新聞記事で流行予測…読紙感想文[8]トップページへもどる

(繊研新聞08年2月8日付2面より2カ所切抜き) 
コートは12月より1月に売れる
東京スタイル高野社長
実需対応型MDの重要性強調
  『寒くならなければコートを買わないという傾向がますます強くなっている。MDの仕組みをさらに変えなければ』と東京スタイルの高野義雄社長。
  同社の07年秋冬物コート商戦は、販売数量で昨年9〜12月(プロパーのみ)は前年同期比約15%減。ただし、気温が低下した今年1月はプロパー品を含めて伸びており、昨年9月〜今年1月の累計では前年比約2%減にとどまった。」
  「08年秋冬に向けては、よりきめ細かな企画生産体制を敷き、序盤の9〜10月に投入する商品は減らし、1月商戦も念頭に置い
て、11月末から12月中旬にかけて投入量を増やす。
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わけですから、この意味でも「まだ寒くなっていない」ことが、購買にマイナス要因としてはたらきにくくなります。
  「超経験」の逆の流行を「常経験」と言います。いつもと同じ、それまでと同じことが支持される流行です。それで、「超経験」の時期とは逆の現象が発生します。
  それまでと違うことを嫌いますから、初物に挑戦する人が減ります。消費者はファッション性に金を払わなくなります。ファッション商品は、ファッション商品ではなく実用品として評価されるようになります。
  それで、季節商品の売れ出す時期が遅くなります。春物は暖かくなってから、夏物は暑くなってから、秋物は涼しくなってから売れるようになります。
  冬物コートは、ファッション商品としての評価が落ちますから、防寒実用品としてのみの評価が相対的に高くなります。
  季節が変ることも新鮮でなくなります。そ
読紙感想文

  非日常性を支持する流行を私は「超経験※」と呼んでいます。「超経験」のタイミングの消費者は、それまでと違っていることを歓迎しますから、初物を追いかけます。冬に春物を買い、春に夏物を買い、夏に秋物を買う人が増えます。
  防寒物のコートは、実用品としては寒くなってからでも間に合いますが、早く変りたい人が増えている超経験の時期は、まだ残暑が残っている時期から売れ出します。
  非日常性を支持しているときの消費者は、違っていることが好きなわけですから、ファッション商品のファッションの部分に金を払います。コートも防寒という実用性の意味は薄れ、ファッション商品として買う人が増えます。「寒いから」という理由が薄れる 
―――10―――――――――新聞記事でファッション予測――――――――ファッション予測と流行予測、次へ

−トレンド予測 11段目−
れで売れ出す時期が1〜2カ月遅くなります。ピークの時期も後ろにずれます。
  〔超経験・常経験〕は循環要因(一定の周期で繰り返している流行の原因)なので、時間がたつと逆転します。つまり、超経験は常経験に、常経験は超経験になります。というわけで、冬物コートが売れ出す時期やそのピークも、〔超経験・常経験〕のシーソーが上がり下がりする影響で、早くなったり遅くなったりを繰り返しています。
  そのため、前年の失敗に懲りて反省をやりすぎると結果が逆転してしまい、次に正反対の反省をしなければならなくなるということがまま起こります。
  このまま行くと、来年(09年)の高野社長は、冬物コートの結果が前年とは違っていることにあわてて、今年とは違う反省をすると思います。
【この文、08年2月26日記】 
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※〔超経験・常経験〕についての詳しい説明は、ファッション販売08年2月号の「2008年のトレンド大予言」を見てください。
 
 
 
     
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−流行記事 12段目−
(繊研新聞07年10月10日付5面より切り抜き) 

矢嶋 孝敏さん

やまと社長
■きもの市場の裾野の広がりに
  対応


単価主義から客数主義へ
  「4〜8月を前年比で見ると、総買い上げ客数は18%増と2割近く増えています。他社のことは分からないので当社の現状に限ってのことですが、来店し、きものや関連商品を購入されているお客様は飛躍的に増えているのです。きものファンの裾野が確実に拡大、広がっています。」(同)
 「
小物の内訳をみると、フォーマル系の小物に比べ、カジュアル系の小物の伸びが大きくなっています。また、正絹きものの買い上げ客数は7%増にとどまり、総買い上げ客数の18%増と比べると10%以上のギャップが出ているという状況です。
  ――分析すると。
  きものファンが着実に増加していることが分かります。中でもきものを着るお客様が増えており、きものの内訳を見ると、カジュアルきものの要望が非常に多いということです。
」(同)
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レガンスの中間期に、カジュアルな着物の流行が起こっています。
  循環要因のカップル「カジュアル←→エレガンス」の周期は約12年です。そして、その中間は行きと帰りで1回ずつですから、6年に1度あります。それで、カジュアル調着物の流行も6年に1度ずつあります。
  現在の着物はエレガンスになりすぎています。エレガンスの流行期にも大流行できないほどに極端なエレガンスになっています。ですから、着物業界が現在の苦境から脱するには常にカジュアル化に努めなければなりません。それは、歌舞伎や短歌などの事例をみても分かります。彼らは、スーパー歌舞伎、コクーン歌舞伎、口語体短歌などのカジュアル化によってどん底を脱しました。
  とくに今のような「カジュアルとエレガンスの中間期」なら、カジュアル化はなおさら重要です。6年に1度のチャンスです。
 
【この文、07年10月17日記】
 
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読紙感想文

  着物を着ることは、昔の人にとっては当たり前のことでしたが、現代の我々にとっては特別なことで、その行為自体がエレガンスになります。カジュアルきものは、着物というジャンルのなかではカジュアルです。エレガンスの中でのカジュアルですから。エレガンスとカジュアルの中間の時期に人気が出ます。
  過去にさかのぼって調べると、循環要因がエレガンスからカジュアルへ替わる中間の時期、あるいはカジュアルからエレガンスに替わる中間の時期に、カジュアルなきものの流行が有ったのが分かります。ジンベエ、DCゆかた、ニュー着物、古着のきものなどの流行がそうです。
  戦後、着物を着ることが当たり前ではなくなり、特別なことになってからは、カジュアルとエ
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−流行記事 13段目−
(新聞切り抜き) 

新・商品創造 K

シーズンレスでの仕掛け
レディス靴

ファッションに季節なし
  シーズンレスを意識しているのは、ウエアブランドだけではない。雑貨関連ブランドも、シーズンレスに対応した商材開発を数年前から進めている。
  ウエア同様に、1つには気温が大きく影響している。靴の秋冬物の売れ筋定番はブーツだが、数年前から真夏で履くようなサンダルが登場し、街中でも多くの女性が冬にサンダルを履いている姿を見る。暖冬が影響していることはもちろん、ファッション、トレンドとしてもパンツスタイルやタイツにサンダルを履くことがおしゃれとして認知・浸透してきた。
」(日本繊維新聞07年7月31日付1面より)
また、春夏にブーツも普通に見られることで、街中でもノースリーブのワンピースにブーツを合わせたスタイルが見られる。そのため、メーカーも綿や麻素材を使用したブーツを揃えている(同)
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たがるという傾向は以前のままです。気温の変化なら停滞経済でも後講釈に使えますからね。
  いつの時代でも同じですが、シーズンレスが流行していても、決まって夏は冷夏、冬は暖冬になるなどということが何年も続いたりはしません。もちろん、冷夏や暖冬がシーズンレスと無関係だといっているのではありません。気温が季節感に影響を与えるのは当然です。ただそれは限定的なのです。現に、今回のシーズンレスの流行期にも猛暑の夏や極寒の冬がありましたが、シーズンレスの流行がそれによって消えてしまうということはありませんでした。
  シーズンレスの流行が起こった原因の最大のものは、他のファッション現象と同様に循環要因です。この循環要因を私(森田洋一)は「自由」と呼んでいます。
  「自由」の時期には約束事がユルユルになります。オキテ破りが格好良くなります。季節感も社会のオキテですから、それに反抗することがファッションになります。もちろん、暑さ寒さという物理現象、生理現象は、「自由」が活性期(流行期)で有ろうと無かろうとある

読紙感想文

  以前、国会図書館へ行って調べたことがあります。だから知っているのですが、消費者がシーズンレスの購買行動を取るようになって、その対策にあたふたするという経験を、ファッション業界は、これまでにも繰り返し経験しています。
  高度成長の時期には社会がどんどん変っていきましたから、シーズンレスの流行が来ると、それを特定要因(循環していない要因)で説明しようという傾向が今より強く出ました。「冷暖房機器が普及したから」「温室栽培された物が増えたので、食べ物から季節感が無くなったから」「地下街が発達したから」「車の普及で外気に触れなくなったから」等々です。
  現在は低成長ですから、こういうことはあまり言われなくなりました。ただ、気温のせいにし
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−流行記事 14段目−
わけですから、「自由」だからといって、季節感がゼロになったりはしません。ユルユルになるだけです。
  「自由」は循環要因ですから循環しています。つまり終わりがあります。若い女性のタイミングでみると、「自由」は、04年冬にその最盛期を過ぎました。07年冬からは不活性期に入り、その逆の「束縛」が活性化します。
  これからは、季節感というオキテに従うことがファッションになります。つまり、夏には夏らしい格好、冬には冬らしい格好をすることが、流行の最先端になります。

 
【この文、07年8月7日記】 
 
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(新聞切り抜き) 

サングラス 売れてます
ビッグフレームが一番
公園ママも ミセスも
  サングラスが売れている。07年春夏デザイナーコレクションでフューチャーリスティックな超ビッグフレームが登場し、シーズン初めから注目されていた。アパレルブランドもオリジナルを作るなど商品の幅が広がり、アクセサリー感覚で一般化している。
  都内百貨店では、前年より1カ月ほど早く3月から売り場を拡大した店が多い。4月に動きだし、売り上げは三越が3〜5月の累計で前年同期比30%増。西武百貨店池袋店が約20%増、小田急百貨店新宿店11%増、プランタン銀座2ケタ増となっている。
  売れ筋は『レンズの高さが61_以上ある大きなセルフレーム。売り上げの7割がこれ』(伊勢丹本店)、『50〜55_の丸みのあるセルフレ
ームで、大人っぽい茶色がいい』『(プランタン銀座)、「存在感のある大ぶりなものがゴージャスに見えると人気』(小田急百貨店新宿店)だ。」( 繊研経済新聞07年6月1日付1面より)
『ミセスの旅行需要に加え、若い母親が子供と公園に行くときの必需品となり、20歳〜50代まで日常的に使う人が増えている』(西武百貨店池袋店)という。」(同)
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読紙感想文

  大きなセルフレームのサングラスがヒットしたのは去年(06年)です。つまり、この記事の前年です。
  前年にすでにヒットしていたから「
シーズン初めから注目され」たわけですし、「アパレルブランドもオリジナルを作るなど商品の幅が広が」り、「一般化し」たわけです。また、すでにヒットしていたから、サングラスを売ることに百貨店が強気になり、「前年より1カ月ほど早く3月から売り場を拡大した店が多」くなったわけです。
  前年のヒットで、ビッグセルフレームが売れると分かっていたので百貨店はその
―――14―――――――――聞記事でファッション予測―――――――――ファッション予測と流行予測、次へ

−流行記事 15段目−
デザインを強気でそろえました。その結果、サングラスの売り上げが「30%増」「20%増」「11%増」「2ケタ増」になりました。また、 ビッグセルフレームは最先端の流行ではなかったので、ミセスにまで広がり、普段着感覚になり、「20歳〜50代まで日常的に使う人が増え」ました。
  07年春夏デザイナーコレクションに超ビッグフレームが登場したのも同じ理由です。デザイナーが動いたからヒットしたのではありません。ヒットしたからデザイナーが動いたのです。前年にビッグフレームのサングラスがすでにヒットしていたから、デザイナー達も安心して発表できました。
  よく、デザイナーコレクションが流行を作っていると勘違いしている人がいますが、それは間違いです。彼らは流行に影響を与えることはできますが、流行を作ることはできません。今回の例でいうと、彼らがビッグフレームのサングラスを発表したことは、しなかった場合に比べて、ビッグフレームのサングラスの流行にとってプラスになります。彼らが発表することで、業者や消費者の関心をより喚起しますし、ためらっている人の背中を押します。
  でも、流行の原因ではありません。だって、コレクション以前にすでにヒットしていたのですから。原因が結果の後であるはずがありません。
  彼らが流行の原因であるかのように錯覚するのは、魅力のピークと数のピークを混同するからです。売れた数のピークは、メーカーが強気で作り、店が強気で仕入れた後でないと来ません。少ししかないものを大量に売ることはできませんからね。
  供給側が強気になるのは、商品がヒットした後ですし、その強気が店の品揃えや在庫の厚みに反映するのはさらに後です。ですから、供給側の人間が動いた結果として現れる、売れた数のピークは、魅力のピークよりかなり後になります。そしてその「かなり後」というのは、ファッション商品の場合季節感がありますので、多くが1年後になります。デザイナーの発表は「1年後」よりは早いですから、コレクションが流行を作っていると多くの人が錯覚するわけです。
【この文、07年6月14日記】 
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−流行記事 16段目−
(HP切り抜き) 
渋谷 SHIBUYA
2007年4月 APRIL

  ドレスコート以外のアウターで人気が高いのは、ショート丈のジャケットであり、昨年に引き続き、ウエストがリボン留めのテーラードなどが支持されている。新しいところでは、ノーカラーで5分や7分袖のややクラシカルなタイプが登場し、キャミソールやブラウスなど、インナーの裾をジャケットの裾の下から覗かせる着こなしが目立つ。http://www.kyoritsu-
wu.ac.jp/nyusi/street/st0704S.html

より)

人気のショートジャケット。右のようにジャケットの裾からキャミソールやブラウスなどのインナーを出す着こなしが流行中」(同)
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長が上昇トレンドです。
  襟(えり)がなくて当たり前のトップに襟を付けると、襟と、その下から裾(すそ)までの上下方向の長さのバランスは、特殊なデザインでないかぎり襟の方が圧倒的に小さいですから下比長になります。ということは、襟があって当たり前のトップから襟を取ると、先ほどの逆ですから上比長です。
  また、ジャケットの裾からインナーを出すと、よほどひねくれたデザインでないかぎり、インナーのジャケットから出ている長さは、ジャケットの長さより短いですから上比長です。つまり、ジャケットから襟を取るのもインナーを裾から出すのも「上比長」の表現になります。
  一方、ジャケット本体と全身のバランスで考えると、ショート丈は普通丈に比べて上部を縮めて見せますから「下比長」です。つまり、この着こなしは、下比長と上比長の表現がチャンポンになっています。下比長から上比長へ変る中間にふさわしいデザインです。
  ただしそれは必ずしも、現在が中間の時期であることを意味しません。
  ファッション業界にとって、儲かるか儲からないかにより直結しているのは、着る流行
現象ではなくて、買う流行現象です。買う流行現象にとって最も重要なのは魅力の流行です。
  魅力の流行と着る流行現象は、原因と結果の関係ですから、もともとピークの時期が違います。魅力の流行で考えれば、現在は上比長の時期にすでに入っています。
【この文、07年5月30日記】 
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  商品の上下方向のバランスをみたときに、上部が間延びして下部が詰まって見える物を「上比長」、下が間延びして上部が詰まって見える物を「下比長」と、私(森田洋一)は呼んでいます。現在は、下比長が下降トレンド、上比
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このページ更新 ’08年2月26日