です。」
  長男が生まれる前、カミさんが妊婦だったころ、私は、街じゅう妊婦だらけだと感じました。おなかの大きな人が多いのに驚きました。こんなにいるのに、少子化なんてうそだろう。
  ところが、子供が生まれると、あれほどたくさんいた妊婦が街から消えてしまいました。かわりに、乳母車を押している母親が、そこいらじゅうからわいて出てきました。気になっているモノはたくさんあるように感じるのです。
  原宿や代官山などの街で、歩いている人をボーと見ていると、いろいろなファッションの人がいます。どんどん通り過ぎて行きますから、どんどん記憶から消えます。でも気になる人は記憶にチョッピリ残ります。それをずうっとやっていると、チョッピリの記憶がだんだんたまってきます。
  砂金を採るようなものです。皿に砂金を含んだ砂を入れて、水の流れにさらすと、軽い砂は流れ落ちていきます。重い
砂金は皿の中に残ります。これを繰りかえすと砂金は、まとまった金額になるほどにたまっていきます。似ていますね。
  チョッピリの記憶も、あるところまでたまると意識に上ります。何々が多い。何々が新鮮だ。それを企画に取り入れると打率が上がります。
  ○○さんのところはアパレルではないので、雑貨店回りなどをやると良いかもしれません。おしゃれな街の雑貨店を、何も考えなくて良いからたくさん見ましょう。新鮮だと思ったらメモしときましょう。安かったら買っちゃってもいいんですが、新鮮なものってたいがい高いですからメモでいいです。
  これは、若いあなたにしかできない方法です。オジサンがこれをやると、小売店に並んだころには、全部流行遅れになってしまいます。
 
この文04年3月19日記
04年5月14日、当ページに転載
  ■     ■     ■     ■
 
  ご意見メール、感想メール、質問メール、流行情報メール待ってます。すぐにご返事を書けないかもしれませんが、所長森田洋一が必ず読んでいます。
 
mm@e−yosoku.com
 
      
   
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−流行予測Q&A 25段目−

今の市場は同一視のどの辺か

問い: ……非常に興味深く拝見させて頂きまし た。 店頭で直接、消費者であるお客様と接している私の立場から、 僭越ながら、感想を述べさせて頂きたいと思います。
 
 今のお客様は本当に目が肥えていらっしゃいます。 言い換えれば、 「価格」と「品質」に対するバランス感覚が鋭敏になっている、ということでしょう か。 おそらく、森田先生のおっしゃる、「価格感度」が上がっている、ということと相違 ないかと思います。
 
 おっ、この品質でこのプライス!? それなら絶対買いでしょ! こんなのがちょうど今欲しかったんだぁ、しかも安いし、品質も悪くないよね。 どんなに値下がってても、いらないものはいらないよ、どうせもう長く着れないし。
 
 ・・・こんな声がしょっちゅう店内で聞かれます。(3番目のは、私の値下げタイミング ミスです…とほほ)
 
 もともと「値ごろ感」がウリの当店ですが、 ただ安いだけでは、今のお客様は買ってくれません。 いいモノを、いかに賢く買うか、いかにムダな出費をしないか、 というお客様の姿勢は、まさに「アリ」をそのまま反映しています。
 
 また、私が森田先生の原稿で「ウ〜ン」とうなされたのは、「同一視」という流行に ついてです。 確かに、今は売れ筋が見えやすい! 大阪でもみなさん、同じ(ような)服を、こぞって着てらっしゃいます。
 
 私事で大変恐縮ですが、 当店の、2004年春の売れ筋となった、羽織モノを例に挙げますと、 ○○○、△△△、◇◇◇、◎◎◎、(←今春の特徴)、等 と
いったところでしょうか。
 
 当店では、上記の中で、さらに売れ筋の品番に的を絞り、在庫リスクを思い切り張っ て、大勝負を仕掛けました。 結果は、大勝利、大成功!!でした。 先月に続き、今月も前年伸長120〜130%は出せそうです。
 
  これは原稿を読ませて頂いて気付いたことなんですが、 当店(当社)がやったことは、まさに、少品種、多ロット、計画生産、というユニク ロ型ビジネスモデルだったんですね…。
 
 また同時に、この大勝負が成功したのも、 たまたま今の市場が、同一視という「流行」の中にあり、それに上手く乗っかったか らだ、ということに気付かされました。
 
  ここでちょっと素朴な質問です。 森田先生が送って下さった今回の原稿、 掲
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−流行予測Q&A 26段目−
載されたのが、2002年9月だそうですが、 それから1年半以上が経過しています。 原稿の中に、「現在市場では、対立視とは逆の『同一視』が復活してきている。」とありましたが、 2004年今現在の市場は、「同一視」完全復活の状態にあるのでしょうか?
 
 今回自分が体験した成功を考えると、そう思わずにはいられませんが、果たして実際 はどうなんでしょうか…? まだ本流でないのか、実はもうとっくにピークは過ぎていて、終わりに差し掛かって いるのか…。 とすると、次にやってくる流行は…?
 
 …気になる(笑)
 
 大変恐縮ですが、可能な範囲で結構ですので、 私の素朴な疑問にお答え頂けたら嬉しいです。
 
 流行予測理論に、興味深々です(笑)
 
@@@@@@@@@@@@@@
モード工学研究所の森田洋一
答え: ▽▽さま
 
モード工学研究所の森田洋一です。
 
 同一視の流行は、今はサイクルのどのあたりかとのご質問ですが、消費者の気持ちだけで言うと末期です。ただ、業界の現状認識で言うとまだピーク前です。
 
 ホームページでも触れていますが、仮需(供給側の行動)は実需(消費者の行動)に直接反応しているわけではありません。実需の累積に反応しています。1シーズン成功していることより、2シーズン成功していることの方が強気ですし、3シーズン成功しているとさらに強気です。 
それで、実需と仮需の関係は正弦関数(サインカーブ)の積分に似ています。実需がピークをすぎても、仮需は成長を続けます。
 
 ▽▽さまの店ではどうですか。売れ筋が見えやすくなったのは今年からではありませんね。売れ筋に気がついてから、それが止まるまでの期間が延びたのは、今年からではありませんね。お客様が、ファッション雑誌や友人の影響を強く受けるようになったのは、今年からではありませんね。
 
 街を歩いている人が自分と同じ格好をしているのに、みんなヘッチャラな顔をしていますが、これもかなり前からですね。裏原や代官山の客質が、以前に儲けていた人からみると悪くなっていますが、これだってそうですね。
 
 ▽▽さまの店の外でも、同一視型ビジネスの成功事例が、今たくさん出ていますよ。▽▽さまも、そういう「成功した」とい
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−流行予測Q&A 27段目−
う話をいろいろ聞いていると思います。聞いていなかったのなら、同じ業界の友人や知り合いに取材してみてください。けっこう同じようなことをやっていますから。
 
 成功事例が増えたということは、それを試みた人間がたくさんいたということですよね。成功事例が増えれば、新たに始める人も増えますし、すでにやっていた人は、今までよりもっと過激なことを始めるでしょう。
 
 同一視型の行動を取る業者の数という分母が大きくなれば、成功の確率やレベルが変わらなくても、成功事例やそのレベルは高度成長を続けるでしょう。お客様の反応が前ほどビビッドじゃなくなってからでも、それを埋めてなおプラスが残るくらい、供給側の人間が強気で
動けば、成功事例はもっと増えますよね。
 
 お客様の気持ちがさらに引いても、生産、仕入れ、出店、求人、広告などもろもろのことは、関連業界の思惑が膨らめば膨らむほど、▽▽さまたちにとって有利になりますから、利益は減りません。
 
 さらに時間がたって利益が減りそうになれば、社長の顔は青くなりますが、出店を増やしたり、販促費を爆発させたり、価格を落としたりして、売り上げを維持しようとしますので、苦戦が始まっていることに外部の人間はなかなか気がつきません。ここまで来ると、完全にバブルになっていて、破裂するのは時間の問題です。
 
 でも、そうなるのはまだ先の話です。まだしばらくは仮需の成長が続くと思います。商品が止まるまでは、仮需の総
量と市場規模はほぼ一致しますので、同一視型ビジネスの市場規模も成長が続きます。
 
 対立視型のビジネスをやっている人や企業が、それとは逆の同一視型のビジネスに変わるのは比較的楽です。楽といっても、それまでの自分を否定するのですから容易なことではありませんが、逆方向へ行くよりははるかに楽です。
 
 同一視型のビジネスをやっている人が対立視型に変わるのは、対立視が同一視になるより大変です。対立視のときは、店も商品も、よそと違っていた方がいいのですが、業界に長くいる人ほどそれが苦手です。
 
 そういうことに心理的な抵抗が少ない人でも、同一視のときに、設備投資や在庫投資、組織作り、仕組みづくりをやっちゃっていますから、使った金、時間、エネルギーの回収が終わっていないという
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−流行予測Q&A 28段目−
ときに、それを捨てることができません。反対方向に動いた方がいいと気がついても動けません。
 
 それで、消費者の頭が対立視になると、毎回市場に真空が発生します。客がいるのに売る人がいないということが起こります。それで、新規参入のチャンスが大きくなります。金もコネも信用も十分でない人がファッションビジネスに入ってきたときに成功する確率が高くなります。
 
 今は大きくなっている小売店やアパレルメーカーの多くが、この対立視の時期に参入しています。あるいは、対立視の時期にブレイクしています。対立視のときに成功して、同一視になって、はじめたばっかりのころに比べれば余裕のある資金力、信用力、組織力を使って変身し、次の対立視になって体質を完全には戻せなくなって苦労し、次
の同一視で、以前よりはるかに充実している組織力、資金力、信用をフルに使って躍進し、……てな歴史を持っています。
 
 むろん、そうなれなかった企業のほうが多いんで、どのタイミングで何をしたかがちょっとだけ違っていたために、結果が大きく違ってしまいました。
 
 私は、これから起こることを、タイムマシンを使って実際に行って見てきたかのように話していますが、それができるのも、今ファッション業界で起こっていることが初めての経験ではないからです。過去に何回も何回も起こっていることだからです。その直後に起こったことも、何回も経験しているからです。
 
 ▽▽さまが若くて、過去のファッション業界を知らないのであれば、先輩に聞いてください。過去の記録で調べてみてください。めんどくさいかもしれません
が、元は取れます。
 
 ▽▽さまや▽▽さまの会社がこれからどのタイミングで何をすべきかも、過去の事例で分かります。過去の成功事例と、もっとたくさんの失敗事例で分かります。無視したときにどうなるかも、過去の記録にちゃんと書いてありますよ。
 
この文04年4月16日記
04年8月24日、当ページに転載
 
  ■     ■     ■     ■
  
 

 
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−流行予測Q&A 29段目−

先行指標はどこにあるか。どう見ればいいか。

問い: はじめまして、資料発送のご連絡ありがとうございます。
森田様の、御サイトを知ったのは偶然でした、ファションサイトからファション予測と検索、そこで御サイトをしりました。
今では、毎日御サイト見て勉強させて頂いています。
 
私の自己紹介ですが?もともと○○○○のメーカーにいました。今は、シルバーミセス(シニヤミセス)の小さい会社を経営しております。(△△△を中心に展開しております)御サイトでシニヤミセスの流行があるとのっています。私もそう思います、しかし消費者〜ショプ〜メーカーとあるのですが?なかなか思うようにいきません!

(色、デザイン、プライス)またかってながら、
シニヤミセスの情報などが、ありましたら、教えていただけないでしょうか?よろしくお願いします。
@@@@@@@@@@@@@@
モード工学研究所の森田洋一
答え: ▽▽▽さまはサラリーマンから経営者になったんですか。できますね。でも、今の岐阜でビジネスをするというのは大変ですね。もし結果が現状維持だたとしても偉いと思います。
 
今回お送りしたもので、▽▽▽さまに一番お役に立てるのは、「上比長・下比長」の年表ではないでしょうか。
 
ホームページでも私は言っていますが、シルバーミセスもヤングレディスも、流行要因の種類とその周期は同じです。「上比長・下比長」のサイクルは、シルバーミセスにも当然あります。あると言っても、流行要因としてあるという
意味でして、全く同じ流行現象が起こるというわ   けではありません。たとえば、下比長の時にヤングで売れたオフショルダーなんて、シルバーミセスでは無理ですよね。
 
でも、肌を見せることに抵抗があるから無理なんで、新鮮に見えてないわけではないんすから、肌を見えないように隠せば、受け入れるミセスが現れます。見せかけアンサンブルのテクニックを使って、首回りの広げ方もおとなしくして、などなどいろいろやり様はあります。
 
そうしたとしても女らしさのタブーには触れてますから、挑戦してくれるミセスは、ヤングに比べると少ないと思います。でも、▽▽▽さまのライバルは、ヤング向けをやっている人よりこういう商品を怖がるはずですから、タイミングさえ間違えなければ、余らせる心配はありません。

 
トップスの丈も同様です。ミセスは下っ
―――29――――――――――――――――――――――――――――――ファッション予測と流行予測、次へ

−流行予測Q&A 30段目−
腹や尻を出すのを嫌がります。ですので、トップスの丈はいつも長めです。下比長のときも長めです。このへんは▽▽▽さまの方がよくご存知で、釈迦に説法になってしまいますが。
 
下比長のときもミセスでは長いんですが、でも、上比長のときに比べれば短くなります。だって短い方が新鮮なんですから、ミセスだって短いのを着たいんですから。
 
短いのを着たい。でも腹や尻を隠したい。ということで、小売店では、短めに挑戦したミセスが、試着した上着のすそを一生懸命引っ張るなんてことをやります。
 
というわけで、下比長のときも、シルバーミセスのトップスはやっぱり長いんですが、でも上比長のときよりはチョッピリ短い。でも、このチョッピリが売れ方の違いとしては大きいんです。
 
デザインが大きく変わらないのはタブーがあるからで、変えたくないわけではないのですから、そのチョッピリに、ミセスの大きな思いが入っているんです。
 
このへんは、メンズスーツや女子高生の制服と同じですね。タブーが強いので大きくは変わらないが、そのチョッピリの違いが、売れ方では大変な違いになります。
 
ミセスの場合、トップスの丈に比べると、比較的タブーが弱いのは襟ぐりの形でしょう。上比長の時には、ヤングと同様に、前下がりが大きくなります。でも、肌見せやセクシーさのタブーは、ネック回りだってほかと同じように働いていますから、ヤングよりは表現がおとなしくなります。でも、ちゃんと下がります。
 
▽▽▽さまは、○○○○のメーカーにいたそうですが、そのときの人脈が切れて
いないのであれば、若い方をやっているメーカーで、これまでに成功した物や失敗した物の話を聞くといいですね。
 
お送りした周期表が示しているのは、消費者がどちらに魅力を感じているか、どちらを新鮮に感じているかということで、メーカーが認識する流行とは必ずしも一致していません。メーカーが認識する流行は、この表よりももっと複雑になります。
 
メーカーから見た流行は100%仮需です。SPAなんかになるとちょっと話は違ってきますが、以前からあるタイプのメーカーですと全部仮需です。
 
メーカーは、お客さまを儲けさせなければなりませんから、実需を知ることも大事なんですが、それは明日の飯(マンマ)を考えると大事だということで、今日の飯のことだけを考えるんなら、▽▽▽さまにとって実需は関係ありま
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−流行予測Q&A 31段目−
せん。
 
もちろん、周期表から、複雑な仮需の変化を再現することは可能ですが、ある程度の訓練がいりますので、速い安いうまいというわけには行きません。現状での表の使い方では、迷ったときに見るというくらいの方が安全かもしれません。
 
そのてんメーカー同士の話なら、年齢の違いによる流行時差と、それぞれの表現の出方を考えればいいんですから、仕事ですぐ使えるようになるのは簡単です。違う市場向けのメーカーの場合、狙っている市場がどちらも以前と変わっていなければ、時差はこれからも同じです。
 
厳密に言うと、タブーやこだわりが同じではありませんので、流行現象のゆがみ具合は同じではないし、季節感や商品寿命に関係する流行要因のタイミングも違いますから、流行
現象は完全にパラレルになるわけではないんですが、アバウトな話としては、時差は一定と考えていいと思います。
 
▽▽▽さまが取材したメーカーとの時差が、今まで▽▽▽さまのところとで1年あったのなら、これからも1年ありますし、2年あったのならこれからも2年あります。
 
できれば、1年とか2年とか、時差が切りのいい数字になるメーカーの話を聞く方が楽です。季節感の違いを考えなくてすみますから。できれば、時差がちょうど1年というのが理想ですね。同じ切りのいい年数なら、自分に近い方が翻訳が楽ですもの。
 
 レディスに限定すると、シルバーミセスは一番最後なんですから、これを利用しない手はありません。自分のところ以外のメーカーは自分のために先に実験してくれているんだと思いましょう。
この文04年5月6日記
05年6月11日、当ページに転載
 
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