第4章 [同一視]と[対立視]を知って流行を読む
5 大当たりビジネスは繰り返す
成功パターンは失敗パターンに、失敗パターンは成功パターンに。
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過去を知れば自分のこれからが
わかる
ファッションビジネスでは、対立視のときに活躍する若者に、時代を超えた共通点があります。そういう話をさきほどしました。これは彼らだけに限りません。対立視のときの市場の変化は、時代の違い、つまり、特定要因の違いより大きな共通点がありますので、既存のアパレルメーカーや既存の小売店の傾向と対策も時代の違いを超えた共通点があります。ですから私は、コンサルティングを受けているお客様にいつも言います。
「あなたが今経験していることは、あなたにとってははじめてかもしれません。あるいは経験したけど忘れているのかもしれません。でも、同じことは過去にも起こっています。過去の |
出来事ですからその結果も分かっています。自分がこれから何をやって、その結果がどうなるかは、全部過去の記録に出ています。成功事例ともっとたくさんの失敗事例が歴史に記録されています。ですから、過去の事例を知ることは、自分の今とこれからを知るのにきわめて有効です。」
では、どのくらい似ているか、別な時代の2つの記事を比べてみましょう。どちらも、消費者は対立視になっているのに、供給側の人間がうまく適応できないでいる時期の話です。 まずは、今から4周期前の対立視が来ていた1977年です。 「今春ほど、どのアイテムに限らず売れ筋が集中した年も珍しい。裏をかえせば、流行も無ければ商品企画、開発そのものに新しさを生み出す意欲、創造性が欠如していたためといえよ |
う。
スカートもしかり。型は相変わらずタイト、ボックスプリーツ、やや目新しさ(といっても以前からあったのだが)をねらったもので、車ヒダや巻きスリットタイプのものが構成の大半を占める。しかも、カラーになるとどの店も全くお決まりの白、からし、それに追随する紺、グレーのはんらん。残念ながらというべきか、ほかのカラーはプレステージ効果を高める要素はあっても売上げにはほとんど寄与しないという、まさに一点集中型の売れ行きぶり。 ここに、どの業態を問わず『売れ筋把握に悩まず、集中して追えるから商売は楽』との見方が生じてくるが、現実はさにあらず。どの店頭(売場)にも同じタイプの商品が並ぶという事態の中から、ついに異常なまでの価格競争熱をあおりはじめたのだ。」(繊研新聞1977年4月18日付7面より) |
−トレンド予測 89段目− | ||||||||||
(専門店チェーンA社とB社)
「双方の見方の是非は別にして意識の中では価格問題がひじょうに高いウエイトを占めてきたことは確か。それが、売れ筋集中、流行や独創性の欠如が続く限りますますエスカレートしていくことも間違いない。 スカートに例をとった売れ筋集中は、価格競争に拍車をかけた。高級指向を除く専門店でも二千九百〜四千九百円までがボリューム。量販店価格と大差はなくなってきている。」 (同) みんなと同じものを消費者が求めているのなら、値崩れはしません。他人と違うもの、去年と違うものを求めるようになったのです。違っているものにしか金を払わなくなっていたのです。ところが、供給側が同一視の時の成功体験から、去年と同じもの、他店と同じものを店頭に並べたので、猛烈な値崩れが起こりました。 次ぎは2004年の記事です。ですから、今回の対立視についての話です。同年4月以降の消費不振について、その原因は何かという話です。 |
赤信号みんなで渡れば総崩れ |
「同質化加速説 『 自社の問題を除くと、大きいのは近年、続いてきた同質化の極み』と分析するのはユナイテッドアローズ。同質化説は強い。『個性的な物が売れない』と原宿のショップ 『ナンバー44』。4、5月には売れ筋の欠如、トレンドやスタイリングの不在、仕掛けの弱さが重なって同質化したと見られる。売れ筋はデニム、美脚パンツ、シャツ、キラキラ商品、 雑貨と、どこの店もほぼ同じ。ヤングから大人服、エレガンスからカジュアルまで上質化やベーシック指向一辺倒も強烈な売れ筋の集中化現象≠生んだ。 追い打ちをかけたのがコピー。『ベーシックに振りすぎたこともあるが、コピーが異常に早く出回り、随時出るヒットのヤマが小さい』とセシルマクビー。3月までの売り上げ2ケタ増が4月から1ケタになった一因に挙げる。 価格帯地滑り説 同質化は低価格を一歩、進めた。レディスヤングカジュアルのボリュームは1900円、2900円。昨年の4900円、3900円から地滑りした。しかも今年は1枚ではなく、タンクトップにシャツや |
羽織り物と、2枚セットだ。
同質化と価格競争の強まりで苦戦している代表はカットソー。」(繊研新聞2004年6月17日1面「冷え込む消費マインド」より) 先の事例は1977年、こちらは2004年、その間に27年も経っています。ロット(一回の生産数量)の大きさ、コピーのスピードなど、細かい違いはいろいろあります。第一、出てくる商品や登場人物が違います。それにもかかわらず、店頭で起こっていることも、ファッション業界がやっていることもよく似ています。同じ循環要因のほとんど同じタイミングだからです。 ファッション業界は、〔同一視・対立視〕の循環に合わせて、よく似たことを7年に1ぺんずつ繰り返しています。つまり、これとそっくりなことが2011年に起こります。 あなたのまわりの人間が、これから何をやるかを知りたければ、7年前と14年前を思い出しましょう。 (続く) |
−トレンド予測 90段目− | |||||||
*1 ……優れた製品 カシオ計算機は、発売前はほとんど期待していなかった。ところが予想とはケタ違いの注文が入った。 *2 クイックレスポンス型 初期生産量を抑え、シーズンインしてから売れ筋商品を追加していくこと。 米3 写メール 2000年にJフォンから出たカメラ付き携帯電話。 07/11/02転載 10/04/24 脚注転載 【関連ページ】 デフレ消費の終焉を実感させた冬商戦 |
目次 0 /
第1章 流行の原因には「特定要因」と「循環要因」の2つがある 1-1 / 1-2 / 1-3 / 1-4 / 第2章 「曲」と「直」で流行が変る 2-1 / 2-2 / 2-3 / 2-4 / 2-5 / 2-6 第3章 デザインの流行は「上比長」「下比長」に分かれる 3-1 / 3-2 / 3-3 / 3-4 / 3-5 / 3-6 / 3-7 第4章 「同一視」と「対立視」を知って流行を読む 4-1 / 4-2 / 4-3 / 4-4 / 4-5 / 4-6 / 4-7c 第5章 「アリ型人間」と「キリギリス型人間」は交互に現れる 5-1 / 5-2 / 5-3 / 5-4 / 5-5 第6章 「エレガンス」と「カジュアル」もしくは「束縛」と「自由」 6-1 / 6-2 / 6-3 / 6-4 / 6-5 / 6-6 / 6-7 / 6-8 第7章なぜ、まったく同じ流行が起きないのか(3つの理由) 7-1 / 7-2 / 7-3 / 7-4 「理詰めのトレンド予測 ウエブ版」1段目へ トップページへ |
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