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シーズンの途中でファッショが変わるわけ

  衣料品のように季節感の強い商品の場合、売れるものに、売れ方に季節変動があります。これと流行現象の混同がよく起こります。流行を複雑にみせている理由、ややっこしくみせている理由の5番目です。
  ただこれは、季節感の弱い商品を扱っている人にとっては関係のない話ですし、経験のない人にとってはややこしい話になりますので、つぎの市場予測マークまで飛ばして読んでもかまいません。  
  紺ブレが売れはじめたころ、百貨店やメーカーはリクルートルックの需要であると勘違いしました。それが終わると、(新入社員の)フレッシャーズが買っていると勘違いしました。どちらでも説明できない時期になっても売れつづけたのであわてました。
  ただ、こういう誤りは後で修正されま
すので、流行を複雑に見せている理由、ややこしくさせている理由としてはたいしたことはありません。
  「オレは大丈夫だ。前年同期比をいつも見ているから。
  2月にチョコレートが売れたって、その理由がバレンタインデーだけだったら、前年同期比は変わらない。
  春に菓子や飲料の人気が大容量に移っても、それが花見シーズンのせいならば、前年同期比は動かない。消費者の好みの変化など、季節要因以外の理由で売れたときだけ異常値を示すからな。
  季節要因は365日サイクルなのだから、前年同期比をとれば自動的に排除できるよ」
  いえいえ、私が流行を複雑にしている原因の5番目にあげている「季節要因」は、前年同期比を見ても排除できません。
  それに、流行を複雑にしている理由
の4番目までは、供給側の「錯覚」でしたが、これは実際の販売スピードを変動させますので、複雑に「見せている」理由ではなくて、複雑に「させている」理由です。マボロシではないという意味では、これまでの5つの理由のなかで最も重要です。5番目に持ってきたのは、季節感の強い商品だけに関係している要因だからです。
  季節感の話をしていますので、話を衣料品に絞りましょう。
  「おっ、向こうから可愛い娘が来るぞ。オレの好みだ。来た来た。お嬢さん、ボクと結婚してください。」…こういう人はまずいませんね。あなたが昔、カミさんにほれたタイミングとプロポーズしたタイミングは違うはずです。
  我々が服を買う場合も同じです。純粋の衝動買いというのはめったにありません。そのデザインが好きになった時と買ったときが違っていることが多いはずです。ほれたその瞬間に買うのではなく
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−流行予測 48段目−
て、ほれたという思い出があるから買うという場合がけっこうあるはずです。
  服を買う場合、その商品が手に入るということは自分にとってプラスですが、財布から金が出て行くことや、レジまで持っていって決まりきった手続きを取らなければならないこと、荷物になることはマイナスです。
  その服が新鮮で魅力的だった場合、そのこと自体はプラスですが、同時にマイナスも発生しています。
  新鮮ということは、目新しくて、目が慣れていないということです。見慣れていないということです。
  見慣れていないものは危険です。現代人にとっては必ずしもそうではありませんが、旧石器時代の人にとっては、たいていは危険です。で、その子孫である我々は、新鮮で魅力的なものに対してはためらいが出ます。引き付けられるとともに尻込みをします。「美人すぎると男にもてない。社内で3番目ぐらいが一番もてる」です。  
  もしあなたが女で、男にもてなかったら、私は3番目じゃないんだわと思ってください。
  我々は、銀行の頭取と同じ型番の脳ミソを持っています。プラスが大きいがマイナスも伴う場合、すぐには行動せずに先送りします。そして、慣れるのを待ちます。それを多くは無意識にやります。
  通販のコマーシャルで、「今すぐお電話を」とか「いますぐおハガキを」と言うのは、通販業者は経験上このことを知っているからです。
  ウエアが新鮮であればあるほど、先送りする人が増えるという傾向があるんですが、先送りされた場合、ほれてから買うまでのタイムラグはどのくらいあるかというと、いつも決まっているわけではありません。鮮度が一定だったとしても、タイムラグは常に変動しています
  ある特定の人が、ほれてから行動に移すまでのタイムラグが変動するというのはもちろんですが、その市場に参加している消費者全体でみても、タイムラグ
は変動しています。
  個人のタイムラグが変動していても、観察している市場の参加者全体で変動がなければビジネスは簡単です。1週間遅れで買う人が何パーセント、1ヵ月遅れで買う人が何パーセント、半年遅れが何パーセントと固定していれば、個人の変動は無視できます。お客さんが1人だけという小売店はありませんからね。
  ここで言っているのは、観察している小売市場で、お客さん全体のタイムラグの分布が時期によって変化するという話です。季節のタイミングによって長くなったり短くなったりしています。
  シーズンの初期は、同じシーズンの直前の時期がありませんから、その時に買うものの多くは、ほれた時期が前年の同シーズンになります。そのため、古い売れ筋が一時的に復活しています。
  春夏物の場合、3月ごろの「売れ筋」は、その多くが、前年夏ごろのヒット商品です。
  前年夏のヒット商品は、その夏の時
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−流行予測 49段目−
点では供給がほとんどありません。新しいヒット商品に気がついていない人のほうが多いですし、気がついた人もシーズン後半ですから間に合いません。業界のほとんどの人が見逃しの三振をやります。消費者がどんなに支持していても、供給がなければ数字にはなりません。
  翌年の3月であれば、半年以上の余裕がありますから、需給のヒッパク度が前年夏よりは下がっています。それで、統計数字の多くは、前年夏よりも今3月の方が売れていると主張します。数字でみると3月は、去年の夏より去年の夏的なのです。
  マスコミがよくやりますが、みんなが売れていると言っているから売れているのだと、ヒット商品を多数決で決めようとすると、去年の夏のヒット商品は、見かけ上のヒットのタイミングが今年の3月ごろにやはりなります。かなり供給されるようになってからでないと、「売れている」とみんなが同じことを言う状態にはな
りませんから、統計数字の主張とほぼ同じになります。
  繊維業界紙のヒット商品ランキングに載ったものの多くが、次の年になると同じ市場向けとしては、実需はおろか仮需までなくなってしまうのは、それがその年の本当のヒット商品ではなかったからです。ランキングが紙面に載るようなシーズン後半の段階では商品が洪水を起こしていて、すでに価格勝負になっていたからです。
  今のは、ほれていたという思い出で商品を買う場合でした。思い出で買う場合には他のタイプもあります。
  我々は、以前に買ったという思い出でまた買う場合があります。自分が以前買ったものや他人が買っていたものと全く同じ物、あるいはほとんど同じ物を買う場合があります。
  去年の3月ごろは、その前の年、つまり一昨年の夏ごろにほれていたという思い出で商品を買っていました。その自分や他人が買っていたという思い出で
今年買うわけです。ほれた時期からみると2年近く遅れての購買です。
  こういう商品は、思い出の思い出で買うわけですから、去年に初めてほれて今年買うという商品に比べると、売れる価格でみても、販売スピードでみても、だいぶパワーが落ちます。それと、店頭で目立つ時期がさらに早くなります。小売店が騒ぐのは、2月の中旬ぐらいまででしょうか。
  そして、比較的たくさん売れる年と、あまり売れない年があります。自分や他人が買った物と全く同じあるいはほとんど同じ物をまた買うということに魅力を感じる年と、逆に抵抗を感じる年があるためです。そのため、そういう買い方をする人が増える年と減る年ができます。ここ数年のヤングは、たくさん買うほうのタイミングでした。
  私がヤングのころにも、自分や他人がすでに買ったものを買いたがる流行がありました。当時はジーンズがそれでした。流行に敏感な人ほど同じメーカーの
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−流行予測 50段目−
同じ品番をたくさん持っていました。
  これまでの数年間のように、思いっきり古いデザインがたくさん売れる時期の場合、それを新しいデザインであるかのように扱うと、シーズンの途中で売れ筋が2回ほど大激変することになります。
   これを経験すると、「シーズンの途中で売れ筋が何回も変わる。ビジネスが難しくなった。」と言う人が出てきますが、難しくなんかなっていません。最後のどんでん返し以外は全部過去のデザインなのですから。
  02年の春の立ち上がりで言うと、ヤングからヤングキャリアにかけてのフリルや、ミセスの美脚パンツが、この2年遅れの流行にあたります。
  今までの話は春物を例に取っていました。夏物でも同じことが起こります。ただし、春物と夏物の違いは、冬物と春物の違いほどありませんから、規模はかなり小さいですが。
  
  04年の春の立ち上がりに、ヤングからミセスまでほとんど同じものが売れるということが起こりました。それを象徴していたのが、色物のトレンチコートの「大ヒット」です。
  D管付きの本格的なトレンチを着たことのある私からみると、今春に小売が騒いだコートをトレンチと呼ぶのには抵抗があるのですが、ともかくみんながトレンチと呼んでいたコートは、ヤング向けもミセス向けもデザインがほとんど同じでした。
  それで、[市場トレンドはヤングとミセスで全く同じになった、時差がなくなった」と勘違いする人が現れました。
  ちょっとまったぁ。
  たしかに今春のトレンチは、結構若い人も買っていました。でも若い人は、去年の秋も買っていましたよ。去年の春も買っていました。一昨年の秋だって人気でした。
  つまり、今春にトレンチを買ったヤ
 
ファッションの時差は無くなっていない
ングは、今春にほれたんではなくて、一昨年ごろににほれたんです。その思い出で今春買ったんです。今春の数字が大きいのは、前に話しましたように、「仮需は、その瞬間の実需に反応しているんではなくて、それまでの実需の累積に反応している」からです。
  一方、ミセス、それもかなり年齢の高いミセスの場合は、ヤングと違って去年一昨年はトレンチを買っていません。ということは、ミセスがトレンチにほれたのは、今春あるいは早くても昨年秋ぐらいだったと推定できます。
  ほれた時期でみると、ヤングとミセスの流行時差は以前と同じようにちゃんとあります。ただ、商品寿命の長い年は、ヤングで止まる前にミセスでヒットしますから、特にシーズン立ち上がりでは、流行のタイミングが同じになったように見えるんです。
 
  シーズンの立ち上がりにかなり  
                         
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−流行予測 51段目−

古い商品が売れる年の場合、それを利用して去年の売れ残りを無くすことができます。去年からの持ち越し在庫を、シーズンのしょっぱなに売るのです。前年の末の時点ですでにフラフラになっている商品ですので、いくらシーズン初めは古い売れ筋が復活しているといっても値段はとおりません。でも、見切りさえすれば在庫を無くすことができます。ただしこれができるのは、思い出で買う人が大勢いる、商品寿命の長い時期だけです。
  これまでのことは、半年ずらすと秋冬の話になります。ほれたという思い出で買う話も、買ったという思い出で買う話も、春夏の場合と同じです。
  違っているのは、冬物というより防寒物と秋物の違いが比較的大きいことです。そのため防寒物は、シーズンの途中の時期にもかかわらず、古いヒット商品の復活が夏物に比べるとはっきりしています。

  これを利用したのが、「先行逃げ切り

型発注」です。前シーズンの冬の終わりの時期まで販売スピードや価格があまり落ちなかったものを、翌年向けに大量に発注し、値段を下げて、防寒物がシーズンインする前に小売市場にぶっつけます。すると、前シーズン私が欲しかったものがこんなに安くなっていると感激して買う人がおおぜい現れます。それで、企画のリスクをそれほどおわずに大量販売ができます。ヤングレディスの流行で言うと、98年の白いダッフルコートや01年のファーのコートがそれです。
  この場合は商品力を前年の思い出に頼っているわけですから、いくら売れたからといっていつまでも追いかけているとリスクが急激に高まります。それで、結果をメデタシメデタシで終らせるためには、、早いタイミングで売り切るという、先行逃げ切り型発注の原則を守ることが重要になります。
  この先行逃げ切り型発注は、日本型SPAのような売れ筋追求タイプの企業に、それを得意とするところが多く見られ
ます。素材の発注や縫製などに時間がかかるため、コピーのQR(クイックレスポンス)、追加のQRがやりにくい物でよくこれをやります。
  防寒物は仕込みに時間がかかるため、そういうQRがやりにくいものが多いので、「先行逃げ切り型発注」が目立ちます。が、同じことは、春物、夏物、秋物でも行われています。防寒物ほど目立たないだけです。 
  以上の「売れ筋」は、実際に消費者が買っているのですから実需です。でも、その購買パターンが季節という流行でないものに規定されていますし、価格や販売スピードでみても、ドンピシャより見劣りしますから、そのときの魅力で売れている商品とは区別すべきだと思います。
         

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このページ更新‘04年9月16日、
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