ページの表題 新聞で流行予測 2014/12~2015/07  トップページへもどる

買い方が変化

  「ヤングの買い方は明らかに変化している」とは、東急モールズデベロップメントの中里研二渋谷109総支配人。「昨年10月ごろから、物作りがしっかりしていて、 従来より高単価の商品を打ち出している店が健闘している」という。今秋冬でも、客単価が1万円前後と館平均の2倍ほどの店が好調だ。ヤングレディス市場全体の低迷が続いているが、「売り上げが厳しいのは今まで市場を引っ張ってきた低価格訴求型の店が多い」。 …
 
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モード工学研究所の森田洋一 読紙感想文
モード工学の森田洋一です。
 
左の文は、繊研新聞14年12月/12日付の「ボイス」からの抜粋です。ここでは渋谷109のヤングがどうのこうのと話題になっていますが、同じことは他のチャネルでも起こっています。セレクトショップしかり、百貨店ミセスしかり、量販実用衣料しかり。
 
セールの苦戦がファッション業界のあちこちで話題になっていますね。プロパーで売れなかった商品はセールになっても売れない。セール用に作ったそれなりアイテムも売れない。値引率を大きくしても売れない。客の価格感度が下がっている、価格不信が広がっている…などなど。
   
 
ファッション業界では多くの人が現在の市場の変化に右往左往しています。今店頭で何が起こっているかについてもトンチンカンな分析をしている人が少なからずいます。そのてん中里さんの分析は的確です。流行の変化が早いレディスヤングで、百店舗以上のショップを横断的に見ているせいでしょう。
 
ここで循環要因というものを考えます。循環要因は流行の原因となっているもので、私達の頭の中にあります。いく種類もあって、それぞれが、流行因子のカップルを持っています。そのカップルは互いに逆の関係にあって、代わりばんこに顕在化します。つまり循環要因は文字どおり循環しています。その周期は一定です。年令性別が同じなら循環のタイミングもほぼ同じです。それで循環要因は、個々人の頭の中にあるにもかかわらず、年令性別が同じ人の行動が集団として
 
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-流行予測 2段目-
どう変化するかの説明に使えます。団体行動という意味ではありませんよ。各自バラバラの動きでも、同性同年齢だと同じ変化の傾向が現われるということです。
 
もちろん、循環要因を見た人間は私を含めていません。その存在が直接証明されているわけでもありません。でも、それが有ることを仮定することで流行を予測することができます。循環要因の各因子とその交代周期を、過去の資料から推定し、確定できれば、それを機械的に未来へ引き延ばすことによって、将来の流行を現時点で説明できます。つまり予測できます。
 
もちろん1つの循環要因で説明できることは限られています。流行現象と循環要因の間には1対1の対応関係がありません。1つの循環要因は複数の流行現象の原因になっています。1つの流行現象には複数の循環要因が関係しています。しかも各循環要因は周期が違います。ただ、複数といってもその関係の深さには濃淡があります。ある流行現象を1つの循環要因だけで
   
かなり説明できてしまう場合も多いです。
 
話を戻しますと、中里氏が言う高単価高品質の流行に一番深く関係している循環要因は、私が〔アリ・キリギリス〕と呼んでいるものです。イソップ物語のアリとキリギリスからネーミングしました。アリが顕在化している時の消費者は物事を長期的に考えます。今の快楽のために将来を犠牲にすることを避けようとします。現金は現金のままか、現金にすぐに戻せる物で持とうとします。結果、渋ちんになります。数年前の我々がそうでした。ニトリ・ユニクロ・ヤマダ電機がデフレ御三家と言われていましたね。すき家も、現在と違って好意的にみられていました。
 
キリギリスが顕在化するとこれがアリのときと逆になります。人々は後先のことを考えなくなります。刹那主義になります。「明日の百より今日の五十」という考えに共感する人が増える時期です。結果金使いが荒くなります。贅沢品を買うようになります。価格感度が
   
下がります。価格訴求が効力を失います。もちろん完全にではありません。アリの時期と比べれば相対的にそうだということです。
 
レディスヤングの場合2013年からキリギリスです。〔アリ・キリギリス〕の周期は7.5年ですから約4年弱後の2016年の末ごろにアリに戻ります。循環要因はどの世代も周期は同じですがタイミングが異なります。男は女より遅く、シニアはヤングより遅くなります。というわけで、アリに戻った時もそのことに気付く時期は、今回のキリギリスの流行同様に、どの客層をメインにしているかによってバラバラになります。みんなの意見が一致するのは2018年も後半になってからでしょう。
 
かなり前になりますが、テレホンカードが大流行した
ことがありました。当時は「20世紀最大の発明」なんて言われていました。我々がテレホンカードを手に入れるためには初め現金が必要です。現金でカードを買って、それを使って電話をします。人によって違いますが、
 
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-流行予測 3段目-
カードを使い切るにはある程度の日数がかかります。使い切った時点ではちょっぴり得をしますが、それまでは電話回数が払った金額に見合うだけ有りません。初め損して後で得する先憂後楽型商品です。エディやパスモ、スイカなどの電子マネーも同じですが、プリペイドカードは現金を失う方が先に来るのですから、損得を長期に考える時期に、つまりアリの時に人気が沸騰する商品です。少なくともブレイクのタイミングはそのタイミングです。
 
去年(2014年)流行語大賞にノミネートされたコトバの中に「ビットコイン」が有りました。我々がビットコインを手に入れる方法は2種類有ります。1つは両替による方法。現実の通貨と交換します。ビットコインは電子マネーですから交換した時点では現金が失われるだけです。コインや紙幣などの実体のあるものは手に入っていません。売買・送金・決済に使用して初めて利用価値が出ますが、それは後のことです。購入の段階では損をしています。プリペイドカードと同じです。
   
電子マネーを普及させるタイミング現在はキリギリスですからビットコインの流行は少なくとも日本では終わっています。若者の間では去年の時点でアリはすでに終わっていました。騒いだのは流行のタイミングが遅いオジサンとさらに遅いマスコミです。
 
ビットコインを手に入れるもう一つの方法は「採掘」することです。採掘といってもそれは比喩で、なんでも高度な演算をコンピュータにさせることで得るのだそうです。これは大変ですね。設備投資の資金も手間も考えなければなりませんし、それに使った資金を回収できるほどに大量のビットコインを得るのはかなり先になります。こちらも先憂後楽ですからアリ型です。つまり現在は終わっています。
 
日本でビットコインが話題になったのは13年から14年にかけてでした。〔アリ・キリギリス〕
   
は7.5年周期ですから2021年ごろになると、新しい電子マネーが今回同様話題になっているかもしれません。でもそれではアリが終わっているタイミングです。日本で電子マネーを成功させるためには2018年ごろに仕掛けをスタートさせなければいけません。
 
(この文、15年01月27日に記載)
 
【関連ページ】
「アリ型人間」と「キリギリス型人間」は交互に現われる
(理詰めのトレンド予測第5章より)
 
シニア消費 脱デフレの芽
 
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-流行予測 4段目-

マクドナルドとペヤングに学ぶ「マスコミから面白がられない」方法

       〔・・・・・・〕
毎日のように日本のどこかで異物混入が発見されて大騒ぎになるということが繰り返されたこの1ヵ月、企業の報道対策をしている関係で、「異物混入事件が増えている理由はなんでしょう」という質問をよく受けるのだが、その度にこんな内容のことを答えている。
 
「別に増えてはいないと思います。マスコミの“異物混入報道”が増えているだけで、増えたように見えるだけですよ」
       〔・・・・・・〕
では、そんな「よくある話」を、なぜマスコミは年明けにかけて立て続けに大きく取り上げたのか。それは一言で言ってしまうと、「そう言う報道トレンドができて
   
いた」からだ。
 
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モード工学研究所の森田洋一 読紙感想文
左の文は、ダイヤモンドオンライン15年2月5日付からの抜粋です。ノンフィクションライターの窪田順生氏が寄稿した記事です。

今回の食品の異物購入騒動についての解説では群を抜いて優れていると思います。これがアマゾンのカスタマーレビューなら私は☆5つあげます。6ページもあって結構長い。それを10行分だけ切り取ったのが左ですが、6ページから10行ですからこれでは抜粋としても短すぎますね。ぜひ元の記事を読んでください。
 
ここからが森田洋一の感想文です。まず大事だと思うのは、異物混入事件の増加と異物混入事件
   
「報道」の増加とを区別すべきだということです。外食業界や加工食品業界には、みんなが名前を知っている企業がたくさんあります。企業名は知らなくても商品名なら知っているよという会社ならさらにあります。個々の企業にとっては、1度きりのあるいはごくたまにしかない混入事件でも、日本全体でみればおびただしい件数になります。個々の企業にとっては偶然に近いことであり、予測ができない事件でも、全体なら必然ですし、件数もほぼ一定です。これは、あなたの死があなたにとっては1度きりの大事件であっても、日本人全体でみれば死はありふれたことで、その数もほぼ一定なのと似ています。
 
事件件数は一定でも報道件数は一定ではありません。その事件に対する読者や視聴者のリアクションの強弱によって取扱量をマスコミが調整するからです。もちろん理性的にベストの量を計算して、その計算結果どおりに報道しているわけではありません。取り扱ってみたら客の反応がビビッドだった。量を増やしてみたら
 
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-流行予測 5段目-
それにともなってさらに大きな反応が戻ってきた。すでに客に受けた事件とよく似ている事件も取り扱ってみたらそれにも大きな反響があった。そんなことを繰り返しているうちにどんどん強気になった。取り扱いを増やしていった。行けるところまで行った後で客の関心が急に下落した。落ちただけでなく批判までされるようになった。採算が合わなくなったのでやめた。
 
……どうです。ファッション業界とよく似ていますね。読者、視聴者の反応の強弱が実需で、報道量が仮需です。仮需は、実需より後で、実需が終わる頃にピークが来ます。ですから異物混入騒動がフィーバーしていた12月・1月は、刺激の量以上に客の反応がはたしてあったのかという意味では、流行のピークではなくて終わりだったんです。
 
我々は、自分が経験した回数が多かったもの、印象に強く残ったもの、感情に訴えたもの、新規性があったもの、つまり簡単に思い出しやすいものを数が多い
    ニュースには流行がある
と錯覚します。事故死が、病死より桁違いに少ないのにたくさんあると勘違いしたり、交通事故を風呂場の事故よりも怖がったりするのはそのためです。
 
こういう認知のバイアス(同傾向の誤り)は報道のバイアスの原因にも結果にもなっています。報道側は客が大きく反応することをそれに合わせて大きく報道します。大きく報道されれば、それに合わせて読者・視聴者の反応は大きくなります。過剰反応のピンポンが起こります。
 
じゃぁ事の起こりはどちらが先かというと読者・視聴者の方です。消費者が先である点ではファッション業界と同じです。ファッションも、消費者と供給側でピンポンをやりますが、始めと終わりの主導権は消費者が持っています。ニュースも
   
それと同じで、始めと終わりは読者や視聴者が主導しています。それをマスコミが後追いするわけです。
 
マスコミ業界がファッション業界と違うのは供給量の制約が大きいことです。客に受けるからといって存在しないニュースを作るわけにはいきませんからね(たまにやりますが)。そのてん、食品の異物混入事件は、普段はいちいち報道していないだけでいつでもありますから供給の制約がそれほどありません。ファッション業界の動きとますます似てくるわけです。で、マスコミの取り扱いや読者・視聴者の反響に、流行として説明できる部分があり、繰り返しもあることが他のニュースより分かりやすいのです。
(上の文、15/02/28記載)
2010年の12月に「伊達直人」を名乗る人物から児童相談所へランドセル10個が送られました。ボツになってもおかしくない埋め草記事ですが反響がありました。だけでなく、同じ「伊達直人」を名乗る人物から全国の児童養護施設へのランドセルの寄贈がありました。
 
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-流行予測 6段目-
矢吹丈など伊達直人以外の名も使われましたし、玩具や筆記具などランドセル以外の物も送られました。犯罪ではありませんが模倣犯ですね。この場合は、供給側であるマスコミと消費者である視聴者&読者だけでなく、ニュースの提供者も増えたわけです。トライアングルピンポンです。これも供給の制約が消えた例です。結果、過剰反応の拡大率が大きくなりました。埋め草記事が大ニュースになりました。
(青字の文、15/03/14加筆)
 
マスコミと消費者と供給者のトライアングルピンポン
   
毎年12月12日に清水寺の舞台上で「今年の漢字」が公表されます。大きな和紙に漢字一字を寺の貫主が書き上げます。その年の世相を話題にする時の材料としてテレビや新聞に毎回載りますのであなたも知っていると思います。これは、日本漢字検定協会が、その年の世相を表していると思う漢字を全国公募して、応募数ランキング1位の漢字を発表しているものです。
 
11年前の2004年に「今年の漢字」として発表になったのは「災」(サイ・わざわい)でした。2004年は、そのくらい災害の多い年でした。特に台風が多かった。10個も上陸しています。観測史上最多の数でした。なかでも規模の大きなものが8月から10月にかけての2ヶ月半ぐらいの間に集中しました。まず8月7日に台風18号が上陸します。死者・行方不明者は計45人です。次に8月30日に台風16号が上陸(死者・行方不明者17人)。9月29日に台風21号が上陸(死者・行方不明者27人)。10月9日に台風22号上陸(死者・行方不明者8人)。トリが10月20日に上陸した台風23号。被害が
   
断トツで大きくて、死者・行方不明者が98人も出ました。でも、マスコミの報道量は23号が一番少なかったんです。
 
理由は2つ、1つ目の理由は飽きちゃったこと。読者・視聴者が台風報道に飽きていたし、報道する側も飽きてる。事件・事故・災害というのは、当事者とその関係者以外の人間にとっては娯楽です。台風の報道なんてだいたい決まっていて、毎回違う内容を届けるわけにはいきません。どうしても同じパターンになります。被害が大きくたって、それ以前の台風の報道と相似形なんですから、報道ビジネスにとって何より大事な新規性がありません。で、軽くスルーされてしまいました。
 
理由の2つ目は、23号上陸の3日後の10月23日に起きた新潟県中越地震の影響です。地震の死者は68人。台風23号より少ないんですが、なんといっても地震です。災害を起こすレベルの大きな地震はもともと台風よりも少ないです。すでに飽きている台風と違って
 
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-流行予測 7段目-
新規性はばっちりです。報道内容も台風のときとはだいぶ変えられます。で、台風報道は地震報道に押しのけられてしまいました。
 
私はこういう報道の仕方を批判しているわけではありません。お客様の嗜好や支持を無視したのではビジネスが成り立たないという点では、あなたがいる業界と同じでしょと言いたいだけです。この世に、消費者(の頭蓋骨の中)と無関係に存在する客観的に優れた商品なんてありません。商品の価値を決めるのは消費者(正確には、最終購買決定権者)だということです。そしてそれは、ほとんどの場合1人ではなくて、マスとしての消費者です。
 
(上の文、2015/03/02加筆)
 
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スポーツ×ファッションが再注目される理由

 
スポーツとファッションの市場が盛り上がっています。昨年秋以降、スポーツをキーワードにしたファッションの新ショップや、大手スポーツメーカーと国内デザイナーの協業が相次いでいます。
       〔・・・・・・〕
今の盛り上がりが、以前の状況と比べて明らかに違うのが、シンプル、ベーシック、モードの流れの中でスポーツファッションがより洗練されていることです。

 
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モード工学研究所の森田洋一 読紙感想文
左の文は、繊研新聞2015/03/16に載った石井久美子記者のレポートからの抜粋です。
 
今のファッションがスポーツづいているのは、現在がカジュアル(自由)のタイミングだからです。それも日本はカジュアルの流行期に入ってからだいぶたっています。レディスヤングでみるとすでに3年経過。今年は4年目になります。

流行は年令性別によってタイミングが違います。女より男の方が遅いですし、シニアの方がヤングより遅くなります。すでに値崩れが始まってからようやく買うという保守的な人もかなりいます。メーカー・デザイナー・ショップなど供給側の人間は、生活がかかっていますので、ファッションに対してさらに保守的です。どんなに魅力的なアイテムでも店に無ければ売れませんから、
 
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-流行予測 8段目-
統計数値でカウントしたした流行も魅力で判定した流行より遅くなります。というわけで、多くの人にとってはスポーツというテーマのファッションはできたてのほやほや、ピッカピッカの新潮流に見えてます。

カジュアルの流行は6年続きます。これは毎回同じです。初めの2年はエレガンスが終わった直後ですので、カジュアルはまだ病み上がりです。元気いっぱいというわけにはいきません。カジュアル度が強すぎるアイテムはまだマスのお客様には早すぎます。ま、どん底は過ぎていますからユラユラと上昇はします。
 
この時期にマスでヒットするのは、キレイで上品なカジュアルです。あるいはカジュアルアイテムとエレガンスアイテムのチャンポンです。カジュアルが一応優勢になっているので、カジュアルアイテムをメインにしてエレガンスアイテムやエレガンス小物をトッピングさせたスタイルが流行の最先端になります。この時期を私は「弱カジュアル」あるいは「7合目カジュアル」
   
今はトップカジュアルと呼んでいます。
 
メーカーやショップなど供給側の人間がこのごろスポーツファッションを「より洗練さ」せたがるのは、ヤングではすでに終わっている「7合目カジュアル」期の思い出に供給側が引っ張られているからです。まだ続いていると思っているんです。より正確な言い方をすると、まだ続いていると思った方が、そうではないと思うより安心なんです。
 
今年はダメージジーンズの流行が話題になっていますね。おしゃれな人ほどダメージ度が高くて、ボロボロに破れたジーンズをはいています。デニムはもともとカジュアルなのですが、それをさらにアンチクリーンに加工しているのですから、それが売れている現在はカジュアルの
   
最盛期です。この時期を私は「トップカジュアル」と呼んでいます。トップカジュアルも7合目カジュアルと同様に期間は2年です。トップカジュアルの時期には、オジサンやオバサンが見ると下品で汚く思えるファッションが流行します。その下品が若者にとってはカッチョイイ!んです。スポーツウエアもどきファッションも今は洗練させない方がヒットします。下品を全面に出しましょう。
 
今の着物は、エレガンスの時期でもヒットできないほどにエレガンスになりすぎています。で、市場を縮小させてしまいました。絶滅危惧種に指定されそうです。でも、婦人向けの場合、戦前までは普段着だったんですよ。だから戦前は着物ブームがありませんでした。着てて当たり前だからです。洋服は当たり前ではなかったので、かわりに洋装ブームがありました。
 
着物は平安時代の昔までさかのぼると下着です。その後アウターとして着るようになりました。アウターとして着るのがタブーだった着物が外側に出たばっかり
 
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-流行予測 9段目-
のころは着物はカジュアルウエアでした。下着のはずのものをアウターとして着るのは掟やぶりの自由ファッションですから当然カジュアルです。これは、元は下着だったTシャツが今でもカジュアル寄りなのと同じ理屈です。
 
というわけで、肌着や肌着を連想させるものがカジュアルの流行期には外に出ます。昔も今も同じです。つまり、下着がアウターになります。トップカジュアルの時期には、外に出すことにタブーをかなり感じるものでもヒットできるようになります。他の循環要因との兼ね合いもありますから、必ずヒットするということではなくて、ヒットしやすくなるという言い方が正確です。タブーが強くてもカジュアル期にはヒットするなんてことを繰り返しているうちにだんだんといつでもある服になり、次にエレガンスのときにヒットする服になり、さらに時がたつと、エレガンスになりすぎて絶滅危惧種になるわけです。でも、今の下着っぽいカジュアルウエアがそうなるのはずっとずっと先の話ですけど。
   
 
以前のトップカジュアルの時期に黒人ファッションが流行したことがあります。人種や階級などで差別されている人たちの服をおしゃれ着として着るのもトップカジュアルの時期には流行します。それを上流階級も喜んで着ます。掟やぶりの自由だからです。これに近いんですが、労働着や軍服などもハヤリます。スポーツウエアももちろんです。T.P.O(時・場所・場合)の約束事を破ることがカジュアルだからです。着る人や着る場面を無視することがかっこいいのです。
 
(上の文、2015/03/17記載)
 
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-流行予測 10段目-

又吉直樹さん「火花」がベストセラーに

  お笑いコンビ、ピースのボケ担当で、芸能界有数の読書家が満を持して小説「火花」(文藝春秋)を刊行した。
       〔・・・・・・〕
  「火花」は発売5日後に4刷、発行部数は35万部に達した。

 
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モード工学研究所の森田洋一 読紙感想文
左の文は、15年3月26日付の日本経済新聞夕刊16面からの抜粋です。
 
この小説への批評では好意的なものが多いようです。辛口批評家もほめてますね。でも中身が良かったから、だからヒットしたというわけではありません。無関係とまでは言いませんが、ヒットした第一の理由ではないということです。だって、発売5日後に35万部なんですから。5日目では、たとえ内容に感激した人が多かったとしても口コミの連鎖が広がりようがありません。
 
単行本になる前に、純文学で有名な「文学界」の2月号に掲載されたんですが、こちらはもっと短い。文学界の発行部数は通常1万部。それが発売翌日に7000部の増刷が決まりました。売り切れ店が続出したからです。なんでも文学界の増刷は、82年の歴史を
   
通して初めての快挙だそうで、初速の凄まじさが分かります。書店の注文が殺到したためそれでもまだ足らず、発売2日後にさらに2万3000部の増刷が決まりました。全部合わせると4万部ですから当初の4倍に膨らみました。
 
純文学誌の「文学界」に掲載した時点では、「火花」を誰も読んでいなかったわけですから、中身は関係ありません。発売当日や翌日の爆発は小説そのものの良さでは説明できません。そのてんは単行本の場合よりもさらにはっきりしています。「火花」がヒットした第1番目の理由は、お笑い芸人と純文学との組み合わせの違和感、奇妙さにあります。
 
純文学と聞いてあなたはどんな作家を連想しますか。しかめっ面をした苦悩好きでマゾッ気のあるインテリを連想しませんか。関心が自分にばっかり向いている人を想像しませんか。それと、我々が持っているお笑い芸人のイメージでは違いが大きすぎますよね。その
 
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-流行予測 11段目-
              
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-流行予測 12段目-
イメージの違いの大きさがヒットの原因なのです。
 
水と油の関係のものがくっついた場合、水だけあるいは油だけで存在するのが参照点(当たり前)の場合は、単独のはずのものが複合したわけですから結合の流行になります。でも「火花」の場合はそれではありません。作者のいない小説や、小説を書いたことのない小説家はあり得ませんからね。どちらか一方だけでは少なくとも、流行に参加している人が共有している参照点にはなりえません。
 
小説には作者がいて、小説家には書いた小説があるのが参照点なのですが、その組み合わせが「花火」では水と油の関係なのです。こういうタイプの水と油の関係を私は「分離」と呼んでいます。お互いが性格の不一致を起こしていて反目しあっているから分離なのです。これと似ているのが、以前取り上げた「魔法少女まどか☆マギカ」です。「火花」と同じタイプの分離です。ほのぼのとした絵柄と殺伐としたストーリーが性格の
   
不一致を起こしていました。
 
親族の争いも、性格の不一致を起こしているタイプの分離です。最近の例では、大塚家具の親娘ゲンカが典型的です。委任状争奪戦にまで発展しました。争いそのものが分離の流行だといっているのではありませんよ。個人の行動にも循環要因は影響しますが、単独の場合は確率論になってしまって、流行のように断言ができません。視聴者・読者が親娘ゲンカに強く関心を持ち、それに合わせてマスコミの報道がエスカレーションしましたね。その部分が「分離」の流行なんです。
 
親族争いの火にマスコミがガソリンをぶっかけて大火にした例では98年の若乃花・貴乃花の兄弟ゲンカが同じです。スタートは貴乃花の絶縁宣言。それに実父でもある双子山親方の親子不仲告白なども加わって、ワイドショーを中心にマスコミ報道はエスカレーションしました。その2年前の96年は、若貴兄弟ブームがピークだった年で、マスコミは理想の兄弟として
   
もてはやしていたのですから、落差の大きさという点では大塚家具どころの話ではありませんでした。
 
分離には、性格の不一致とは違うタイプもあります。去年の10月に発売され、50万部以上売れた「フランス人は10着しか服を持たない」がそうです。10着だということは、増やさないということですし、それ以上持っていたら捨てるということです。物をたくさん持っているのはみっともない。 買いすぎるな…。つまり、足し算するな、引き算しろということ。遠くからやってきてくっつこうとする物を拒否しろ、くっついていたものを引き離して遠くへやれです。くっついていた物を引き離せという部分は、2011年1月発行のベストセラー、「人生がときめく片づけの魔法」と同じですね。
(上の文、2015/04/02 記載)
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-流行予測 13段目-

予定はスマホ任せ

行き先も結婚式も「即席」
       〔・・・・・・〕
案内役は無料案内アプリ[LINE」の地域限定サービス「いますぐ予約」だ。スマホの画面に人数を入れると、近辺で空きのあるお店のリストがすぐに返ってくる。対象地域はJR渋谷駅の周辺や福岡市の一部にとどまるものの、すでに67万人の登録者を集めた。
  「予定を立てない若者が増えている。遊びに行く時でも目的地は決めず、その場でスマホをいじって考える」

 
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モード工学研究所の森田洋一 読紙感想文
左の文は、15年5月6日付の日本経済新聞1面からの抜粋です。若者が消費活動の準備を直前になってからでないと始めないという話です。他には、結婚式場の申し込みから実際の挙式日までの期間が以前より短くなったことも、若者の即席消費の事例として載せています。
 
今の人は、ずっと先のことを考えて行動することができなくなっています。こういう流行を私は「キリギリス」と呼んでいます。イソップ物語にある「アリとキリギリス」から命名しました。これの逆の流行がアリになります。
 
この記事では、若者の流行としていますが、実際は老若男女共通の流行です。どんな流行も循環要因(流行の原因、循環している)でみれば、年齢性別の別はなく共通です。若者だけの流行は有りません。
   
イノベーションは流行を作らないそのてんではキリギリスも同じ。オジサンである私も若者と同じくこの流行に参加しています。ただ時差はあります。若者の方が私より早いですし、振幅も大きくなります。
 
若者が「即席消費」行動を取るようになった原因として、スマホ・アプリの普及やネット上のサービスをこの記事ではあげていますが、これは流行の原因ではありません。新しい技術やサービスは流行を起こしません。流行を無視したために卵がかえらずに卵のまんまポシャッテしまった技術やサービスなんて世の中にごまんとあります。
 
新技術や新サービスは流行を作りませんが、流行に影響を与えることはできます。うまくいけば、流行を大型化させたり、長期化させたりします。長期化もツボにはまれば何十年も何百年も続いたりします。
 
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-流行予測 14段目-
もちろん滅多にあることではありませし、こうなると当たり前になっちゃっていますから、誰も流行とは呼ばなくなります。
 
俳優&タレントの赤井英和がCMに登場して話題となったライザップ、儲かってもいるようです。でなけりゃCMをバンバン撃てませんから。パクリも出てきましたね。ライザップは、2ヵ月で理想の体型を手に入れられると約束しています。
 
一方女性歌手の倖田來未、ダイエットに10年かけたそうです。こちらの方が体に無理がかからなくていいと私などは思うのですが、キリギリスの時期の人は時間がかかることに耐えられません。で、2ヵ月でなんとかするというライザップが今の時流にハマリました。
 
ライザップのCMは、トレーニングを始める前と後のスタイルの違いを同じ画面に見せて効果をアピールしていますが、これも今の流行に合っています。ただし
   
こちらは、キリギリスではなくて「分離」です。同じ人間が時間の前後で変身していますから時間差分離です。完全個室のプライベートジムというのも分離。こちらも時流に合っています。
 
(上の文、2015/05/18 記載)
 
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【関連ページ】
「アリ型人間とキリギリス型人間」は交互に現われる

 
 
 
  
    早い結果を求めるのはキリギリス
 
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-流行予測 15段目-
ヤングレディスブランド

客層広げて2ケタ増

ブランドらしさ残して大人層も「納得」の商品
 
       〔・・・・・・〕
マジェスティックレゴンは、「ヤングブランドでも着られるものがあると気付き始めたOL層が、買うブランドの価格帯を下げて我々のゾーンに移ってきているのでは」と推測。

 
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モード工学研究所の森田洋一 読紙感想文
左の文は、15年6月17日付の繊研新聞1面からの抜粋です。この記事ではシティーヒルの「マジェスティックレゴン」の他に、アダストリアの「ジーナシス」、ナイスクラップの「ワンアフターアナザー・ナイスクラップ」を成功事例として挙げています。いずれもそのブランド本来の年齢層より上の世代が自社ブランドを買うようになったのに合わせて、素材やデザイン、価格をその世代が買いやすいように変えて成功しています。
 
ブランド側からみて上の年齢が買うようになったということは、客のほうからみると、自分の世代向けのブランドがつまらなくなって、もっと若い人向けのブランドが以前より魅力的に見えるようになったということです。若い人向けを買うためらいが小さくなったということです。こういう流行を私は「自由」あるいは「カジュアル」と言っています。
   
カジュアル化はヤング化 
もともとヤングは上の年齢に比べるとファッションがカジュアルに寄っています。大人のファッションは逆にエレガンスに寄っています。あなたも気づいていると思いますが、現在の日本ではカジュアルが流行しています。それもヤング層ではカジュアル度がより強いものへ人気が移っています。
 
カジュアルファッションが流行すると、カジュアルと相性がいいヤングファッションが元気になります。ファッションリーダーの年齢が下がります。大人の人はヤングと同じ格好をしたがります。そのため自分の世代向けのブランドから離れて、もっと下の年齢向けのブランドがある売り場に移動します。はじめはモジモジしていてもそのうちに大胆に買うようになります。
 
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-流行予測 16段目-
 
「自由」の時期の消費者は、時・場所・場合・年齢・性別・季節・身分なの約束事がきつくはたらくことを、その束縛を嫌います。そこから自由になろうとします。これも、大人ファッションのヤング化にプラスに働いています。
 
(上の文、2015/06/17 記載)
 
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長期的に今どんなトレンドが来てる? 
 
  
   

刀や城「キャラ化」で愛着

由来の場所に集客効果
 
  日本古来の刀や城から、最新の家電まで擬人化して楽しむゲームやアニメが人気を呼んでいる。「モノ」が美男美女のキャラクターになって歴史や技術に関する特徴を表すことで、消費者は今までにない親しみや魅力を感じる。若い女性がキャラクター由来の場所を訪れるなど観光地への集客効果も出てきた。
               〔・・・・・・〕
  最近の擬人化ブームの先駆けは2013年に角川ゲームス(東京・渋谷)が開発したオンラインゲーム「艦隊これくしょん―艦これ―」だ。「金剛」「榛名」などの艦艇を模した少女のキャラクターが多数登場し、アニメや関連商品も人気を集めている。

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モード工学研究所の森田洋一 読紙感想文
左の文は、15年6月30日付の日本経済新聞13面からの抜粋です。13年4月23日にサービスが開始された「艦これ」について書かれた部分を、ここでは抜粋しましたが、記事全体では、「刀剣乱舞」や「城姫クエスト」「家電少女」などのもっと新しい事例が中心です。
 
艦これは、スタート前の計画では最終登録者数を10万人と想定していましたが、登録者数が想定を超えて増えたため2ヵ月ほどで新規の登録をストップさせました。その後もあまりの人気にサーバーの増設が間に合わない状態が続きました。今では登録者数が300万人を超えているそうです。
 
「ゲーム内容は、第二次世界大戦時の大日本帝国海軍の軍艦を中心とした艦艇を萌えキャラクターに擬人化した「艦娘(かんむす)」をゲーム中で集め、強化
 
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-流行予測 17段目-
しながら的と戦闘し勝利を目指すというもの」(Wikipediaより)です。つまり艦艇の擬人化ですから〔結合〕の流行です。
 
艦艇と萌え系少女では我々の持っているイメージがまるで違います。両者は水と油の関係です。それが、ゲームをしている人の頭の中で混ざります。別々に扱うのが参照点(普通・当たり前・常識)のものを無理やり合体させているから「艦これ」は〔結合〕の流行なのです。サービスが開始された13年ごろは「結合」が流行している時期でした。そのタイミングに艦これはドンピシャだったわけです。
 
でも現在は結合とは逆の分離のタイミングです。今でも擬人化ゲームの人気が続いているように見えるのは、人の行動には惰性があるからです。好きになった惚れたという思い出が、消費者に同じパターンの反応を続けさせています。でも魅力は急落しているわけですから、過去に擬人化ゲームが好きになったという
   
思い出が薄れるに従って同じタイプの新ゲームはダメになります。現に、後から出てきたものほどヒットが小粒ですよね。
 
(上の文、2015/07/30 記載)
 
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萌え系でも内容過酷 
 
  
   
大人がヤング向けブランドを買っている
 
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-流行予測 18段目-
女子ソフトボール元日本代表監督

宇津木妙子氏

       〔・・・・・・〕
  正直なところ、私には女子サッカーに対する嫉妬心もある。ソフトボールは世界選手権で連覇している。なのに「なぜ女子サッカーだけ注目されるの」という気持ちがどこかにある。

 
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モード工学研究所の森田洋一 読紙感想文
左の文は、15年7月07日付の読売新聞13面からの抜粋です。
 
女子ソフトボールは世界選手権に2012年、14年と続けて優勝しました。なのに人気はサッカーの日本女子代表なでしこジャパンに遠くおよびません。一方、なでしこジャパンは女子ワールドカップで2011年に1回優勝しただけで大フィーバーが起こりました。いきなり国民栄誉賞、紫綬褒章、流行語大賞ですから、こりゃソフトボールとは違いすぎるだろ…ということです。
 
ハイセイコーという馬をご存じですか。70年代前半に活躍した競走馬で、大井競馬場でデビュー。後に中央競馬場で活躍。地方競馬場出身の怪物としてマスコミがもてはやしました。同じころに首相になった田中角栄を今太閤と呼んで、提灯記事をマスコミは出し
   
まくっていましたから、成り上がり者の肩書きが売りになるタイミングだったわけです。当時は、競馬に関心が無いはずの子供でもハイセイコーの名前を知っていました。人気が講じて歌になり、そのレコードが実際にヒットしたほどの人気でした。第一次競馬ブームの立役者と言われています。
 
じゃあ、ハイセイコーが史上最強の馬だったのかというと???…です。最強とは言えない馬が人気では最強になったのは、強い馬が人気になるタイミングだったからです。そのタイミングにたまたまハイセイコーがいたからです。
 
ハイセイコーブームを分解すると、「ハイセイコーが強かった」×「成り上がり人気」×「競馬そのものの人気」=「成り上がりの競走馬ハイセイコーが強かった」×「それをもてはやすタイミングだった」=「供給側の仕掛けがたまたまツボにはまった」…となります。
 
 
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-流行予測 19段目-
つまり、ハイセイコーがいなければもちろんハイセイコーフィーバーは無かったのですが、いてもそれが別のタイミングだったら、あそこまでの盛り上がりは無かったはずなわけです。ハイセイコーブームは、仕掛けた供給側とそれを評価した消費者があのタイミングではうまく揃っていて、その相互作用で起こりました。
 
なでしこジャパンも同じで、なでしこジャパンが女子ワールドカップで優勝しなかったならば、当然フィーバーは起こっていませんが、たとえ優勝しても別なタイミングだったら、ソフトボールと人気はどっこいだったはずです。
 
これをファッション産業で考えてみましょう。やはり ファッション=仕掛ける供給側×評価する消費者 と分解できますが、女子サッカーや競馬に比べて供給側の制約がはるかに小さいのが特徴です。優勝は量産できませんが、ファッションの当たりは量産できますからね。「下手な鉄砲も数打ちゃ当た」りますし、当たりが
   
出ればそこに供給が集中します。ですから、消費者が評価するものは、遅かれ速かれ供給されます。流行の主導権は消費者が持っています。
 
なので、私がファッションを予測する時も、まず消費者の反応がどう変化するかを先に考えます。それに対して供給側がどう反応するかを後から考えます。消費者が先、供給側はトッピングです。
 
(上の文、2015/08/07 記載)
 
 
   

傾きマンション騒動の犯人はあなただ

横浜市のマンションで、基礎杭が短すぎて傾いたという事件があり、マスコミが騒いでいます。発覚したのが 2015年10月です。傾きのせいで隣の棟とずれたのがたったの1.5㌢、震度7の地震にも耐えられる強度が残っているというのに,発表されてからは大騒ぎ。毎日トップニュースになっています。映画のポセイドン・アドベンチャーじゃあるまいし、騒ぎ過ぎだろ。「こんなことは前代未聞だ」って嘘をつけ。去年も有ったじゃん。
 
今回の「パークシティLaLa横浜」と同じ横浜市内にあるマンションの「パークスクエア三ツ沢公園」で建物が傾くという事件があり、去年の6月に公表されました。事前の調査ボーリングでは分からなかった地盤支持層の落ち込みが有って、基礎杭の一部が固い地盤支持層まで届かず沈下し傾いたそうです。
 
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-流行予測 20段目-

傾いていることがなぜわかったかというと、隣の棟とつなぐ通路の手すりがずれたということで、これも今回と同じです。それを住民が指摘したのが今から12年前ですから、売った所が欠陥を認めるまで11年かかっています。手すりの写真を見ると去年のパークスクエアの方が今年のよりずれが大きい。時間がたっているせいかもしれません。
 
販売会社は三井不動産ではなくて住友不動産でしたが、多くの人間が信頼している大手で起こった点は今年と一緒。工事をしたのが去年が熊谷組、今年が三井住友建設。信用のある大手という点ではこちらも同じ。どちらもよく似た事件ですがマスコミの扱いはまるで違います。
 
そもそも去年の事件をあなたは覚えていますか。覚えていない人が多いんじゃありませんか。去年は、ほとんどの人が覚えていられないほどに関心を持たれ
   
なかった。だからマスコミも大きくは取り上げなかった。でも今年は視聴者や読者の反響が去年とはまるで違う。だから報道がエスカレーションしたわけです。
 
今年のLaLa横浜「事件」の前にニュースで繰り返しながれていたのが、猫や鳥の死骸が道に落ちていたという話でした。客に反響があって追加ニュースがながせる間は、たいしたことがない話だって報道は続きます。
 
私は、今回の事件が当事者や関係者にとってもたいしたことがないと言っているのではありませんよ。自分が巻き込まれたらやはり怒るでしょうね。でもあなたは当事者でも関係者でもありませんよね。関係のない人間にとってニュースはエンタテイメントです。
 
事件の内容がそっくりでも、それがいつ起こったのかで大きく反響が違います。つまり、今回の騒ぎの真犯人は流行で、そのメンバーの一人であるあなたなんです。
   
(青字の文、15/10/23記載、15/10/26加筆)
 
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【関連ページ】
マクドナルドとペヤングに学ぶ「マスコミに面白がられない」方法」
 
    事件はエンタティメントです
 
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-流行予測 21段目-

視点

巷はガウチョであふれている。ヤングからミセスまで幅広い層に支持されている。
       〔・・・・・・〕
有力ファストファッションもこの流れに対応した商品でヒットを飛ばした。
  その一方でボトム市場の同質化を生んでいるのも事実。

 
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モード工学研究所の森田洋一 読紙感想文
左の文は、15年7月24日付の繊研新聞3面からの抜粋です。
 
ガウチョパンツは、裾フレアの中途半端丈パンツのことで、ぱっと見ではスカートにも見えます。だから以前はキュロットスカートと言っていました。それが大流行しているという話です。
 
ヒットの原因ですが、よく言われているのが「体型を隠して足首を細く見せる。ゆったりしているので動きやすく楽だ」など機能の話です。でもね、こういう理屈はいつでも成り立ちます。3年前でも3年後でも成り立ちます。ですから、流行が今でなければならない理由にはなりません。
 
「カワイイから。ニットと相性が良いから。コーディ
   
ネートの幅が広がるから」なんていう言葉も聞きます。カワイイからというのは半分正しい。多くの人間がカワイイと思うから流行するわけですからね。でもカワイイというのはガウチョパンツがもともと持っている性質ではありません。3年前のガウチョは可愛くなかったですし、3年後のガウチョも可愛くないはずです。なぜ今だけカワイイのかが言えなければ説明になってません。

いろんなアイテムとの相性が良いというのも流行の原因ではありません。美人なら何を着ても美人だというのと同じで、カワイイガウチョだから何と組み合わせてもカワイイのです。カワイくなくなれば、何と組み合わせても似合わないコーディネートになります。
 
本題に入ります。〔同一視・対立視〕という循環要因があります。循環要因は流行の原因で文字通り循環しています。つまり、代わりばんこに流行します。今は同一視のタイミングです。同一視の時期の消費者は個性を嫌います。他人と同じであることを好みます。「同じ
 
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-流行予測 22段目-
デザインが街にあふれているから」ぐらいでは、「すでに自分が持っているから」ぐらいではゲップがでません。そんなことは買わない理由になりません。結果、商品寿命が伸びます。ヤングで流行がまだ続いているうちにミセスが買い始めます。ヤングとミセスで共通の売れ筋がたくさん現れます。以前の例でいうと花柄パンツの流行が同じでした。ヤングとミセスでほとんど同じデザインが売れました。
 
同一視の時期には、他人と同じ格好がしたい人が増えるわけですから、デザインに個性がなくなります。シンプルになります。誰もがほとんど同じ格好になります。なので、同質化に逆らわない企業が儲かります。どこにでもあるような似たり寄ったりの商品を後出しジャンケンで企画し、安く大量に供給する問屋やSPAがニコニコになります。
 
先ほど現在は同一視だと言いましたが、その末期にあたります。対立視がすでに上昇を始めています。
   
成功パターンがでんぐり返る同質化が危機に結びつくのはこれからです。
 
同一視が終わって対立視にかわり、個性が求められるようになると、商品寿命が縮んできたのに気付かずに今までと同じことをやっている企業で、地獄の釜のフタが開きます。値崩れのスピードが速すぎて粗利が無くなります。店頭に出してから商品が止まるまでの期間が短すぎて在庫が残ります。店内が流行遅れだらけなんですから、そのブランドや店から消費者が離れます。
 
今までの儲かりパターンが儲からんパターンになったのですから、これまでを否定して反対方向に突っ走れば再びニコニコに戻れるわけですが、多くの企業はそうしません。だって、儲かっていたんですから否定なんてやです。今までのやり方は間違って
   
いない、やり方が不十分だから儲からんのだと考えます。今まで通りのやり方を今までより過激にやろうとします。ジタバタもがいている間にどんどん消耗していきます。そういったことがこれから起こります。
 
(上の文、2015/11/10 記載)
 
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【関連ページ】
大当たりビジネスは繰り返す

(理詰めのトレンド予測第4章5節より)
 
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2015/01/27ページ作成、2015/11/10最終更新