-流行予測 1段目-
Tシャツが急上昇[スポーティやロック、サーフなどをイメージさせるTシャツが急上昇ウェアになりました。
ただ現在の女性の着こなしの場合、Tシャツをフェミニンなスカートで合わせるコーディネートが旬です。例えば胸ポケ付きのVネックやUネックのTシャツに、レースの膝下ペンシルスカートの着こなしはとてもエレガントで新鮮度MAX。無地Tシャツをプリーツスカートやギャザースカートに合わせてタックインするというシンプルなコーディネートでも想定外の合わせで逆に目を惹きます。] ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇ |
読紙感想文
左の文は、スタイルアリーナ13年8月第1週[Tシャツが急上昇」からの抜粋です。この記事をもとに流行予測について説明します。
Tシャツが復活したという話です。なのに、Tシャツ復活が象徴しているはずの「スポーティやロック、サーフ」ファッションが全開となりません。以前より上がってきてはいましたがどこか弱々しい。それどころかTシャツは、真逆のアイテムであるフェミニンスカートとくっついてしまいました。 そうなったのは13年夏のタイミングがカジュアルファッションとしては中途半端な時期だったからです。これの数年前まではエレガンス全盛で、おしゃれな人はモードがどうのこうのとやっていたわけですから、 |
当時カジュアルはまだ病み上がりでした。Tシャツ君がエレガンスに足を取られて、フェミニンスカートちゃんと仲良くなってももしょうがありません。
〔束縛・自由〕という循環要因があります。循環要因とは流行現象を起こす原因のことです。我々の頭の中にあって循環しています。〔束縛・自由〕も数ある循環要因のなかの1つで周期は12年です。「束縛」→「弱束縛」→「弱自由」→「自由」→「弱自由」→「弱束縛」→「束縛」と2年ずつのステップで変化します。 この〔束縛・自由〕はファッション商品に関しては〔エレガンス・カジュアル〕と呼び変えた方が分かりやすいでしょう。つまり、「エレガンス」→「弱エレガンス」→「弱カジュアル」→「カジュアル」→「弱カジュアル」→「弱エレガンス」→「エレガンス」と変化します。これを、変化の方向を強調した表現にすると「トップ(頂上)エレガンス」→「3合目カジュアル」→「7合目カジュアル」→ |
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「トップ・カジュアル」→「3合目エレガンス」→「7合目エレガンス」→「トップ・エレガンス」となります。
2013年夏は若い女性の場合7合目カジュアルのタイミングでした。完璧カジュアルは早すぎです。それでTシャツは、真逆のキャラのフェミニンスカートと一緒になる方が、カジュアル度が弱まるので良かったのです。14年夏の現在は、7合目カジュアルの次に来るトップ・カジュアルのタイミングにすでに入っています。これからは、エレガンス要素をそぎ落としてコテコテカジュアルオンリーにした方がビジネスは楽ができます。 ただし、これまでのことはレディスヤング限定の話です。アダルトメンズのように遅い分野では、トップ・カジュアルの1つ手前である7合目カジュアルがもうしばらく続きます。 【この文、14年06月07日に記載】 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ |
痛快さ魅力、
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8位 謎解きはディナーのあとで初版7000部が180万部発行に桜井×北川コンビの連ドラも成功
お嬢様刑事が担当する事件を、執事が解決に導くミステリー小説。刊行は10年の9月。初版は7000部と少なかったが、書店員の大プッシュを得てじわじわ部数を伸ばす。その後、発行元の小学館はCMを放映。半年で発行部数100万部超に。4月に、本屋大賞を受賞してさらに人気を広げた。
受けたポイントは、なんと言っても失礼極まりないが頭脳明晰な執事のキャラ。「お嬢様はアホでいらっしゃいますか?」と慇懃無礼に令嬢の考えを一刀両断。 |
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事件現場に赴かないのにもかかわらず、名推理を披露して、華麗に事件を解き明かしていく。
(日経エンタテインメント!2012年1月号「2011年ヒット番付TOP50」より抜粋) ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆ 読紙感想文
モード工学の森田洋一です。私がこれを書いているのが2014年10月です。
「半沢直樹」は最終回の平均視聴率が42.2%だったそうです。原作の小説「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」も売れていて、累計で250万部を超えました。テレビも原作も大ヒットでしたね。 「謎解きはディナーのあとで」は320万部を超えました。こちらもすごい。続編も売れたそうです。 |
「半沢直樹」と「謎解きはディナーのあとで」は、私からみれば相似形のストーリーです。ヒットした理由が共通なのです。「半沢直樹」は、銀行の人事制度を批判していません。行内の身分制度を肯定しています。肯定した上で、その中で主人公は身分が上の者に反撃します。「クソ上司め覚えていやがれ」「やられたらやり返す。倍返しだ」。どちらも人気になったセリフですね。 このドラマがヒットする前には「キャリア」ブームというのがありました。企業の身分制度を肯定している点では「半沢直樹」と同じですが、上の人への攻撃はありません。その身分制度のなかでうまく世渡りをして人事の階段を登っていこうという考えでした。 「謎解きはディナーのあとで」の主人公はお嬢様とその執事の2人です。もろ、身分制のカタマリみたいな関係です。でも執事はコトバだけですがお嬢様に反撃します。「この程度の真相がお判りにならないとは、失礼ですがお嬢様はアホでいらっしゃいますか?」「それでもお嬢様はプロの刑事でございますか。 |
正直、ズブの素人よりもレベルが低くていらっしゃいます」「お嬢様。お言葉を返すようで恐縮ですが、お嬢様の方こそどこに目ン玉をお付けになってらっしゃるのでございますか?」 「チャンチャラおかしくって、横っ腹が痛うございます」…などなど。身分の違いは肯定していますが、その制約の中で反撃しています。
この小説より前から少女コミックの世界では執事モノが流行していました。「メイさんの執事」とか「黒執事」などは知っている方も多いのではありませんか。どちらも主従関係を強調しています。 〔束縛・自由〕という循環要因があります。循環要因とは流行の原因です。2年ごとに、束縛→弱束縛→弱自由→自由→弱自由→弱束縛→束縛と変化していきます。周期は12年です。変化の方向を強調した表現では、束縛→3合目自由→7合目自由→自由→3合目束縛→7合目束縛→束縛となります。 「半沢直樹」と「謎解きはディナーのあとで」は |
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身分制を肯定しています。これは「束縛」のタイミングで人気が出る考えです。でも、どちらも身分制が壊れない範囲で下克上をします。「束縛」の上に「自由」が少しだけトッピングされています。ですから、弱束縛(3合目自由)のタイミングでヒットしました。
弱束縛の流行期間は2年です。それほど長くはありません。でも、「謎解きはディナーのあとで」がヒットしたのは2011年前後、「半沢直樹」は13年夏、時期が違います。この大きすぎるズレは、メインとなる客の年齢性別の違いが原因です。「謎解きは~」を読んだ人の中心は若い女性、「半沢直樹」を熱心に見た人の中心は中年の男性です。流行は、男よりも女の方が早く、年齢が若い人の方が年配の人より早くなります。フアンとなった人の年齢性別の違いを考慮すると、2つの作品はほとんど同じタイミングの流行と言えます。 【この文、14年10月18日に記載】 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ |
小説大ヒットのワケは?桜木紫乃さん 人柄と番組出演で注目
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今夏の直木賞に輝いた桜木紫乃さん『ホテルローヤル』(集英社)と、テレビドラマ「半沢直樹」の原作、池井戸潤さん『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』(共に文春文庫)の勢いが止まらない。『ホテルローヤル』は受賞1か月余で50万部に達し、『オレたち……』2作もドラマ放送開始50日ほどで160万部を積み上げ、現在計209万部(単行本を含む)。大ヒットのわけは? (文化部 村田雅幸) 『ホテルローヤル』がすごいのは、最近の同賞受賞作の増刷が10万部前後で止まることが多い中、受賞前の1万3500部から49万部も伸ばした点。その風を吹かせたのは、受賞会見での桜木さんの姿だった。 白いブラウスの下に模型メーカー「タミヤ」の |
Tシャツ。ファンでもあるバンド、「ゴールデンボンバー」の鬼龍院翔さん愛用のシャツだが、……
〔・・・・・・〕 新・直木作家と“ビジュアル系エアバンド”との意外な組み合わせに「若い人も『この人はどんな本を書いたのか』と興味を持ったようです」(集英社広報部)。 ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇ 読紙感想文
上の文は、読売新聞2013年9月10日付27面の記事からの抜粋です。小説ホテルローヤルはこの後も部数を伸ばして60万部を超えたそうです。受賞前に比べるとじつに45倍の伸びです。受賞会見のインパクトがいかに強かったかわかりますね。
ゴルデンボンバーは、ロック系ヴィジュアル・パフォーマンスバンドですから「不良」、つまりカジュアル(自由)。直木賞は、80年近い歴史と権威を持った |
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ありがたい文学賞なのでエレガンス(束縛)。賞がうんぬん以前に文学だけでもエレガンス。なんしろ文学は「学」ですからねぇ。その水と油の関係のはずのものが一体化しているので結合です。以前は結合を複合と言っていましたが、復という字が複数を連想させるので最近は結合と言っています。数は関係ない。結合したってことは、見方によっては増えてもいるし減ってもいるわけです。この例で言うと、直木賞作家とロックバンドという2つのものが一体化して1つになったと考えれば数が減っていますし、直木賞作家という1つの塊にロックバンドという別な塊がやってきて2つ並んだと考えれば増えています。
ゴールデンボンバーのヒット曲と言えば「女々しくて」が有名ですが、2回リリースされていて、1回目の発表が09年10月、2回目が11年8月。1回目もヒットしましたがあくまでマイナー。2回目の時ブレイクして12年の紅白でも歌いました。この曲はメロディと歌詞が分裂しています。メロディは、プロ野球選手が、球場に出るときのテーマ曲として採用しているくらいですからテンポが |
速くて明るい。歌詞は逆に題名通り女々しくて暗い。メロディと歌詞が性格の不一致を起こしていて離婚寸前ですから、結合の対極である分離です。
異質なものが並んでいるというてんでは、「ゴールデンボンバーと直木賞作家の組み合わせ」と「女々しくてのメロディと歌詞の組み合わせ」は同じです。ところが循環要因は逆です。何が違うかというと参照点(基準点)が違う。パフォーマンスロックと直木賞作家は、赤の他人の関係であるのが当たり前、それが近づいてきて結婚寸前になっているのですから結合。Jポップのメロディと歌詞は、仲がいいのが当たり前。寄り添っているのが当たり前。ふつう、詩に曲を付けるときはその詩にあったメロディにしますし、メロディが先のときはそのメロディに合った歌詞にします。そうするのが参照点。ところが「女々しくて」はそれが反目し合っていて離婚寸前です。参照点を基準にすると分かれたがっているので分離なのです。 ロック系ヴィジュアルバンドと直木賞作家の結合は |
〔エレガンス・カジュアル〕の循環要因からみてもドンピシャのタイミングです。会見のあった13年7月は、若い人が7合目カジュアル、年配の人が3合目カジュアルです。どちらも、コテコテエレガンスは飽きているが、コテコテカジュアルにはまだ手が出ない。老若男女のだれもが中途半端を支持する時期でした。彼女のファッションも、エレガンスアイテムである白いブラウスの下に、カジュアルアイテムである「タミヤ」のTシャツを重ね着していますから、やはり中途半端カジュアルになっています。 この成功をうけて、会見会場でマスコミに受けそうなパフォーマンスをする受賞者が増えそうですが、それが流行のタイミングに合っていなければスベって白けるだけです。 【この文、14年11月30日に記載】 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ |
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数字ではない価値の創造に挑戦居心地の良い時と空間を提供
ユアサンクチュアリは、オシャレな大人の女性たちの支持を集めるレディスセレクトショップ、ザ・シークレットクロゼットを運営する会社だ。40代の女性を中心とする、大きくはないが活発なマーケットを開拓し、引っ張る存在として注目されている。現在都内に3店の規模ではあるが、7年前に新しく興した会社が成功させた業態として、際立つ。
(繊研新聞2013/09/18付11面より抜粋) ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇ |
読紙感想文
ザ・シークレットクロゼットは高価格のレディスセレクトショップです。ラグジュアリーブランドやそれと同等のクオリティーのアイテムを売っています。つまり、エレガンス服。スポーツウエアだのダメージジーンズだののカジュアルウエアは今後も店に出てきそうもありません。当然対象年齢は高く、40代以上がメインになります。といっても、仕方なく高年齢層に売っているわけではなくて、この年代がオシャレをするための店をはじめから目指していたようです。この店の1号店がオープンしたのが07年7月。〔エレガンス・カジュアル〕の循環でみると「弱エレガンス」のタイミングです。この後、トップエレガンスになり、次に弱エレガンスに戻って…と、ザ・シークレットクロゼットには6年間も追い風がふき続けました。
「アラサー」「アラフォー」という流行語がありましたね。「美魔女」なんてのもありました。エレガンスの |
タイミングではファッションリーダーの年齢が上がります。オジサン・オバサンがオシャレになります。オシャレのために金を使います。若い人がそういうオシャレな熟男・熟女にあこがれます。自分より年齢が上のファッションをマネしようとします。
現在(14年11月)はカジュアルのタイミングです。若い女性はトップカジュアル、それ以外は今のところ弱カジュアルです。このカジュアル期ではさきほどの話の逆が起こります。ファッションリーダーの年齢が下がります。ハイティーンがファッションリーダーになります。若い人がファッションに積極的になります。オシャレのために金を使います。オジサンオバサンが若者ファッションに過敏に反応します。オバサンがヤング向けの店に出没します。若作りをします。ですから、ザ・シークレットクロゼットにも、この変化に合わせた起動修正がこれから起こると思います。 【この文、14年11月23日に記載】 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
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柄パンツ人気広がるヤングからミセスまで
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レディスの今春夏物は、柄パンツ人気がヤングからミセスまで広がった。シーズンで世代を超えてヒットした商品は久しぶりだ。] (繊研新聞12年07月10日付15面「柄パンツ人気広がる」より抜粋) ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇ 際立つスカートのヒット
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(ヒットランキング)1位のスカートは、トレンドのマスキュリン×フェミニンなスタイリングに欠かせないアイテムとして世代を問わずにヒット (繊研新聞13年12月17日9面「際立つスカートのヒット」より抜粋) ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆ |
読紙感想文
モード工学の森田洋一です。
次の文は、シーズンの途中でファッションが変わるわけのページからの抜粋です。 ファッションの時差はなくなっていない2年遅れでもヒットできる時期には、年齢による流行時差がなくなったように見える場合があります。たとえば、04年の春の立ち上がりに色物のトレンチコートが「大ヒット」しました。このときのトレンチはヤングからミセスまでほとんど同じデザインが売れました。D管付きの本格的なトレンチを着たことのある私からみると、04年春に小売が騒いだコートをトレンチと呼ぶのには抵抗があるのですが、ともかくみんながトレンチと呼んでいたコートは、ヤング向けもミセス向けもデザインがほとんど同じでした。これはトレンチに限りません。さまざまなアイテムでヤングからミセスまでほとんど同じものが
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売れるという現象がこのときは起こりました。それで、「市場トレンドはヤングとミセスで全く同じになった、時差がなくなった」と勘違いする人が現れました。
ちょっとまったぁ。 たしかに04年春のトレンチは、結構若い人も買っていました。でも若い人は、前年の秋も買っていましたよ。前年の春も買っていました。2年前の秋だって人気でした。つまり、04年春にトレンチを買ったヤ ングは、04年春にほれたんではなくて、02年ごろににほれたんです。その思い出で04年春に買ったんです。04年春の数字が大きいのは、前に話しましたように、「仮需は、その瞬間の実需に反応しているのではなくて、 それまでの実需の累積に反応している」からです。一方、ミセス、それもかなり年齢の高いミセスの場合は、ヤングと違って02年・03年はトレンチを買っていません。ということは、ミセスがトレンチにほれたのは、04年春あるいは早くても03年年秋ぐらいだったと推定できます。 ほれた時期でみると、ヤングとミセスの流行時差は以前と同じようにちゃんとあります。 |
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ただ、商品寿命の長い年は、ヤングで 止まる前にミセスでヒットしますから、特にシーズン立ち上がりでは、流行のタイミングが同じになったように見えるんです。(ここまでコピペ)
一昨年(12年)の柄パンツの流行は04年のトレンチコートの流行によく似ていますね。ヤングにもミセスにも「世代を超えて」ヒットしました。でも世代間の流行時差はちゃんとあるんですよ。流行時差の間隔もそれ以前と同じなんです。 世代間の流行時差が(シーズンの初期に限れば)なくなったように見える時期を「同一視」と私は呼んでいます。同一視は他人と同じものを欲しがる流行です。同一視の期間は自分あるいは他人がすでに買っている物を再度買うことを好みます。その商品が街にあふれていてもへっちゃらです。あふれているという理由だけでは購買にブレーキがかかりません。だから商品寿命が延びています。とくにシーズン初期は、前年の思い出が消費者の頭に残っていますので、なおさら |
保守的な買い方をします。
アパレル問屋やファッション店は売れている期間が長いほど強気になりますので、後になればなるほどたくさん作りますし、たくさん仕入れます。結果として売った数、売れた数でカウントすると「世代を超えてヒット」「世代を問わずにヒット」したように見えます。 でもその世代が本当に新鮮に感じた時期、本当に魅力を感じた時期で、流行を観察すれば、世代間の流行時差は以前と同じようにあるということです。 【この文、14年04月02日に記載】 【関連ページ】 同一視 対立視を知って流行を読む (理詰めのトレンド予測第4章) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ |
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売り場観測 専門店レディス3月
トレンチコート×スカート 春の“鉄板”コーディネートが決まってきた。アウターはトレンチコート、ボトムはタイトやフレアーのスカートあわせが中心。秋冬のストリートテイストから一転、フェミニンなきれいめスタイルが広がっている。
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読紙感想文
上の文は繊研新聞2014/03/11付け9面の「売り場観測 専門店レディス3月」からの抜粋です。見出しには「3月」とありますが、3月11日付の業界紙なのですから少なくとも抜粋部分に関しては2月までの話ですね。
流行は不連続に変化します。ただしそれは個人の頭の中での変化です。年齢が異なると流行のタイミングもずれますので、客の年齢に幅のある小売店で観察すると、流行はじょじょにじょじょにの変化になります。 |
だって、30歳にしか売らない店や30歳にしか売れない店なんてありませんものね。しかもこの記事の場合、ある特定の一店舗の話では無くて、中心客の年齢が違う複数の店を総合した話です。だから、秋冬から「一転」して春に売れ筋が変わったのは、狭い意味の流行変化ではありません。
季節商品の場合、小売店が、あるシーズンのある時期のアイテムをどう準備しようかと考えるとき、基準点は前年の同時期になります。これは自分の店だけとは限りません、他店で売れていた物を含めての前年同時期です。これに、前々年に売れていて前年にはまだこけていなかった物や裏シーズンに売れた物、まだ間に合いそうな直近の売れ筋などをトッピングさせて決まります。それ以外のことを考慮しないわけではありませんがわずかなものです。 この前年同時期中心主義が極端なかたちで現れるのがシーズン立ち上がり向けの商品です。直近の売れ筋を探ろうとしてもその直近が無いのですから当然 |
そうなります。消費者も小売店と同じようなことをしていて、前年同シーズン主義で買っている物が結構あります。この場合も過去に極端に支配されているのはシーズン初期です。前年同シーズンの思い出がもっとも強くよみがえっている時期だからです。今シーズン自分が何を欲しくなるのかまだ知らないからでもあります。 というわけで、シーズン初期は小売店が売りたい物と客が買いたい物が一致していることが多く、ハッピーな時期となります。でも、所詮去年の思い出だからね。今年初めて好きになった物じゃないんだからね…。消費者の頭から前年同シーズンの思い出が薄れるにつれて、販売スピードや価格の下落が起こるのは避けられません。 【この文、14年11月08日に記載】 【関連ページ】 シーズンの途中でファッションが変るわけ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ |
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自撮りで広がる
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[進撃の巨人]
繁栄を築き上げた人類は、突如出現した“天敵”「巨人」により滅亡の淵に立たされた。生き残った人類は、三重に築かれた「ウォール・マリア」、「ウォール・ローゼ」、「ウォール・シーナ」という巨大な城壁の内側に生活圏を確保することで、辛うじてその命脈を保っていた。城壁による平和を得てから約100年後。いつしか人類は巨人の脅威を忘れ、平和な日々の生活に埋没していた。
序章(1巻) 城郭都市の外縁地区ウォール・マリア南端より突出した(甕城)シガンシナ区で生活する少年、エレン・イェーガー。エレンは医者の父グリシャと口うるさい母カルラ、そして幼馴染のミカサ・アッカーマンと暮らしていた。壁外の世界を夢見るエレンは壁外調査へと出る調査兵団に憧れていたが、両親やミカサには反対され、同じく壁外の世界を夢見る幼馴染のアルミンと話し合うことしかできなかった。845年、エレンが10歳の年、 |
突如として壁を超える巨体を持つ「超大型巨人」が襲来。壁は破られ、巨人が侵入し、そのうちの一匹にエレンの母、カルラは捕食されてしまう。ウォール・マリアは通称「鎧の巨人」によって破壊され、人類の活動領域はウォール・ローゼまで後退することになった。家族、家、夢、全てを奪われたエレンは巨人への復讐を決意し、調査兵団を目指し「第104期訓練兵団」に入団する。
◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇ 上の文は、フリー百科事典ウィキペディアにある進撃の巨人についての解説からの抜粋です。2014年5月1日現在のウィキにある記載をこのページに転記しました。
進撃の巨人の連載がスタートしたのは2009年9月、別冊少年マガジン創刊号に載りました。講談社漫画賞の少年部門で受賞したのが2011年5月、テレビアニメのスタートが2012年4月からです。単行本の累計発行部数は2013年4月現在で3600万部になります。記録的大ヒットですね。 |
進撃の巨人がヒットした理由は1つではありません。いくつかありますが、そのなかでも重要なものに「閉鎖系」の流行があります。閉鎖系というのは、周囲との関係が断絶している流行です。この物語に出てくる人間達は主人公を含めて高い壁に守られて生活していたわけですから、壁の外の世界と断絶しています。だから閉鎖系の流行期にヒットしました。 作者は、漫画におけるストーリー展開のお約束を守っていません。読者にとって先の展開が読みづらくなっています。これも閉鎖系の流行期に合っていました。 閉鎖系と逆の流行が開放系です。周囲とのつながりが強化される流行で、フタもカバーもチャックもないトートバッグが売れるのが、この開放系の時期です。トートバッグはなんしろ開けっぴろげで、外界と内側がはっきり仕切られていませんから開放形です。外界と内側の仕切りがあいまいになっているというてんではシースルーも開放形です。 |
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じつは、こういう流行を閉鎖系、開放系と私が言っていたのはだいぶ前のことで、今は分離、結合と言っています。つまり、〔開放形・閉鎖系〕と〔結合・分離〕は同じ流行です。 結合のことを複合と言っていた時期があります。一体化と言ったことがあります。合体も使いました。分離の方では単離というコトバを以前は使っていました。この流行要因を過不足なく表現できるネーミングを探していた時期が私にありまして、それでさまざまなコトバを使ってみたわけです。 「閉鎖系」というコトバは、外壁の存在をヒットの理由にするには向いていますが、予測の付かないストーリー展開の説明には向いていませんね。だから、現在はあまり使わなくなりました。 【この文、14年05月10日に記載】 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ |
[レディスカジュアル春夏
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読紙感想文
左の文は、繊研新聞2014年5月23日号11面「好調サロペット」からの抜粋です。
結論から先に言うと、サロペットは今年の流行ではありません。去年のヒット商品です。去年ヒットしたから「展示会の初回受注枚数は例年を大きく上回」ったわけですし、「セレクトショップで早くから提案されてい」たわけです。「今年は様々なファッション誌がサロペットやつなぎを取り上げてい」たのも去年売れていたからです。あなただってそうでしょう。前年の実績が全くないものを大量に作ったり、仕入れたりなんかできませんよね。 じゃあ、今年もなんで「ヒットしている」のか、分かりますか。消費者は、その商品に魅力を感じているときも買いますが、魅力を感じたことがあるという思い出でも買うからです。 |
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衣料品は季節感が強くはたらく商品ですのでシーズンの初めは、その直前に見たり、買ったり、着たりした経験を消費者は持っていません。思い出すのは前年の同シーズンになります。去年すでに魅力を感じていたけれど、どこの店で売っているのか分からなかった。知っていても高かったのでためらったりしていたらすぐ消えて買いそびれてしまった。それがこんなに安くたくさん出ている。だから喜んで買う。メーカーや小売店にとってはメデタシメデタシですが、この購買行動は消費者の思い出に頼っているため、シーズンが深まり、前年の思い出が消費者の頭から消えていくにしたがって商品力が急激に落ちます。やはり1年遅れはドンズバには勝てません。
でもシーズン途中で値崩れがひどくなっても、販売スピードにガタがきても、作った物は、仕入れた物は売らなくてはなりません。シーズン持ち越し在庫や廃棄処分を考えなければ、作った量=仕入れた量=売った量になります。つまり、前年にヒットした実績があるから安心して大量に扱いましたというウエアはイコール |
大量に売ったウエアになるわけです。
それと、マスコミがよくやりますが、みんなが「売れている」と言っているから売れているんだとヒット商品を多数決で決めようとすると、やはり1年以上遅れます。みんなが同じことを言うようになるためには、広い範囲でかなりの量が流通していなけりゃなりませんからね。 ちなみに、記事に出てくる生成りのヒットも去年の流行です。ということは生成り白はこれから急激にパワーダウンするわけです。でも売れる色がなくなるわけではありませんからご安心を。今年の色をやればいいんです。 【この文、14年05月27日に記載】 【関連ページ】 雑誌の記事でファッションを予測できるか ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ |
[タイガー(雑貨店)タイガー(TIGER)とは、デンマークのゼブラ(ZEBRA A/S)が運営するチェーンストアである]
[2012年7月、同区西心斎橋にて、タイガーのアジア1号店「Tiger Copenhagen アメリカ村店」を出店した。日本には同名(タイガー)の会社が存在するため、同国内では「Tiger Copenhagen(タイガー コペンハーゲン)」のブランド名で展開する。 オープン当日、11時の開店時に既に約400人の行列が出来る盛り上がりを見せた。ところがオープン3日目も客足が落ちることはなく、在庫が枯渇してしまったため4日目からの臨時休業を余儀なくされる。7月26日から2階部分を閉鎖し1階の一部のみで営業を再開したが、中国・上海市に置いていたアジア向けの物流拠点に用意していた3か月分の在庫が3週間で無くなってしまい、8月18日、再び長期休業に突入する事態となって |
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しまった。2度目の営業再開後にインタビューに答えたクラウス・ファルシグ社長は、これを「不本意で残念なスタート」だったと認めており、この失敗の原因を、基本的に宣伝広告を打たない経営方針であるほか、ヨーロッパではオープン日に行列が出来るということはまずなく、一瞬で当初の売上の3倍以上を記録したこの結果をまったく予想出来なかったこととしている]
(2014/05/28現在のウィキペディア「タイガー(雑貨店)」より抜粋) ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇ [なぜタイガーに客が殺到したのか? 来店客の7割近くは女性だ。20~40代が中心だが、年代も幅広い。店内には、彼女たちの心をくすぐる「かわいく、カラフルでポップな商品」がズラリと並ぶ。
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しかもデザインはインテリア家具でも人気の高い北欧テイスト。高価な北欧家具をそろえられなくても、小物や雑貨で部屋を演出することはできる。たった100円か200円なのに、“普段の暮らしを豊かに変えられる実用品”が多いのがタイガーの一番の魅力だ。大阪市内から駆け付けた30代女性の2人連れは「かわいくてポップなので、見ているだけでも楽しい」「北欧ブランドは高い印象があるが、安いのがいい」とにこやかに話す。 さらに取り扱うアイテム数が豊富なのも人気の秘密。キッチン・リビング用品、ステーショナリーから、ファッション雑貨、パーティグッズまで、オープン当初は約1000アイテムを展開。売り場には見て選べる楽しさがあり、そのワクワク感と安さがついで買いを誘っている。] (日経トレンディネット2012年09月22日「なぜタイガーに客が殺到したのか?」より抜粋) ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇ |
読紙感想文
このタイガーの成功をうけて他の海外雑貨チェーンも日本にやってきました。国内企業では、遊心クリエイションが「ASOKO」1号店を13年3月にオープン。開店初日に大半が完売になったそうです。タイガーやASOKOは今でも人気が続いています。
この低価格雑貨ブームについて様々なことが言われています。スタイリッシュで遊び心がある。オシャレでかわいい。デザインのおもしろさに比べて安い。100円ショップや低価格雑貨店に比べデザイン性に優れている。役に立ってユニーク。品揃えが豊富。 〔束縛・自由〕という循環要因があります。循環要因とは流行現象を起こす原因のことです。我々の頭の中にあって循環しています。〔束縛・自由〕も数ある循環要因のなかの1つで周期は12年。「束縛」→「弱束縛」→「弱自由」→「自由」→「弱自由」→「弱束縛」→ |
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「束縛」と2年ずつのステップで変化します。この〔束縛・自由〕はファッション商品に関しては〔エレガンス・カジュアル〕と呼び変えた方が分かりやすいでしょう。つまり、「エレガンス」→「弱エレガンス」→「弱カジュアル」→「カジュアル」→「弱カジュアル」→「弱エレガンス」→「エレガンス」と変化します。これを、変化の方向を強調した表現にすると「エレガンス」→「3合目カジュアル」→「7合目カジュアル」→「カジュアル」→「3合目エレガンス」→「7合目エレガンス」→「エレガンス」となります。
カジュアル(自由)のタイミングでは、消費者がその商品に対して持つこだわりや決めつけが弱まります。季節感もなくなってきますし、TPO(時・場所・場合)の締め付けも弱まります。デザインの自由度も上昇します。たとえばウエアは、作業着でパーティーに行ったっていいじゃない。下着みたいな格好で外を歩いたっていいじゃない。夏服を冬着たって、冬服を夏着たっていいじゃない。汚れてみえたって、穴が開いてたっていいじゃないとなります。ボールペンなら、いかにもボールペンでこざいますというデザインでなくてもいいじゃない。 |
色が真っ赤でも真っ黄色でもいいじゃない。球形でも立方体でもいいじゃない。持ちにくいほど大きくても小さくてもいいじゃない。機能がある程度犠牲になったって楽しければいいじゃない、…です。
タイガー・コペンハーゲン1号店ができた。12年7月は、若い女性が7合目カジュアル、それ以外が3合目カジュアルのタイミングでした。横編みニットの冬帽子を真夏に若者がかぶった年です。コテコテカジュアル(自由)は、全体に使うのはまだ早いが、部分使いならオッケーよ、…というタイミングです。自由デザイン低価格雑貨のタイガーはこの流行にドンピシャのタイミングで日本にやってきました。 今は、あれから2年たっています。若い女性はカジュアル(自由)に、それ以外の消費者は7合目カジュアル(7合目自由)になっています。現在は、自由デザインが、小物でなくても、低価格でなくても受け入れられる時期に入ってきています。 |
【この文、14年05月28日に記載】
【関連ページ】 長期的に今どんなトレンドが来ている? エレガンスはなくならない! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ |
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いつもより
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という性質があります。これは進化の過程で獲得したもので、そうすることが生き残りに有利だったわけです。我々も動物ですので同じ性質を持っています。儲けたいという気持ちよりも、損したくないという気持ちの方が強いですし、売りたいという欲よりも、売れなかったらどうしようという恐れの方が強いのです。ノーベル経済学賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマンさんによるとその比は2倍以上だそうです。
アパレルの供給側の人間がそれまでのやり方を変えるのは、多くの場合欲のためというより恐れのためです。今の所にとどまるより新天地に移る方が不安が少なくなると動きます。今の所にとどまる恐怖が移る恐怖より大きくなると動きます。 〔エレガンス・カジュアル〕は12年周期 |
でしたね。結構ロングです。ヤングレディスカジュアルブランドは長い長い冬の時代をこれまで経験してきました。よそのブランドを見てもエレガンスっぽいものは他より景気がよかったのに対し、100%カジュアルのブランドは、長期の低空飛行が続きました。もう疲れました。カジュアルブランドの意地もこだわりもフラフラです。やせ我慢ももう限界です。
幸いカジュアルブランド復活のにおいがこのごろしてきました。でもここんところ景気のよいブランドはコテコテカジュアルではなくてエレガンスっぽいカジュアルです。女の子もエレガンスウエアとカジュアルウエアのチャンポンを着ていました。カジュアルはまだ病み上がりです。またエレガンスに戻らないか心配です。だったらエレガンスシフトしちゃえ。絶対の自信があるわけじゃないけど、カジュアルにとどまっているよりは不安が少ない。 結果は分かりますね。意地とこだわりとやせ我慢でカジュアルにとどまったところから復活です。 |
【この文、14年06月18日に記載】
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TRENDY 2014年上半期
ヒット商品ランキング[・・・]
ゲーム・玩具・文具
妖怪ウォッチ
ゲーム・玩具業界でだれもが空前の大ヒットと認めるのが1位の「妖怪ウォッチ」。ニンテンドー3DSのゲームソフトは2013年7月から発売されていたが、「ものすごい人気となったのは今年1月にテレビアニメの放送と漫画の連載が始まってから」(ドン・キホーテ玩具バラエティ課の斉藤盛俊氏)。コンテンツの中身を含め、作中に登場する「妖怪メダル」を売る仕掛けが綿密に練られていた。これがピタリとはまり、メダルは品切れ状態が続く。 [・・・] |
TSUM TSUM
ディズニーストアのみで販売されている手のひらサイズのぬいぐるみ。オフィスに置ける癒やしグッズとして人気を博し、2013年からの約半年間で販売個数100万個を突破 (日経ビジネス14年6月30日号「2014年上半期ヒット商品ランキング」より) ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇ |
バンダイ「妖怪ウォッチ」メダル 累計販売年内に1億枚へ バンダイは人気ゲーム「妖怪ウォッチ」のキャラクターをあしらったメダル玩具を増産する。今夏にも月産1千万枚強と、発売した年初に比べ5倍以上に増やす。同メダルは男児に人気で店頭で売り切れとなる状態が続いている。今月10日にはゲームの続編が発売されることもあり、メダルの販売は年内に累計1億枚を超える見通し。男児向け玩具で異例のヒット商品となる。
(14年7月4日日本経済新聞11面「バンダイ『妖怪ウォッチ』メダル 累計販売年内に1億枚へ」より抜粋) ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇ |
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読紙感想文
上段の記事にある妖怪ウォッチは、TRENDYランキングの「ゲーム・玩具・文具」部門で1位になりました。メインのゲームソフトの出荷量がすでに140万本を超えています。関連商品もいろいろありまして、なかでも妖怪メダルは大人気です。1月に発売され、6月末時点で3200万枚になりました。それでも足りなくて売り出したとたんになくなる状態が続いていて、新作発売の日は玩具店の前に前日深夜から並んでいる人がいるほどです。発売元のバンダイはこの供給不足に対応するため、生産能力を5倍に増強し、今年中に1億枚以上を売るつもりだそうです。
妖怪ウォッチがこれだけヒットしたのは、もちろん商品の魅力もありますが、ここまでヒットが大化けしたのは、メディアミックスを仕掛けたのが成功しているからです。これは、同ランキングの同じ「ゲーム・玩具・文具」部門で2位となった「TSUM TSUM」とヒットの理由が |
同じです。「TSUM TSUM」では、「LINE:ディズニーツムツム」というLINEゲームが販促用に公開されていて、これがヒットしています。公開2カ月で1000万ダウンロードされました。つまりメディアミックスです。ランキング1位と2位のヒットの理由が同じなんですから、今年はメディアミックスの当たり年ということです。
ネット百科事典のWikipediaによると「特定の娯楽作品が一定の経済効果を持った時、その作品の副次的作品を幾種類かの娯楽メディアを通して多数製作することでフアンサービスと商品販促を拡充するという手法」をメディアミックスと呼ぶそうです。私が言うメディアミックスもこの意味に近いんですが、なにもテレビや雑誌などでなくてもよくて、普通の商品であっても、別分野のものが消費者に露出し、連係し、互いに販促効果を持ちあっていれば |
メディアミックスです。妖怪メダルはすでに3000万枚を超え年内に1億枚というんですから、ゲームソフトとメダルを比べた場合、どちらが「副次的作品」だか分かりませんね。ほかには、妖怪メダルをコレクションさせるための大判切手帳のような「妖怪大字典」や、ゲームソフトの攻略本である「妖怪ウォッチオフィシャル攻略ガイド」なども大ヒットしています。
妖怪ウォッチや妖怪メダルが人気を爆発させた直接の原因はもちろん漫画とアニメです。メディアミックスの本来の定義に近いですね。販促効果としてはとくにアニメの影響が大きいと思います。これは遊戯王やポケットモンスターなど過去のメディアミックスの成功事例と同じです。とくに、ポケットモンスターに似ています。ポケモンは漫画・テレビアニメ・カードゲーム・映画と横展開していて、もっとも効果があったのがテレビアニメでした。現在までのポケモン関連市場の売り上げは、ゲームソフトだけで2億本以上、金額では総計が4兆円だそうです。それに比べると妖怪ウォッチはまだまだこれからという感じですが、メディアミックスが当たったときの |
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パワーのすごさを分からせるレベルではあります。
〔結合・分離〕という循環要因があります。本来分離しているのが当たり前(参照点)のものが結合すると結合です。一体化とか合体・複合・開放形・ミックスとも言います。本来結合しているのが当たり前(参照点)のものが分離すると分離です。単離・分割・閉鎖系とも言います。メディアミックスは、本来別の分野であるはずの商品が、たとえば妖怪ウォッチのような1つのテーマ、1つのストーリーでつながっているのですから結合です。 さきほど、今年はメディアミックスの当たり年だと言いましたね。メディアミックスは結合の一種でしたね。ということは、今年は結合の当たり年だということです。何でもくっ付けちゃいましょう。 【この文、14年08月14日に記載】 |
【関連ページ】 朝鮮王朝の歴史と人物 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ |
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とにかくいい服を着ろ、と教えられた。
レディスブランド「エンフォルド」(バロックジャパンリミテッド)が話題だ。12年春、「リラックスエレガント」と称してデビューし、みるみるうちに大人の女性の心をつかんだ。
〔・・・・・〕 インポートブランドと間違われる方が多かった。 〔・・・・・〕 ――顧客はどういう人たち。 ハイエンドなブランドも一通り着つくした方が、〔安いわ〕と買う層と、ハイエンドに他手が届かないけれど、この価格だったら買えるという層の両方ですね。 ◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇ |
読紙感想文
左の文は、繊研新聞社のサイトに載っている14年7月14日更新記事からの抜粋です。 2012年2月に「エンフォルド」を立ち上げた植田みずきクリエイティブディレクターは、2000年3月の「マウジー」の立ち上げに関わった人でもあります。マウジーとエンフォルドとの間には12年の時差があります。これは、両ブランド間の客層の年齢差を考慮すると流行のタイミングでは11年の時差になります。〔エレガンス・カジュアル〕の流行周期は12年ですからこの流行循環上ではタイミングがちょっぴりずれています。マウジーを立ち上げたのが7合目カジュアル、エンフェルトが3合目カジュアルです。〔エレガンス・カジュアル〕は、トップエレガンス→3合目カジュアル→7合目カジュアル→トップカジュアル→…と2年ごとに移っていきますから、循環上の位置(位相)関係ではエンフォルドがマウジーより先になります。 |
エレガンス(束縛)の流行のテッペンでは人々は権威に従順になります。それで高級ブランドに追い風が吹きます。有名デザイナーがこれを着なさいと訓示します。素材も価格も上等です。デザインもエレガンスで上流階級向け、大人向けですし冒険をしません。過去と歴史が大好きなトラッドデザインです。こういった特徴が、トップエレガンスのタイミングではラグジュアリーブランドにすべてプラスにはたらきます。 次に弱エレガンスつまり3合目カジュアルに変わると、人々は、カジュアルのトッピングをしたカジュアル風味エレガンスをコテコテエレガンスより好むようになります。ラグジュアリーブランドを買う人の価格感度が上がります。高くても買うという人が減り、安ければ買うという人が増えます。エレガンス度の強すぎる服やブランドは値崩れが起きます。逆らえば苦戦しますし、従えば売れます。これが、本物ラグジュアリーブランドより低価格のエンフォルドが当たった最大の理由です。 |
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話を戻すと、「マウジー」は、流行循環でみると「エンフォルド」の3合目カジュアルより後になります。次の7合目カジュアルのタイミングです。マウジーを立ち上げた当時はエレガンス風味カジュアルが人気になる時期でした。そのため、カジュアルデザインだらけのマルキュー系ブランドの中では大人びたデザインのマウジーがヒットしました。 現在(2015年)は、ダメージジーンズやタトゥーが流行したのでも分かるようにトップカジュアルです。コテコテカジュアルがヒットしますし値段も通ります。でもこれはいつまでも続くわけではありません。次のエレガンス風味カジュアルの流行期に戻ると、コテコテカジュアルは値崩れをします。量販品が街にあふれます。 (この文、15年10月20日に記載) 【関連ページ】 長期的に今どんなトレンドが来てる? ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ |
女性に広がる
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読紙感想文
ビームスボーイの人気が復活しています。復活した最大の理由はカジュアルが人気だからです。
カジュアルの流行を厳密に言うときは「自由」と私は呼んでいます。これと逆の流行が「束縛(エレガンス)」で、自由と束縛は代わりばんこに流行しています。周期は12年です。といってもいきなり逆へ行くわけではなくて中途半端な時期をへてから逆へ到達します。トップ束縛→弱束縛→弱自由→トップ自由→弱自由→弱エレガンス→トップエレガンスと2年刻みで変化していきます。「弱」の時期を含めると、若い女性では、06年から11年までの6年間が束縛で、12年から17年までの6年間が自由です。 束縛の時期になると女性のファッションは女っぽくなります。「女は女らしく、女らしさのルールを守れ」という考えが新鮮に感じるのは束縛の時期です。 |
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昔、お嬢様ブームなんていうのがありましたが同じ流行です。
もしあなたが若い女性だったら、「女らしさのルールを守れ」という言葉にはカチンとくるはずです。それは若い女性にとって今(14年9月)が自由のタイミングだからです。ヒットソングでも「♪ 私は自由よ~」って歌っていますね。女らしさの制約から自由なのですから、ビームスボーイに限らずメンズライクな着こなしは、現在追い風がふいています。 だからといって「ビームスボーイは12年サイクルで、今はどのタイミングで…」なんて短絡しないでください。メンズライクファッションは〔束縛・自由〕の流行循環と強い相関を持っていますが、イコールではありません。まっ、そうとう相関は強いですからアバウトな話としてはかまいませんが。 現実の流行現象は様々な要因からゆらぎがあります。たとえば、他力本願という循環要因が顕在化 |
しているときは「フェミニンやガーリー」の方へ、そうでなかった場合よりもゆらぎます。他にも、女っぽくさせる循環要因はいくつかあります。だから、現実の流行現象は複雑なんですね。でも、循環要因で考えれば単純なんですから、それを重ね合わせることによって、複雑な現象も予測できるわけです。
【この文、14年09月25日に記載】 【関連ページ】 様々な「らしさ」「約束事」がグズグズになる (理詰めのトレンド予測6章3節より) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ |
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売れてます
アーバンリサーチのオリジナル雑貨「スメリー」
プラザに1坪の限定店
2週間で200万円超
アーバンリサーチが販売するオリジナルのアクセサリーブランド「スメリー」が好調だ。今春から「プラザ」に期間限定売り場を出したところ、わずか1坪(3.3平方㍍)ながら、2週間で300万円を売る例も出ている。 〔・・・・・・〕 マニキュアで200種類近いバリエーションがあり、それ以外の商品も2カ月で入れ替わるなど品揃えの鮮度を保つ仕組みが20代女性に支持されている。 〔・・・・・・〕 売れ行きは場所によって異なるが、20代の女性の集客が多い立地なら、1坪で2週間設置して200万~250万円程度売れるという。…… |
(繊研新聞2014/09/30、1面「売れてます」より抜粋)
◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇ 期間が限定されている。場所も店内の一部に限定されている。品揃えにバリエーションがある。短期間で種類が入れ替わる。こういうやり方が成功するのは分離という循環要因が顕在化している時期です。時間・空間・商品の区分を細かくして、しかもその区分を強調しているから分離なのです。
だからといって、今が分離の流行のテッペンだというわけではありませんよ。分離と反対のポジションの流行である結合のテッペンの時期をやっとこ過ぎて、分離へ向かうまだ途中です。そして、現在がその途中のタイミングだというのもヤングのみの話です。オジサン・オバサンは結合のテッペンあたりか、あるいはさらに遅くて結合のテッペンに向かう途中のタイミングです。だから、スメリーの人気が20代の女性に片寄っているのです。 |
もちろん、もともとがアーバンリサーチというヤング向けのショップの雑貨だったというのも、売っているのが「プラザ」店内だというのも年齢の片寄りに関係していますが、それだけではここまで年齢が集中しません。結合のテッペンを通り過ぎたのがまだヤングだけだというのが片寄りの最大の理由です。 ヤング限定とはいえ、結合のテッペンを過ぎたばかりなのにマスで受け入れられたのは、ひとつには分離の表現がおとなしいことがあげられます。店内の扱い方は分離ですが、個々の雑貨のデザインは分離になっていません。消費者からみれば弱っちい分離ですよね。それと、雑貨・小物を扱っているというのが重要です。雑貨・小物なら、新しすぎる流行でも、部分使いとして、例外として取り入れられます。消費者にとって、先端を行く流行を受け入れ |
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やすいアイテムなのです。たとえば分離とは別な流行ですが、今全盛期を迎えつつあるカジュアルでは、キャップやスニーカーなどの小物が、体全体をおおうアイテムより先にヒットしましたね。また、タイガーコペンハーゲンという雑貨店が他のカジュアル店に先駆けて繁盛しました。
この、雑貨・小物は新しい流行が他より先にマスになるという原理を使うと、トレンドウォッチングの早さと精度を改善させることができます。すでにヒットしている雑貨・小物から、その色・柄・素材・シルエットを盗むのです。ライバル店やそこの商品を気にしている人より、新しい流れに気付くタイミングが早くなります。ただ、自分が扱っているアイテムとは消費者のこだわりが違いますから翻訳にちょっとコツがいります。違いなんか無視してそのまんまコピーしてもうまくいくことも結構あります。 【この文、14年09月02日に記載】
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14/04/02ページ作成、15/10/20最終加筆