理詰めのトレンド予測 ウエブ版                          トップページへもどる 目次へもどる

       第4章 [同一視]と[対立視]を知って
    流行を読む

     1 新聞記事からでも流行が予測できる
       7年に1度、同じ記事が出てきます。

 抽象概念にも流行がある
  1987年ごろのことですから、今から20年近く前になります。国会図書館に通って、戦後発行された繊維業界紙を数十年分読んでいったことがあります。
  数十年分の新聞といっても、古い方から順番に読んでいったのではありません。新聞記事を読んでいくことで、そのとき新しく仮説を立てていた循環要因の周期が分かるのではないかと思って、仮定した周期を裏付ける記事を捜しました。
読む目的がはっきりしていたわけですから、必ずしも日付の順番どおりでなくてもいいわけです。古い記事を読んだり新しい記事を読んだり、日付順に続けて読んだり、1年前と1年後を読み比べたり、かなり不規則な読み方をしていきました。
  そんなことをしばらく続けているうちに奇妙なことに気が付きました。ぜんぜん違う年に、全く同じと言っていいほど似ている記事が載っているのです。市場の変化も同じですし、それに対して、問屋や小売店がとる対策も同じです。日付を入れ替えられても気が付かない
くらいそっくりです。そのほとんど同じ内容の記事が何年かの間を空けて飛び飛びで新聞に載っています。まさに循環しているということです。
  私は、国会図書館に通い始めたときの目的だった「前もって仮説をたてていた循環要因の周期を求める」ほうは、うまくいかなかったのですが、別な循環要因を見つけてしまいました。
  面白いことに、そういう記事を書いている記者は、同じことが市場で繰り返し起こっていることに気が付いていません。繊維業界に、
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-トレンド予測 45段目−
今まで経験したことがない全く新しいことが起こったかのように書いています。「全く新しい出来事」が繰りかえし繰りかえし記事になっていたわけです。
  この国会図書館で見つけた循環要因についてこれからお話します。
 
  あなたが街を歩いていて、向こう側からやってくる人が、あなたと同じ服を着ていることに気が付いたとします。そういう時あなたはどう思いますか。その人をニコニコ笑って見ますか。その日は一日中気分がいいですか。それとも、ムカッと来て腹が立ちますか。その日は一日中気分が悪いですか。
  自分と同じ服を着ている人を見て、ニコニコする人が増える時期を「同一視」といいます。物事の共通点に関心を持ち評価する流行です。「同一視」が活性期の時の消費者は、物事の細かい違いは気にしません。物を買うとき、商品と他の条件を天秤にかけます。他人と同じものを欲しがります。大量に同じ物があると買いたくなります。
  自分と同じ格好をしている人を見て、
ムカッ腹を立てる人が増える時期を対立視」といいます。物事の違っている点に関心を持ち評価する流行です。対立視が活性期の時の消費者は、物事のわずかな違いを気にします。デザインも性能も妥協できません。商品に鮮度を求めます。他人と違うものを欲しがります。少ないことに魅力を感じます。
  この〔同一視・対立視〕の循環要因周期が約7年で、位相(タイミング)は2003年から対立視」です。もちろんスタートの時期は性別年齢で違いますから、2003年からというのは20歳の女性の場合です。それで、2006年はシニア層を含めてほとんどの人が対立視です。目に見えない抽象概念の流行なので、周期や位相(タイミング)の精度はデザインの流行より少し落ちます。大体の時期と考えてください。
 
  「対立視」に関係した流行で、その「対立視」という語感にピッタリなのは、書籍や流行語のようにコトバそのものが商品だという分野でしょう。抽象的概念の流行なので、コトバの流行では文字どおりストレートに出てきます。
  以下は、時田英之氏が読売新聞に寄稿した文の抜粋です。
「『格差社会』という言葉が、今国会の論戦に登場するなどして改めて注目を集めている。昨年出版された消費社会研究家の三浦展氏による『下流社会』(光文社新書)がベストセラーになる一方、先月読売新聞社が行った世論調査でも74%が『日本は格差社会になりつつある』と回答した
」(読売新聞2006年2月22日付夕刊「論壇」より)
  今回の「格差」ブームでは、インテリがまじめくさって理屈を並べていますが、毎回こうなるわけではありません。同じ対立視でも、3周期前の1984年では、「マル金(キン)、マルビ*」が流行語になりました。かなり軽いノリでしたね。
  私は別に、「日本は格差社会になりつつある」という考えが間違っていると言っているわけではありません。正直なところ、間違っているのか、間違っていないのか、専門外なのでよく分かりません。
ただ、「格差社会になりつつある」という考えが正しかったにしろ、そんな変化は2006年
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-トレンド予測 72段目−
からいきなり起こったわけではありません。2005年からでもありません。格差は拡大していると主張するどの人の論考を採用しても、原因はダラダラ型の特定要因ですから、ジワジワゆっくりと変化したはずです。
  でも、日本社会の階層の二極化は、ある時いきなり問題になりました。議論が急激に盛り上がりました。何で急激だったのか、何でそれがこの時期だったのか、対立視の活性期だったからです。トレンドだったからです。
  「下流社会」以外のベストセラーでは、「頭のいい人悪い人の話し方」(樋口裕一著、PHP研究所)や「県庁の星」(桂望実著、小学館)、「国家の品格」(藤原正彦著、新潮社)などが対立視です。「頭のいい人悪い人の話し方」は本の題名が、「頭のいい人」と「頭の悪い人」で対立しています。「県庁の星」はトラブルロマンスですから、主人公の役人と民間人が対立しています。「国家の品格」は、日本や日本人は他国とは異なる特別な存在なのだと主張しています。その主張が対立視です。
  書籍ではありませんが、2004年に、孤高タイプのイチローがマリナーズで世界記録を
更新して262安打を達成したとき、普段は野球に関心がない人も巻き込んで大騒ぎになりました。これは「国家の品格」タイプの対立視ですね。
2005年には、若貴兄弟の争いや自民党の内紛に多くの人が異常なほど関心を寄せました。こちらは「県庁の星」型の対立視ですね。
 
  もしあなたがインテリで、自分の考えを社会に受け入れてもらおうと思うならば、抽象概念の流行を無視してはいけません。あなたの主張がどんなに正しくても、時流に反していると浸透しません。逆に時流に合っていれば、たとえホラ話でも受け入れられるかも知れません。
  同じく、あなたが、霊媒師や占い師、コンサルタント、セミナー講師のように、コトバを操ることをビジネスにしている人で、話す内容で儲けたいのなら、抽象概念の流行に逆らってはいけません。
 
  私は図書館でこの流行を見つけました。それも普通の業界新聞で見つけました。
図書館にある新聞ということは公開資料ということです。あなたが知りたい流行について特別な資料を持っていなくても、やりようによっては答を出せます。ただし粘り強さが必要です。資料不足は、根気と執着心でカバーできます。偏執狂になりましょう。(続く)   07/09/20転載 
    
マル金、マルビ
 渡辺和博著『金魂巻』(1984年、主婦の友社刊)が「マル金、マルビ」ブームのきっかけとなった。
   
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共立女子大ストリートファッションレポート1008sについて
 
無から生み出す
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-トレンド予測 73段目−
目次 0 /
第1章 流行の原因には「特定要因」と「循環要因」の2つがある
1-1 / 1-2 / 1-3 / 1-4 /
第2章 「曲」と「直」で流行が変る
2-1 / 2-2 / 2-3 / 2-4 / 2-5 / 2-6
第3章 デザインの流行は「上比長」「下比長」に分かれる
3-1 / 3-2 / 3-3 / 3-4 / 3-5 / 3-6 / 3-7
第4章 「同一視」と「対立視」を知って流行を読む
4-1 / 4-2 / 4-3 / 4-4 / 4-5 / 4-6 / 4-7c
第5章 「アリ型人間」と「キリギリス型人間」 は交互に現れる
5-1 / 5-2 / 5-3 / 5-4 / 5-5
第6章 「エレガンス」と「カジュアル」もしくは「束縛」と「自由」
6-1 / 6-2 / 6-3 / 6-4 / 6-5 / 6-6 / 6-7 / 6-8
第7章なぜ、まったく同じ流行が起きないのか(3つの理由)
7-1 / 7-2 / 7-3 / 7-4
 
 
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最終更新2013年01月12日
 
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