−流行予測 1段目−
流行を起こす原因を循環要因というこれまで流行を複雑に見せている原因を6つあげました。これだけあるのですから、流行は予測するには難しすぎると多くの人が考えても無理はありません。
こういう流行を複雑に見せている原因を取り除いていくと流行はどんどん単純になっていきますが、不純物を限界まで取りのぞいて純粋の流行現象だけにするとなにが残るでしょうか。単純な繰り返し、つまりサイクルが残ります。サイクルといっても1つではありませんよ。流行現象は1つであっても、それと関係するサイクルはいくつもあります。このサイクルのそれぞれを循環要因と私は言っています。
各循環要因は異なる一定の周期で循環して |
います。1つのサイクルは、互いが正反対である要因と対(カップル)になっていて、シーソーのように替わりばんこに上昇します。シーソーですから両方同時に上昇したり、下降したりはしません。具体的にいうとたとえば、重いものが売れているときは軽いものは売れません。重いと軽いはカップルになっていて片方が出ているときには、もう一方はお休みです。同じように、こってり味が人気のときはさっぱり味は人気がない。シンプルなものが売れているときは、デコラティブなものは苦しい。曲線曲面を強調したデザインが人気の時は、平面的デザインはお休みです。少なくとも同じ市場向けとしては共存できません。あなたが今扱っている商品で考えてみて下さい。売れているものの共通点は何ですか。売れていないものの共通点は何ですか。売れている共通点と売れていない共通点は、何かが逆になっていませんか。
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流行の原因は頭蓋骨の中にある流行には必ず逆があり、逆の流行が同時期に共存することはありません。共存しているように見えるときは、先ほどの流行を複雑に見せている原因で説明できます。ではなぜ、流行に逆があるのでしょうか。なぜ共存しないのでしょうか。なぜある流行と逆の流行が替わりばんこなのでしょうか。それは、流行がおこる原因が消費者の頭の中にあるからです。
先ほど、重いものが売れているとき、軽いものが売れているときという言い方をましたが、物理現象として考えると、この分類はおかしいですね。重い軽いと言っても、ようするに質量ゼロの状態から、どれだけ離れているかという程度の違いです。同じものの同じ方向の程度の違いです。それを我々は、重い軽いは正反対のものであるかのように扱います。 |
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あの人は色が黒い、あの人は白い。あの人は背が高い、あの人は低い。この部屋は暑い、この部屋は寒い。…同じですね。肌の白黒は、ようするに光の反射率という同じスケールの同じ方向の程度の違いですし、ノッポチビも身長ゼロの状態からどれだけ離れているかという、同じものの同じ方向の程度の違いです。部屋の暑さ寒さも、絶対零度からどれだけ離れているかということで、正反対のものではありません。それを正反対のものであるかのように我々は扱います。自然界がそうなっているからではなくて、我々の頭(頭蓋骨の中)が世の中(頭蓋骨の外)をそう分類しているのです。この頭の中の分類のカップルを流行現象を通して観察した場合が循環要因です。我々の頭の中では対立的な循環要因が共存していて、時代時期によってその片方だけが一時的に表に出てきます。性別や年齢が同じだと、
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そのタイミングもほとんど同じになります。本能の反対方向へのブレが集団で起こります。だから、循環要因を通して流行を見ることで、流行を原因から観察したことになりますし、本当の理由を考えることで予測もできるようになります。 流行は複雑に変化しますが、その原因となるものの仕組み、カラクリは単純です。しかもその仕組みそのものは変化しません。ダーウィンさんにご登場願わなければならないようなずーと先の話なら別です。でも、我々の持っている本能が変わっていないとみなせる期間の範囲ではこれからも変わりません。百年後だって千年後だって同じです。流行現象は社会現象、つまり社会科学の対象ですが、流行の原因は社会現象ではありません。大脳生理学に属する分野です。それなのに、流行の原因までも社会科学という縄張りの範囲から見つけようとこれまでしてきました。それが、流行の予測を今まで困難にしてきた理由の1つになっています。 |
売れ筋が止まったら反対を入れると
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とっては移るのが早すぎたということはありえますが、実需でも早すぎたということはまずありません。
でも、流行には必ず逆がある、逆が上昇しているという発想がないと、今は落ち目になっている古い売れ筋にしがみつきたくなります。落ちているのは分かっているのですから、さすがに今までどおりというわけにはいきません。今までのままは不安、反対へ行くのはもっと不安ということで、今までのご近所をウロウロすることになります。不安であればあるほど、今までいた場所の近くを激しく動き回ります。わたしはこれを「殺虫剤をかけられたハエ」と言っています。追い詰められれば追い詰められるほどその動きは激しくなります。 多様化は流行沈没の始まり30年近く前に「日本沈没」というSF小説がベストセラーになったことがあります。映画にもなりました。その日本列島沈没シーンを見た人は、それを
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思い出してくださると分かりやすいと思います。見ていない方は沈没シーンを想像してください。今までの売れ筋が「沈没」するときは、すべてのデザインが同時に海面下になるわけではありません。まずもともと低かったところから水没していきます。海上に残っているところの範囲がだんだん狭くなっていきます。山と山の間の低地も水没しますので、海面上に残っている場所が細かく分かれてきます。海上に点在して残っている場所の標高もどんどん低くなってきます。売れ筋がパラパラとばらけます。ヒットが小粒になります。「売れ筋を見つけた」と思った直後に止まります。
こういう市場の変化は、消費者がデザインに妥協できない「対立視」という流行が来ているときにも起こります。でも区別はできます。対立視が来ているための短命化やバラケは全商品で起こります。商品が沈没しかかっているために起こる変化はその商品でだけ起こります。
商品が沈没しかけているときは、海上に出ている場所があちこちにまだ残っています。そのため、 |
動き回ることによってそれを拾うことができます。ピンボールゲームの玉のようにあちこち動き回ると、ポイントを稼げるチャンスが増えます。「でも、落ち目は落ち目なのだから、ましだと言ったってたいしたことないのだから、そんな所でヘトヘトになるほどかけずり回ることないのではないか。供給不足になりすぎて、真空掃除機に吸い込まれたみたいに売れていく商品がすでに反対側にあるのだから、そちらのほうだったら、普通だったら海面下にあるようなデザインでも高台と呼べるほどに隆起しているのだから。同じエネルギーを使うのだったら、止まる恐怖に追い立てられてヘトヘトになるよりも、売れすぎてヘトヘトになる方がいいと思う」のですが、何が今までと逆なのか、何が上昇してきているのかが分からなければ、早め早めに移っていくことはできません。
例をあげましょう。02年に(シニア)ミセス市場でダウンジャケットの仮需が「多様化」しました。これは、その前年01年秋冬の店頭実需でダウンや中わたなどの非ウールコートが値崩れしたことを反映して |
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います。ダウンや中綿は、防寒コートという商品群の中で軽いほうに寄った商品です。それが苦戦したのですから02年は重いほうをやればいいのですが、多くの(シニア)ミセス向けメーカーはそうはしていません。ますます軽量コートに生産を集中させています(`02年7月現在)。コートの差別化や価格政策で競合をのりきるつもりのようです。ウールなどの重いコートは、前年も供給量を減らしましたが、02年はそれ以上に絞り込みました。業界の外の人間から見れば、沈んでいく方を追いかけるなんてオカシナコトヲシテイルと思えるのですが、内部の人にとってはそうではありません。大まじめです。絶対の自信があってやっているのではありません。不安はあります。でもその不安は、それ以外の選択をした場合に比べれば相対的に小さいのです。
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プロなら循環要因だけで予測できる売れない商品は、売れない理由を考えてそれを逆にすればヒット商品になります。流行要因のシーソーの上がり下がりの周期が前もって読めれば、来年再来年の流行もわかる理屈です。またこのシーソーに、流行を複雑に見せている原因を加えることによって、各ポジションの人が、見たと「錯覚」する流行の予測もできます。
前のページまでの話では、流行を複雑に見せている原因を、一枚一枚はがしていきましたが、今度はかぶせていきます。見えているものを予測するためです。すると、数値データでみた流行など、業界の人が認識する流行が分かります。たらなくなる物が分かります。値崩れする物が分かります。止まる物が分かります。在庫になる物が分かります。
その結果みんながとる行動もある程度予想ができます。あなたの売り先が認識する流行の予測ができます。その結果とる行動の予想ができます。仕入先が認識する流行の予測ができます。その結果とる行動の予想ができ
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ます。ライバルが認識することとその取りそうな行動が読めます。あなたの上司が認識する(錯覚する)流行と取るであろう行動の推定ができます。 他人だけではありません。あなたの予測もできます。あなたが取りうる選択肢と、それぞれの場合の結果が前もって分かります。あなたは部下にたいして的確に指示を出せます。はっきり方向を示せます。
現場が見えれば指示が出せるあなたが出世しすぎた人であった場合、部下が増えすぎた人であった場合、一番困ることは何でしょうか。現場のことが分からなくなることです。出世しすぎると、付き合う人が変わります。高そうなスーツを着ている人が友達になります。安そうな服を着ている人や、おしきせのユニフォームを着ている人との付き合いが減ります。それはそれで気分のいいことかもしれませんが、今この瞬間に市場の先端や現場で起こっていることが分からなくなります。そうなれば的確で具体的な指示が出せなくなり |
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ます。部下が少なくて現場が良く見えていたときは、「おまえ、右にいけ」「左にいけ」「ばかやろう、まだそんなことやってんのか。やめちまえ」と具体的に断定的に指示が出せます。ところが現場が見えなくなると、「まあ待て、もっと検討してから」と話を先送りするようになりますし、「今の社会情勢は〜」と新聞の社説みたいな、結論のない話をしたくなります。「半分だけ残しておけ」と中途半端な指示を出すようになります。「まだ早すぎる」と、部下の提案は全部却下したくなります。だって、分からないのですから、不安なのですからそうなります。
あなたがまだ偉くなっていないのなら、そういう上司を見て、自分があの立場になったらああはならんぞと考えるかもしれませんが、あまいあまい、あなたも偉くなったらやはり同じになります。今あなたに見えていることの多くが見えなくなります。古びた昔の経験ばっかりが頭の中を占拠するようになります。
偉くなっても、現場の現場、店頭が読めていれば話は別です。 |
そこからロジックを組み立てていけば、それぞれの段階の現場が分かります。偉くなったあなたは、現場の人間より現場に詳しくなります。普通は、現場の人間のほうがよく分かっているわけですが、分かっているといったって相対的なものです。 今この瞬間の市場が見えているわけではありませんし、その人の立場から見てベストの選択をいつもしているわけではありません。でも、現場が知らないことまで知るようになった今のあなたなら、その誤りを直してあげられるはずです。
相手がプロだから動きが読める「それぞれの人間が今何をするか、これから何をするかを予測するなんて、大風呂敷を広げやがって。お前は神様のつもりか。それとも、新興宗教の教祖にでもなるつもりか」と叱られそうです。たしかに、店頭で起こることが予測できたからといって、それだけで個々の立場の人間が何をするかまで予想できるというのは話を単純化させすぎています。
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でも当たらずと言えども遠からず、いい線までいきます。なぜならば、業界の人はプロだからです。あなたもプロですし、あなたが付き合っている人もプロです。
プロは早い話が、生活がかかっています。人生がかかっています。「オレはこれで、妻子をやしなっている。家のローンを払っている」わけですから、安心を追求します。建前は別ですよ。ここで言っているのは、企画書の理屈、稟議書の理屈、会議の理屈ではありません。本音の方の話です。
その人が認識する流行が推定できて、そう認識したときに何が安心をもたらすかを考えられれば、とる行動も予想できます。自分を安心させるものが何かは、自分が見た、確認したと思っている需要でほとんどが決まります。それ以外の理由で行動することは、自分自身の不安が増すことになりますのでまずしません。 例えば、パリコレの結果がどうであれ、情報提供会社の話がどうであれ、それが自分を安心させてくれる内容でなければ無視します。安心させてくれる内容なら、そういう部分があったなら、 |
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自分がすることしないことを正当化させる理屈として利用します。
たとえば、お婆さん向けのアパレル業界を考えてみましょう。お婆さんだって裸で暮らしてはいません。服を着ています。そのお婆さん向けの服を供給している企業や担当者の話です。若い方には信じられないかもしれませんが、お婆さんにもファッションがあります。現に売れ出す物と売れなくなる物が毎シーズン出てきます。「でも俺は大丈夫だよ。お婆さんのファッションは、レディース分野ではタイミングがどん尻なのだから。ということは、自社以外は、自分の担当以外は全部どこだって先行事例なのだから、それを見ればこれからが分かる。ビジネススクールのケーススタディは過去の事例だけど、自分のまわりにあるケーススタディはハイミセス市場にとってはどれもこれからの事例なのだから、それを総天然色でリアルに見ているのだから、失敗しようにも失敗しようがない。」…のはずです。でも他の業界と同様に、機会損失や見切り損損失が |
毎シーズン発生します。不良在庫ができるのも、若い消費者を相手にしている人たちと一緒です。 見ていないんですねぇ、自分が直接関係している所以外は見ていません。お婆さん業界の人は、他の業界の話をしてないと言ってるのではありません。話はしても、それでは行動が変わらないのです。よその話は、自分がすることしないことを正当化する理屈として使っているだけだけなのです。
他の市場を見ていない例をもう一つあげます。03年の初頭、百貨店向け大手アパレルのメンズウエア(つまりオッチャン服)で、春物を早期に投入する動きが活発でした。シーズン変わり目の1〜2月と7〜8月に古いシーズンの物のパワーダウンが早まり、新しいシーズンの物が動き出すのが以前より早くなってきたということを前年の02年に経験しました。早期投入はそういう消費者の変化への対応です。これで、機会損失と見切り損失を減らそうというわけです。でもね、早期投入はヤング市場や、ミセス市場ではすでに前からやられていることで、 |
その結果も出ています。ヤングや比較的若いミセスでは02年夏から秋への端境期に、夏物が遅い時期まで売れ、秋物になかなか火が付きませんでした。シーズン端境期に次シーズンの物を早期に展開するというやり方は、百貨店メンズウエアより早い業界では、すでにうまくいっていなかったのです。大手のアパレルなのですから、ミセス商品もヤング向けもみんな自社内に持っています。オッチャンウエアより早い市場を担当している同僚が社内にいます。同じ部屋の反対側の机の人かもしれませんし、隣りの部屋の人かもしれませんが、とにかくいます。その仲間が演じてくれている総天然色リアル近未来ケーススタディが「早期展開はもうアカン」と教えてくれているのです。でもやるんだなぁ、これが。
レディスヤングのそのまた針の先のような先端市場の関係者以外は、どこも自分のところより早い市場があります。そこでは、自分のところの近未来を演じてくれています。でも、それを見ても自分のやることは変わりません。ヨソの分野のことは対岸の |
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火事です。自分が痛くないことでは行動は変わりません。 痛い目にあうのではないかという不安を直接感じさせるものでなければ、行動は変わりません。その人の行動の変化は、その担当分野の実需と仮需、自分が見たと信じている市場の変化で、そのほとんどが決まってしまいます。それ以外はただの飾りです。一昨年、大こけにずっこけて、去年も話が全くなかったものを、あなたは大量にやれますか。一昨年大当たりを取って、去年も人気だったものを、いきなりゼロにできますか。
別行動は恐ろしいそれと、今までの話は、業界内のある個人が単独で判断して行動したと仮定していますが、実際はそういうことはめったになくて、多くの場合はその業界の世論や、社内の世論に従って行動します。世論の場合は集団の判断ですから、その参加者が 多ければ多いほど必然性をましてきます。行動に例外が無くなります。店頭実需のように断定的に予測
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することができるようになります。
仮説と検証では流行に追いつけない自分は頭がいいから、落ち目な流行の後追いなんかしていないぞ、まして感性なんかでは動いていないと主張する人たちに「仮説と検証」という言葉が好きな人が多くいます。「オレは感性なんかで動いていない。科学しちゃってるもんね。いつも仮説を立てて、結果を見て、その反省で次の仮説を立てて、また結果をチェックして、それを繰りかえしている。だから大きく間違ったりしないよ。これからは、勘や度胸で動くなんて古い」。
でもね、これってただの試行錯誤ですよね。試行錯誤を「仮説と検証」と言い変えたってやってることが今までの人とそれぼど違うわけではありません。科学者は「理論の仮説と理論の検証」をしているのであって、現象の後追いをしているわけではあり ません。でも、ファッション業界の言う「仮説と検証」は流行の不完全な後追いです。 |
もしも同じ人間が100人いて、100種類の選択をしてその結果をいつも見ているのなら、どれが理想に近い選択であったか、後追いですが分かるかもしれません。しかし実際は1人なのですから、ある選択をして結果が出た後でも、それがどのくらい良かったかはあまり分かりません。それに多くの場合、結果が出る前に次の選択をしなければなりません。もし、市場がニコニコしながら止まって待っていてくれるのなら、試行錯誤でもいつかは正解にたどり着けます。でも市場は今この瞬間も動き続けています。これは最善手であったに違いないと思える結果が出ても、その瞬間にも市場は動いていますから、良い結果をもたらした理由が次々と壊れていきます。少々の手直しでは通用しなくなるときが遅かれ早かれきます。そうなれば、またはじめからやり直しです。この方法では、どこまで行っても本当の現実には追いつけません。
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ファッション予測に必要なのは感性
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根気が必要です。が、できてしまえば、モード工学はたんなる道具ですから誰でも使えます。パソコンを使えるようになるよりも、車を運転できるようになるよりも簡単だと思います。ただ、現状のモード工学の予測はまだモザイクがかかっている部分があります。そのモザイクの部分を具体的なデザインに落とし込むためにはあなたのセンスが必要です。
流行は飛び飛びに変化するモード工学は実用技術です。役に立ってこそ技術だと考えていますから、理解の妨げになる難解な言葉は出てきません。やさしいのは言葉だけではありません。数式もあまり出てきません。出てきても高等数学ではありません。中学生が理解できる程度です。モード工学は難しい微分方程式を使いません。
なぜなら流行はだらだらとは変化しないからです。だらだら変化するのなら、流行を表すグラフは、時間軸にそって変動する曲線になります。そうなれば、流行を理解するのに微分積分を避けて通る |
ことができなくなります。私がこの仕事を始める前は、流行はじょじょにだらだらと変化するものだと考えていました。 セツナセツナにチョビットずつ変化するものだと思っていました。これだと難しい数学の知識が必要になります。だから「これはかなわんなあ」と思っていました。理工系出身の私でさえ面倒だと思うのですから、その訓練をつんでいない一般の人に説明するのはさらに大変です。 私がなぜ、流行はだらだらと変化すると思ったかというと、車のボディの形がどう変化してきたのかを表すグラフがなめらかな曲線だったからです。そのグラフは、大手自動車メーカーのデザイン室の方達を中心としたチームが作りました。そのプロジェクトチームは、乗用車の具体的なデザインの変化を特定の循環要因で分類し数値化しました。 そのグラフがサインカーブだったのです。今から25年も前のことです。 正直に言います。当時の私は、そのグラフに |
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描かれた曲線の美しさに感激してしまいました。これが、私がこの仕事をはじめた理由の1つになりました。でも、この仕事を始めて、実際に自分でその流行の追認をしてみたら、そんなふうにはなっていませんでした。まず、他の流行で循環要因がサインカーブで変化していないことに気づきました。そして、自動車のデザインの流行で確認したはずの循環要因にも、デザイン室が主張しているようなサインカーブはありませんでした。それだけではありません。自動車メーカーが統計を整理するにあたって存在することを前提としていた循環要因の定義も、厳密には誤りであることが分かりました。そしてその周期もです。
「大手自動車メーカーが自らの内部資料をもとにおこなった調査」というブランドに、私は一杯食ったことになります。自分では、ブランド志向ではないほうだと思っていますが、このときはやられました。このことが分かってから、ますます権威を信用しなくなりました。若いころに比べれば、今の私はかなり性格が悪くなっているのではないでしょうか。
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私は大手自動車メーカーというブランドにはだまされました。けれど、自動車のデザインを、業界用語ではない本当の流行要因に分類したとき、その1つが簡単な循環を持っていたということまで間違っていたわけではありません。それがサインカーブではなかったということです。流行は、曲線的にだらだらとは変化しません。不連続に変わります。我々はある日トツゼン恋に落ちるのです。毎日チョビットずつほれるなんて面倒くさいことはやっていません。それまでなんとも思っていなかったモノが、ある日トツゼン新鮮に見えてくる。それまでステキだと思っていたモノが、急につまらなくなる。それが流行です。だらだらと変化しているように見えるのは、流行をマスの現象として観察しているからです。業界のすべての人が同時にフル生産したり、目一杯仕入れたり、いっせいに大宣伝したりということはありませんから、たいていの統計は連続的に変化します。お客さんだって1人ではありませんしね。でも、統計数字は、さまざまな原因の結果です。ビジネスとしてやるべき事は何かということと統計上の数字とは、
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直接的かつ単純な因果関係がありません。企業の利益や担当者の成績に直結しているのは、消費者の気持ちの変化のほうです。消費者をマスとして考える場合でも、あなたの顧客や見込み客を観察したときのその範囲内の変化です。それはサインカーブのようななめらかな曲線にはなりません。だから、モード工学をビジネスのための便利な道具として使っている分には、微分方程式はいりません。
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資料請求いただいた方ここで、当HPにいただいたメールをいくつかご紹介しましょう。
資料請求について以前、「ヒヤカシの方はご遠慮ください」と書いたせいでしょうか、そうではない方、サイトをちゃんと読んでいる方、関心のある方、実際に利用しようと考えている方にも遠慮があるようです。いただいたメールを読んでいてそう感じます。ヒヤカシの方は遠慮して欲しいというのは本音です。だからトップページには載せずに、HPの一番底に請求ボタンをつけました。でも、資料を請求されることを嫌っているわけではありません。仲間が増えるのはうれしいことです。いやならホームページに載せたりしません。 それで、どんな方が請求されているかが分かるように、いただいたメールをいろいろご紹介することにしました。……この続きを読む |
こんな文章だらけの長いページを読んでいただきましてありがとうございます。感謝、感謝♪
トップページ(とその続き)はこれで終わりです。各論はサブページにありますので、さらに詳しくお知りになりたい方はのぞいてみてください。 ↑このページの最上部へもどる ↑トップページへもどる 追伸 理詰めのトレンド予測というタイトルで秀和システムより本を出版しました。この本を読んだ方はぜひご意見ご感想をお寄せください。今後の執筆に生かしたいと思います。 |
ちょっと脱線
トレンド予測コンサルタントの森田洋一です。 私は、20年ほど前に国会図書館で、40年弱ぐらいの期間の繊維業界紙を読んでいったことがあります。ほこりだらけというよりも、ほこりでできているような新聞です。毎日のように通っていたものですから、のどをやられてしまいました。 でも、読んでて面白かったですよ。あることが起こった1年後は1年たたないとわかりませんが、過去の新聞記事の1年後ならすぐに分かります。そのときあらためて感じたのが「同じことをやっているなぁ」ということです。ところが紙上ではそれを全く新しいことが起こって、全く新しい対応をしているかのように書いています。記事に出てくる人もそう言います。それは今でも変わりません。 (^^♪(^^♪(^^♪(^^♪(^^♪(^^♪(^^♪(^^♪ |
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02年8月9日、トップページよりその続きのページとして分離する。、それまではトップページの一部だった。 14年01月14日、中見出しを増やす。「森田洋一の約束」の段を分離、別なページとして独立させる。このページの主題とずれている部分や重複している部分を削除する。読みやすいように文章を修正する。 |