第6章 [エレガンス]と[カジュアル]もしくは[束縛]と[自由]
3 流行の主役が交代すると、直後にバブルが発生する
供給側の行動には慣性が働いています。
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様々な「らしさ」「約束事」がグズグズ
になる この章のはじめにもどりましょう。2004年に関西系セレブカジュアルが東京へ進出した話をしましたね。このセレブカジュアルは、実際に売り場をオープンしてみたら売れませんでした。仮需だけで実需のないバブルでした。「エレガンスとカジュアルの中間」は「若い人では1999年から01年まで」ですから、セレブカジュアルの流行はとっくに終わっていました。これは「エレガンス」の循環要因に限らないのですが、活性期が終わった次の年ぐらいまでは流行現象としてはまだ残っています。むしろ上昇しているように見える*1場合さえあります。消費者は、惚れた瞬間だけでなく、その思い出でも
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行動するので、流行に惰性が働くからです。でも、活性期が終わってから何年もたっていた2004年ではやはり無理でした。
「若い人で2002年から04年まではカジュアル」ですから、この時期は本当は、カジュアルらしいカジュアルウエアが人気のタイミングです。 以下の文は、繊研新聞2004年3月24日1面の記事からの抜粋です。 「レディスカジュアルのエーズラビットが東京・自由が丘の路面に持つ本店は、月坪(3・3平方b)当たり140万〜150万円を売り上げる人気店だ。店舗面積は30平方b。開店から22年、ずっとスタイルを変えずに、ベーシックなアメカジを売ってきた。 |
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浮き沈みはあっても市場はなくならないと考えてきたからだ。同店が安定して売り上げを伸ばし始めたのは3〜4年前。特にきっかけがあったわけではない。全体の7割以上はオリジナルで、古着感覚のTシャツやトレーナーなどカットソーを作り続けている。今春の人気商品も洗いでかすれた感じを出したプリントや、ていねいにミシンで縫い付けたロゴアップリケが特徴のシャツに長袖Tシャツを重ねたスタイルだ。
顧客は女子高生から20代が中心だが、母娘で一緒に来店する顧客も多く、新店よりも歴史の長い店の方が業績もいい。98年にオープンした蒲田店は1年前から前年同期比5割増以上のペースで売れている。自由が丘本店を核に時間をかけて育ててきたのが実っている」 |
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−トレンド予測 135段目− | |||||||||||
「ずっとスタイルを変えずに、ベーシックなアメカジ*2を売ってきた」店なので、店の業績に〔エレガンス・カジュアル〕の循環が表れています。 「安定して売り上げを伸ばし始めたのは3〜4年前」でしたね。この時は、「エレガンス」全盛から「エレガンスとカジュアルの中間」に移行した時期です。 新店は「1年前から前年同期比5割増以上のペース」になりました。これは、「エレガンスとカジュアルの中間」から「カジュアル」に移行した時期です。 現在、若者の市場は「カジュアル」が終わっています。終わっているといってもそれは流行の原因の話で、流行現象としてのカジュアルはすぐ終わってしまうわけではありません。カジュアルの余熱はまだ残ります。 2005年のクールビズでカジュアル化が進んだオジサンたちは、これまででは考えられなかったようなデザインを受け入れるようになっています。カジュアル化で、オジサンらしくしなければいけないというタガがゆるんでいます |
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から、若々しいデザインや女性っぽいデザインに大勢が挑戦しています。そういう格好をした中年男性を街でたくさん見かけるようになりました。
「フリルの付いたブラウス、花柄のデニム……。男性向け衣料品で『キレイ』『かわいい』を切り口にした商品が流行している。おしゃれな着崩しを覚え始めた男性たちの間で、デザインや色柄に対する許容度が広がっていることが大きな要因*3だ。女性的なファッションを好む『メトロセクシャル』なトレンドが、オトコの"モテ服"志向を刺激している」(日本経済新聞2006年2月18日付夕刊3面より) (オンワード樫山メンズ商品開発室の)「黒部室長は男性ファッション『十二年周期説』の主張者でもある。世界的に『(伊マフィアのような)ワルめから、(イギリス正統派の)キレイ系へと十二年かけて周回する』といい、紺色のブレザーが流行した前回のキレイ系絶頂期から今年はちょうど十二年目に当たる。『紺ブレや装飾的なシャツなど、キレイ系の商品が当たるだろう』 |
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と予測している」(同) ピンポーン。黒部室長のいうとおり、男性ファッションは12年周期です。ただ、この周期は男性ファッションだけではありません。女性ファッションも、子供服も12年周期です。 流行は、砂場の棒倒しと同じで、後になればなるほどリスクが大きくなります。ところが供給側の人間は、同じ経験を繰り返しているわけですから、後になればなるほど強気になります。それで時間の経過とともに行動が大胆になります。供給側の動きだけを見ていると、流行の終わりをピークと錯覚します。スタートと錯覚する場合さえあります。 ヤングのカジュアルは、実需ではとっくにダウントレンドです。でも、市場規模などのように仮需で決まる数字は、その通りには動きません。 あなたが景気の良い話を聞いたとき、すぐに走り出してはいけません。それが実需を反映している話なのか仮需を反映している話なのか、立ち止まって考えてください。 (続く) |
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−トレンド予測 136段目− | ||||||||
08/6/17転載 *1 ……ように見える ボージョレヌーボーやクリスマス用品のように、年1回一発勝負型の商品では、数のピークは魅力のピークよりまる1年遅れる。 *2 ベーシックなアメカジ 「アメカジ」がカジュアルウエアなのは「現在のところは」である。ずっと先の話だが、エレガンスウエアになる時代が必ずくる。 *3 大きな要因 1968年頃のカジュアルではこれを「ピーコック革命」と呼んだ。 「理詰めのトレンド予測 ウエブ版」1段目へ トップページへ |
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目次 0 /
第1章 流行の原因には「特定要因」と「循環要因」の2つがある 1-1 / 1-2 / 1-3 / 1-4 / 第2章 「曲」と「直」で流行が変る 2-1 / 2-2 / 2-3 / 2-4 / 2-5 / 2-6 第3章 デザインの流行は「上比長」「下比長」に分かれる 3-1 / 3-2 / 3-3 / 3-4 / 3-5 / 3-6 / 3-7 第4章 「同一視」と「対立視」を知って流行を読む 4-1 / 4-2 / 4-3 / 4-4 / 4-5 / 4-6 第5章 「アリ型人間」と「キリギリス型人間」は交互に現れる 5-1 / 5-2 / 5-3 / 5-4 / 5-5 第6章 「エレガンス」と「カジュアル」もしくは「束縛」と「自由」 6-1 / 6-2 / 6-3 / 6-4 / 6-5 / 6-6 / 6-7 / 6-8 第7章なぜ、まったく同じ流行が起きないのか(3つの理由) 7-1 / 7-2 / 7-3 / 7-4 |
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