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  第4章 [同一視]と[対立視]を知って流行を読む
  6 原因も結果も前と同じ、だからやるべきことも同じ
      新しいと思えるビジネスのほとんどは、過去にすでに出現しています。
−トレンド予測 91段目−
1991年の対立視と、
  2005年の対立視を比べる
次の文は、繊研新聞1992年1月27日付9面に載った2周期前の対立視の話です。「秋冬苦戦の反省は間違いだらけ」というタイトルで私が寄稿しました。当時繊維業界は、他産業より先に不況に突入していました。その不況に対する業界の対応が間違っているという話です。
 「秋冬苦戦は三年前の八九年から始まっています。苦戦は『暖冬』のせいにされました。この説明も三年も続くと苦しいものがあります。
   
のがあります。自分たちの提供している商品が消費者の気持ちとずれているのだという認識が最近出てきました。これは正しい。でも、対策が間違っています。
  いま、店頭で何が起きているのか。今秋冬の反省からやり直しましょう。原因がわかれば対策もおのずから立ちます。
  昨年の九月ごろの春物展示会で夏物の注文が激減しました。小売店は「春物の売れ筋もよくわからないのに、夏物までわかるわけがない」と考えました。一昨年の秋に発注した夏物が売れなかったという反省が、アパレルメーカーの数字と
   
なって出てきました。
  秋冬物はどうだったでしょうか。シーズン直前になっても数字が取れないのでアパレルメーカーはあわてました。それがシーズンインしてから、いきなり大量の注文が鉄砲水のように飛び込んできました。小売店は実際に商品が店頭で動くのを確かめてから発注しました。これも前年の反省から生まれた行動です。早めに手当てをした商品に限って店頭で動かなかったのです。
  小売店が早めに発注する商品は、少々乱暴ですが単純化していうと前年に売れたものと同じです。
 
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−トレンド予測 92段目−
それが苦戦しているということは商品寿命が以前より短くなっていることを暗示しています。
  このごろの傾向として、シーズン初期の売れ筋の値崩れが以前より早くなっています。タテマエは別として、バーゲン入りする時期が実質的に早くなってきました。商品の息切れが早まっています。
 ベーシックな定番商品が苦戦をしています。その代わり、個性のある商品はヒットしています。わずかの違いでも敏感に反応して選ぶ人が増えています。
  本紙の特集記事『インディーズ*1』にも出ていましたが、小ロット・個性重視、企画重視型のマンションメーカーが復活してきています。これはDCブランドでも同様です。今までの大ロット、没個性の時代にMD型に変質してしまってDCは名前だけというところは別ですが、昔のDCのにおいが残っているメーカーは業績が回復してきました。   POS(販売時点情報管理)データ*2などを見ると、売れ行きランキング上位の販売枚数が激減しているそうです。
   
売れ筋がばらばらになり、ある特定の品番が大量に売れるということがなくなっています。売れ筋が小ロット化しています。
  どこの店も同じ、どのメーカーも同じ、どのブランドも同じ、いつ行っても同じデザインという今の状態に消費者はうんざりしています。消費者の気持ちからみれば、少品種・大ロット・長期計画販売・コピー商法の時代はとっくに終わっています。多品種・小ロット・短サイクル・企画重視の時代がすでに来ています。さきほどの海外物現金問屋や通信販売、ロードサイド大型店でも、多品種・小ロット・短サイ
クル・企画と個性重視のところは例外的に繁盛しています。
  ところが、現在の大多数のアパレルは消費者の気持ちを逆なでする方向へ進んでいます。これが業界苦戦の本当の原因です。
  ナショナルブランド中心の大手アパレルにとって不利な時代が来ました。マンションメーカーが復活のときです。
  『他社のあの売れている商品を、ロットを
   
同質化より差別化の方が辛い百倍にして、その代わり値段を半分にして作ってくれ』という要求に『ハイ』と言えないのがマンションメーカーの弱点でした。それで、そういうものが売れる時代になると没落しました。
  逆にこれまで景気が良かったアパレルはそれができるところでした。『企画力には自信がないがコピーと量産は得意中の得意』といったアパレルが躍進しました。
  売れ筋は長期にわたって変わりませんでした。たとえ遅すぎた商品でも見切れば完売でした。『短サイクル*3』の意味が、商品の短サイクルから追加の短サイクルへ変わりました。消費者は同じ物を大量に見せられても顔をそむけませんでした。1品番で何十万着も売れるような商品も出ました。
  デザインのわずかな違いは評価されなくなりました。品番の整理統合が
 
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−トレンド予測 93段目−
起こりました。『死に筋』を廃止することでかえって利益が出ました。型数の集約、素材とその仕入れ窓口の集約、販売先の集約が起こりました。
  前の年に売れた商品は翌年も売れました。売れ筋とはいかないまでも何とかさばける程度の商品なら、前もって予測も計画も立ちました。海外物がもうかるようになりました。海外からの輸入が急増し、海外生産のための資本進出、技術供与のブームが起こりました。
  素材や縫製工場を早めに押さえてもシクジリがあまりなくなりました。生産を押さえた者が勝利者になりました。小売店もアパレルも服地卸も早いもの勝ちになりました。
  企画が早期化し、見込み生産の比率も増えました。展示会の時期も早くなりました。展示会則商談になりました。発注も早くなりました。
  川下より川上の発言力が強くなりました。『流通経費』だの『販売管理費』だのといったあいまいな言葉が通用するようになりました。『リスクなきところに利益なし』という言葉がはやりました。
   
自分で企画した商品を自分の責任で用意するという意味ではありません。みんなが言っている商品を、みんな以上に在庫することでした。中間在庫の積み増しと、そのための倉庫の建設ブームが起こりました。
  流通機構の改革が叫ばれました。生産の垂直統合が起こり、素材メーカー・服地卸・アパレルメーカー・小売店が一本の太いパイプで結ばれました。個々の企業間の契約が長期化しました。
  消費者は『他人と同じ物を着たい』と思うようになりました。いろいろ提案してみても売れるのはいつものアレになりました。それで定番の比率が増えました。個性の強い商品ほど売れなくなりました。企画部門の縮小廃止ブーム*4、デザイナーの契約解消ブームが起こりました。
  バイヤーは商品のデザインを見なくなりました。値段と数だけを管理しようとしました。企画マンがいなくなり、営業マンだらけになりました。商品の同質・画一化が起こりました。どこのメーカーもどこの店も商品が同じになりました。
   
――といったことが起こったわけですが、これは何も今回が初めてではありません。昔のワンポイントブームのころを思い出してください。あのころ自分の会社がどんなことをやっていたかを、その後どうなったかを。
  今回の結末も前回とほぼ同じです。どこも同じ商品をやっているのですから値段で勝負になり、どんどんタダに近づいていきます。もっとも安全に思えた商品ほど売れません。個性のない商品はそれだけで消費者に嫌われます。売れているからといって追加をかけると、その追加が残ります。売れない商品は値段を下げても動きません。ずうたいが大きくてクイックに動けないメーカーほど苦戦をします。
  さて、対策です。これまでのアパレルの行動に対して消費者が拒否権を発動させたのですから、今までの逆が正しい答えになります。
 
@品番を増やし、ロット数を減らすこと。今までだったら一品番にするところを数品番に分けること。
 
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−トレンド予測 94段目−
全く違う商品にする必要はない。わずかの違いでよい。追加生産はやらない。追加したくなったらデザインを変えてだす。商品力と商品量は逆比例する。
 
A仕入れ先と売り先を増やすこと。小さいところを大事にすること。流通経路が単純すぎるとロット数の分散が難しくなる。小売店1店舗当たり五枚にまで減らすことができれば、大抵の商品はなんとかなる。
 
B小売店のオリジナルは苦戦する
*5。作っている方は小ロットのつもりでも、消費者からみれば極端な大ロットだ。
 
C企画を重視すること。若手のデザイナーに活躍の場を与える。よそのコピーはやらない。昨年なかった商品、他社にない商品を供給する。既成のイメージを打ち破った挑戦的な企画が売り上げにつながる。
   
 
D仕入先の持ってくる『お値打ち品』は安くても仕入れないこと。
 
E展示会は時期を遅らせること。回数を増やす。シーズンに引きつけて商談をする。
 
Fバーゲンを遅らせること、プロパーで売れないものは見切っても動かない。
 
Gシーズンが終わるまでは、売った物でも売れたと思わないこと。小売店は商品が売れないと、値段を下げるか返品をするかである。値下げしても売れない時代は当然、返品が増える。何も対策を立てなかった場合は、売ったつもりが全部返品になる事態もありうる。
 
H通年商品や定番を減らすこと。同じ物を何回も見せることが、客をうんざりさせる原因になる。
   
I海外生産は縮小の方向で考える。ぐずぐずしているとソフトランディングできなくなる。もっとも、国内物以上に新しい商品にすれば何も問題はないが、これが難しい。
 
J権限を本部から現場に移す。業務の集約は不利になる。
 
K在庫は圧縮させる。早めに商品を変えても、出口が滞っていてはなにもならない。売れ筋が散らばっているので、少なくても足りる。
」(同)
 
この文は、2周期も前の対立視の話ですから、今読むと古いと思うところもところどころあります。一番違うのは、生産や在庫の量でしょう。でも、大部分が今でも通用する話だと思います。つまり、どの時期の同一視や対立視の時期も、時代の違いを超えて似ているということです。ですから、最後に出てくる「対策」もほとんどそのままいまでも通用します。
 
 
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−トレンド予測 95段目−
次の文は、婦人下着メーカーのトリンプ・インターナショナル・ジャパン社長吉越浩一さんのコトバです。
直営店は"八ヶ岳MD""売り切り御免トコロテン戦略と呼んでいる。八ヶ岳のように山をたくさん連ね、どんどん新製品を押し出していく。定番定数を守って機会ロスを減らす戦略はもう古い。定数の設定を従来の70%程度に抑え、販売期間を短くし、売り切って次の新作を出す。圧倒的な品揃え、圧倒的な新製品、圧倒的なバリューがキーワードだ。
  商品の販売期間は、メーン商品は3カ月、スポット商品は1カ月と、以前に比べて2分の1から3分の1へと短縮した。大切なのは、『限定感』を出すことだ。今買わなければ明日はもうない、と思わせるようなスピード感が重要だ。ロットは小さいほどかっこいい。今好調なアパレルの業態も、こうした限定感を出しているところだ。
」(繊研新聞2005年9月15日付2面「大手アパレルのトップに聞く」より)
 
   
従来型のシーズンごとに実施する大型のキャンペーン企画のような大量生産・大量販売は時代に合わなくなってきた。最近は以前のように『キャンペーン1品番で70万枚』という計画が立てられなくなっている。テレビCMや雑誌広告などマスで大々的に宣伝するキャンペーンのスタイルが、将来は変わる可能性もあるだろう。」(同)
2周期前と似ているでしょう。
 
下着メーカーは、他のファッション分野に比べると、今でも大量生産、大量販売にシフトしていますから、なおさら昔と似ています。でも、大まかな傾向としては、ファッション分野全体が、今はこういう状態です*6
 
歴史は循環要因で見ると繰り返しです。過去を調べると、〔同一視・対立視〕の同じタイミングでは、企業や個人の行動がよく似ています。そして、その結果もよく似ています。過去の似た時代を知ることで、あなたがこれからやろうとしていることの
   
結果を先に知ることができます。過去の先輩が、あなたのかわりに試行錯誤と失敗をしてくれています。
 
 
 
 
 
*1 インディーズ
 大きな組織に属さず自分たちの力だけで活動している人。
 
*2 POSデータ
 コンビニのレジへ商品を持って行くと、店員がバーコードをピッピッピッと読み込むが、あれがPOSデータ。誰が、いつ、何を、いくつ買ったかが分かる。コンピューターで集計して利用する。
 
 
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−トレンド予測 96段目−
米3 短サイクル
 「短サイクル」は後に「QR(クイックレスポンス)」と呼ばれるようになる。初期は対立視であったので、「企画や発注の時期を実売時期に近づける」という意味であったが、同一視に戻ったときに、「同じものを繰り返し発注する」「ヒット商品を素早くコピーして店に並べる」という意味に変わった。
 
*4 企画部門の廃止ブーム
 ハイテク分野でこれに対応するのが研究所の縮小ブーム。
 
*5 オリジナルは苦戦する
 小売店は、売れているものは知っているが企画力がない。それでオリジナルはヒット商品のコピーになる。これも対立視のときに苦戦する理由。
 
米6 …こういう状態
 大まかにいえば、全消費財がいまはこうなっている。
   
(続く)
 
    
[同一視・対立視]の年表 
 
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目次 0 /
第1章 流行の原因には「特定要因」と「循環要因」の2つがある
1-1 / 1-2 / 1-3 / 1-4 /
第2章 「曲」と「直」で流行が変る
2-1 / 2-2 / 2-3 / 2-4 / 2-5 / 2-6
第3章 デザインの流行は「上比長」「下比長」に分かれる
3-1 / 3-2 / 3-3 / 3-4 / 3-5 / 3-6 / 3-7
第4章 「同一視」と「対立視」を知って流行を読む
4-1 / 4-2 / 4-3 / 4-4 / 4-5 / 4-6 / 4-7c
第5章 「アリ型人間」と「キリギリス型人間」は交互に現れる
5-1 / 5-2 / 5-3 / 5-4 / 5-5
第6章 「エレガンス」と「カジュアル」もしくは「束縛」と「自由」
6-1 / 6-2 / 6-3 / 6-4 / 6-5 / 6-6 / 6-7 / 6-8
第7章なぜ、まったく同じ流行が起きないのか(3つの理由)
7-1 / 7-2 / 7-3 / 7-4
 
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 07/11/27転載 10/05/12 脚注転載  14/04/29レイアウト変更

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