理詰めのトレンド予測 ウエブ版                           トップページへもどる 目次へもどる

     第4章 [同一視]と[対立視]を知って流行を読む
       3 希少性に価格が付く時期がある
         少ないこと、限られていること、足りないことが値打ちです。
オタクの人気にも循環がある
  対立視の時期には、希少性に価値を認める人が増えます。つまり、希少性に値段が付きます。
果物のような感覚で食べられる野菜が食卓をにぎわしている。甘くジューシーなので、生で食べるのが基本。いわば『フルーツ野菜』だ。消費者の『変わったものを手軽に食べたい』と言う思いが背景にある」(日本経済新聞2005年3月26日付s15面より) 
日本ベジタブル&フルーツマイスター協会講師の中村敏樹さんは『年中同じ味で安価に手に入るハウス野菜では物足りない人が増えている。フルーツ野菜を食べられる季節は短く、出回る量も少ない。この希少性が
昔ながらの旬を楽しむ感覚を呼び戻している面もある』と分析する」(同)  
  前回の対立視で希少性の流行といえば代表が、マボロシの銘酒ブーム*1です。「越乃寒梅」や「久保田」などの酒が当時、なかなか手に入らない超人気ブランドでした。
  でも初めは普通の流行だったのです。それがいったん手に入りにくくなると、その手に入りにくいことが、人気の原因になり、それがさらに希少性を高めるという、売る側にとっては好循環≠ェ続きました。そしてとうとう、一般の日本酒の十倍から数十倍の値段で売られるようになりました。
  マボロシの銘酒だからといって、特別に製造コストが高いということはありません。よい米を使っている、良心的に作っている
といっても、そんなコストはたかが知れています。事実、メーカーが問屋に出す時の値段*2は、ブームの時でも常識で理解できる範囲でした(越乃寒梅の出荷価格は標準品で1500円弱)。それが小売店の店頭では何万円もの価格になりました。
  小売店は、何でそんなに高い値段をつけたのでしょう。それでも買う人が大勢いたからです。手に入りにくいことに値段が付いたわけです。
  このマボロシの銘酒ブームが起こる前、1990年代の中ごろは、黄桜や剣菱などの、全国に流通しているナショナルブランドが売れていました。それよりさらに昔、3周期前の対立視の時は、その地方だけで売られている地酒のブームがありました。
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−トレンド予測 78段目−
  現在も対立視ですからマボロシの地酒ブームが起きています。ただ、今回は清酒ではなくて芋焼酎ですが、やはり人気銘柄は何万円という価格で売られています。
「  
クセのある味わいが女性をも引き付けるようになった本格焼酎。最近は芋焼酎が人気で、『3M』と称される『森伊蔵』『村尾』『魔王』は入手難から"マボロシの焼酎"とも呼ばれる。まれに店頭で見かけても、一・八g瓶で一本四万円近いこともある。多くの銘柄が三千円程度で手に入る中、この異様な高値はなぜか。
  現在『3M』を比較的手に入れやすいのが楽天などの仮想商店街やインターネット通販だ。ただかなり値は張り、一・八g瓶で最多価格帯は森伊蔵が約三万五千円、村尾が約二万一千円、魔王が約一万八千円。森伊蔵は出荷価格が二千五百円だから十倍以上だ。バブル的な現象に、蔵本も『本来の価格を考えると頭が痛い』(森伊蔵酒造=鹿児島県垂水市)と困惑する
」(日本経済新聞2005年9月17日付2面より)
これだけここだけ今だけ
  この地酒のブームに近いタイプの対立視を、ほかの流行で観察しましょう。それは、女子高生の間で使われている「方言」です。全国の人の間で流通しているものより、一部の地域の人の間でだけ流通しているものを高く評価する*3ところが、地酒ブームと同じです。
東京都内の女子高生の間で方言がちょっとしたブームになっている。全国区の関西弁はもとより、北海道から九州まで様々。「……だべ」「……じゃけん」と、会話の語尾を方言に変えるなど、友達同士だけで通用する言葉遊びの感覚らしい。標準語にはない語感が女子高生には新鮮で、仲間意識を強めるのに一役買っているようだ」(日本経済新聞2005年6月25日付夕刊10面3版より)
  少数派がかっこいいと評価される例として地酒や方言をあげましたが、同じことは他でもいえます。たとえばオタクがそうです。この場合は、少数派の商品がカッコいいのではなくて、少数派の自分がカッコいいのですね。
  最近、東京・秋葉原に大勢いると言われるアキバ系の若者が、小説「電車男」などで有名になり、関心を持たれていますが、これも対立視の活性期ならではです。
 「
東京・秋葉原のツクモパソコン本店にある『ロボット王国』。店にロボットの組み立てセットや部品がずらりと並ぶ。特に人気なのが、近藤科学(東京・荒川)の二足歩行ロボット『KHR-1』。一二万六〇〇〇円もするのに、すでに二〇〇〇セットが売れた。三〇代男性が主な購買層だ」(日本経済新聞2005年8月17日付7面13版「目覚めたオトコの消費」より)
 「ロボット王国の月間売上高は五年間で五倍以上に膨らんだ。」(同)
  少数派の商品と、少数派の自分がカッコいいのですから、対立視が活性期にあるときの消費市場は細かく分裂していきます。
  みんなと同じものを欲しがる同一視の時はナショナルブランドとそれを提供する大手企業に有利になります。逆に、他人と違うこ
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-トレンド予測 79段目−
とに価値を認める対立視のときは中小企業に有利になります。少し前までは同一視が続いていましたので、大企業の方が、小企業より元気でした。
 『大幅増益』『過去最高の利益』――11月に行われた04年9月中間決算発表で幾度となく聞いたフレーズだ。景気の底離れ、IT(情報技術)、自動車産業の好調、自助努力、コストダウンなどなど、増益要因を聞くとなるほどとは思う▼翌日、紙面を見た同僚から『なんで大企業はそんなにもうかっているの』と声がかかる。確かに庶民、生活者感覚から言うと、景気のよさなど微塵(みじん)も感じられず、上場企業の数字を聞かされてもつい『本当に?なぜ?』と聞き返したくなる気持ちもわかる」(繊研新聞2004年12月2日付1面「め・て・みみ」より)
  直近の同一視より1つ前の同一視の時も上場企業はやはり好決算でした。上場企業の経常利益は1996年まで3年連続で増加しました。当時の増益要因は「円安や合理化」だといわれていました。
  今は対立視の活性期ですので、それでも
徐々にですが元気のいい中小企業が増えてきました。
素材や外観にこだわったデザイン家電が人気を集めている。家電大手とは一線を画す小規模なメーカーの製品が、高価にもかかわらず販売が伸びている。直営店を相次ぎオープンする企業もある。機能よりインテリア性を重視したデザイン家電市場は着実に広がりそうだ。(会田聡)」(FujiSankei Business i06年1月12日付より)
  対立視の時期は、希少性に価値を認める消費者が増えているので、希少性を演出することがビジネスになります。「希少性」といっても、消費者は数値データで確かめているわけではありません。少ないように見え、たらないように感じられれば、実際の数字がそうでなくても評価するし、お金を払います。
  前回の対立視の時、私がコンサルティングした企業の企画担当の若者で、一本14万円以上するジーンズを買った人がいました。もちろん、ほかでは手に入らないような特別な手間のかかる後加工をしたジーンズなのですが、それにしたってたかがジーンズです。
手間のかかる加工といっても知れています。1400円のジーンズの100倍もコストがかかっているわけがありません。しかし当時は、その値段でも買ってくれる人がけっこういました。ジーンズの「越乃寒梅」ですね。
  ジーンズの「越乃寒梅」を買った人は、そのジーンズがどれだけ希少か数字で確かめているわけではありません。「どれだけ手間がかかっているのか、なぜたくさん作れないのか」という小売店の話すウンチクと、それを納得させるジーンズの見た目に金を払いました。
 
  対立視の時の消費者は、希少性を目で見えるようにしてやると、それを評価します。それで手作りが売れるようになります。
『手書き』がビジネスの現場で復権し始めた。直筆の文字が訴える力や印象の強さが見直されているからで、総合デジタルが当たり前と思っていると時代に遅れるかもしれない」(日本経済新聞2005年4月4日付「スイッチオン・マンデー」より)
  この手書き文字の流行は前回の対立視でもありました。
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−トレンド予測 80段目−
手作りの大量生産
(大阪市の通販、生活総合サービスでは)「一九九七年の創業時『時間に余裕があって』(古賀淳一社長)手書きの礼状を送ったところ反応がよく、本格的に始めることに」(同)
  この当時は、飲み屋のカンバンやお品書きを、わざとクセの強い金釘流手書き文字で書いたら繁盛店になったり、悪筆で書いたチラシが桁違いの反応を得たりしました。
  チラシの場合は印刷物ですから、大量生産、大量配布に決まっています。そういう場合でも手書き文字の方が効果的でした。対立視の時期は、大量生産が見え見えの場合でも、手作りの雰囲気を出すとそれなりの反応が得られます。
  イラストにおいて「うまい絵」から「個性的なへたうま」へ人気が移ったのは、いまから3周期前の1982年〜85年ごろの対立視です。メジャーなイラストは、ほとんどの場合肉筆ではありませんから、チラシと同様に大量生産、大量配布に決まっています。そういう場合でも「個性的
なへたうま」の方がよかったのです。
  現在も対立視ですから「へたうま」の流行が復活しています。
小栗左多里の『ダーリンは外国人』や上大岡トメの『キッパリ!』がベストセラーになって以降、マンガやイラストを中心にしたエッセー本が人気になっています」(日本経済新聞2005年8月6日付s7面より)
人気のあるエッセーマンガの絵柄には共通点があります。いわゆる『へたうま』タッチで、キャラクターは二頭身、三頭身にかわいらしくデフォルメされています」(同)
 「二頭身、三頭身にかわいらしくデフォルメされている」のは、「上比長」の活性期と重なったことも関係しています。
  「ダーリンは外国人」は2002年12月発刊です。タイミングは早すぎましたね。第2巻が出たのが2004年3月で、こちらはミリオンセラーになりました。早すぎるほどのタイミングで出た商品はロングセラーになりやすいので、続編の売り
やすさまで考えると、第1巻の方も早すぎることはありません。
  「へたうま」の流行はもうしばらく続きますが、「上比長」はすでに終わっているので、二頭身キャラではない「へたうま」がいまの主流です。
  これまでは「対立視」の時期でしたから消費者は小さな違いを気にします。基本性能、基本品質にうるさいですし、デザインにも個性や希少性を求めます。「個性重視」などという言葉は数十年来言われ続けていて私も食傷気味です。でも、それが本当にビジネスになるのがこの時期です。
 
  対立視の時期は、少ないことが欠点になりません。アダルト系のキャッチコピーもこのごろは「あなただけ」になっているそうです(実体験ではありません)。あなたの商品がたくさんは作れないのなら、それを強調しましょう。作れても作れないふりをしましょう。対象客を絞り込みましょう。あるいは、
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-トレンド予測 81段目−
絞り込んでいるふりをしましょう。
 
  トレンドが同一視に戻ると、素人くさい店、素人くさい接客、素人くさい商品がダメになります。プロであるあなたの出番です。
(続く)
 
*1 マボロシの銘酒ブーム
 淡麗辛口のブームでもあった。
 
*2 問屋に出すときの値段
 越乃寒梅の出荷価格は標準品で1500円弱。
 
米3 ……高く評価する
 参加者が限定されていることが魅力という点では、会員制交流サイトの流行もこのタイプ。
  
07/10/05 転載 
10/04/18 脚注転載

【サイト内関連ページ】
「自分色」に特注 割高でも個性買う

服好きつかむ地方セレクト店のSC店
  
 
  
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第1章 流行の原因には「特定要因」と「循環要因」の2つがある
1-1 / 1-2 / 1-3 / 1-4 /
第2章 「曲」と「直」で流行が変る
2-1 / 2-2 / 2-3 / 2-4 / 2-5 / 2-6
第3章 デザインの流行は「上比長」「下比長」に分かれる
3-1 / 3-2 / 3-3 / 3-4 / 3-5 / 3-6 / 3-7
第4章 「同一視」と「対立視」を知って流行を読む
4-1 / 4-2 / 4-3 / 4-4 / 4-5 / 4-6 /
4-7c
第5章 「アリ型人間」と「キリギリス型人間」 は交互に現れる
 5-1 / 5-2 / 5-3 / 5-4 / 5-5
第6章 「エレガンス」と「カジュアル」もしくは
    「束縛」と「自由」
6-1 / 6-2 / 6-3 / 6-4 / 6-5 / 6-6 /
6-7
/ 6-8
第7章なぜ、まったく同じ流行が起きないのか(3つの理由)
7-1 / 7-2 / 7-3 / 7-4
 
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