第6章[エレガンス]と[カジュアル]
もしくは[束縛]と[自由]
1 東京へ進出するのにもタイミングがある
限界を感じると他所へ行きたくなります。
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地域の性格の違いは流行に
大小を作る ファッション業界では、関西のショップやブランドがいっせいに東京へ進出するという出来事が近年2回続けて起こりました。1回目の進出ブームが2000年、2回目が2004年です。
次の文は、繊研新聞2004年8月10日付1面の記事から抜粋したものです。2回目に起こった進出ブームの話です。 「関西市場でここ数年、急速に力をつけ |
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エレガンスをベースとする関西の新興ブランドは、コンサバのブームが終わると同時に浮上してきた。コンサバのようにベーシックなアイテムに絞り込むのではなく、カジュアル、グラマラス、ゴージャス、セクシーといった要素を加えている。」
1回目のブームは「神戸(コンサバ)エレガンス」と呼ばれていたブランド群の東京進出でした。そのブームが沈静化した後、神戸エレガンスよりもっとカジュアル寄りのブランドが注目されるようになりました。この関西新興 |
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−トレンド予測 126段目− | ||||||||
ブランドの東京進出が2回目のブームです。
2回目の主役になったセレブ(有名人)カジュアルは、1回目のコンサバ(正統派)エレガンスよりは相対的にカジュアルですが、エレガンスのこだわりを残しているので、コテコテカジュアルではありません。エレガンスとカジュアルの中間に位置するファッションです。 「セレブカジュアルの源流は、99〜01年にブームとなったコンサバエレガンス(神戸エレガンス)の後期に台頭してきたブランド、ショップだ。コンサバに飽きてきた女性たちに向け、カジュアルでデザインを全面に出した洋服を提供するようになった。 コンサバエレガンスはシルエットの美しさを重視したベーシックアイテムが中心。カジュアルに流れていたヤング、OL服を一気に変えた。1ブランドでもあり、アイテム数、デザイン型数を絞り込み、タテ売り(1品番あたりの大量販売)し、高いプロパー消化率というビジネスモデルを |
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作った。
しかし、コンサバティブなうえ、デザインの幅が狭いため、新たなニーズが生まれた。シルエットのきれいさは残しながら、カジュアル、ゴージャス、セクシー、グラマラスという要素を加えたブランドが出てきた。インポート品とオリジナル品をミックスすることでデザインの幅を広げた。」(繊研新聞2004年10月5日付10面「沸騰セレブカジュアル」より) 神戸(コンサバ)エレガンスが「アイテム数、デザイン型数を絞り込み、タテ売り(1品番あたりの大量販売)」で成功したのは、当時が、他人と同じものを欲しがる「同一視」の活性期だったからです。また、セレブカジュアルがゴージャスなのは、台頭してきた時期がサイフの口がゆるんでいる「キリギリス」の活性期だったからです。 関西は、エレガンス系ファッションとギンギラファションの本場ですので、ギンギラエレガンスが売れる年が数年続くと、 |
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本場から東京への進出ブームが起こります。だからといって東京の流行が関西と違うわけではありません。どんな流行でも、売れる時期は西も東もほとんど同じですし、変化する方向もいっしょです。ただ、東京が持っている地域特性がこういったギンギラエレガンスの盛り上がりを関西より小さくします。この小ささを、東京の後進性と勘違いすると進出ブーム*2になります。
もしあなたが、魅力的なショップのオーナーだったとして、その店が客にあきられたら、ほかの土地へ行けばリセットできると考えるのは危険です。日本国内では、どこへ行っても循環要因のタイミングはほとんど同じです。新しい土地の人は、あなたの店が魅力的だった時代を知りません。つまり、新しい店はその時点での魅力だけで勝負することになります。過去の蓄積がある店でも売り上げが落ちているのに、それのない店が大当たりするはずがありません。 |
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(続く)
08/3/31転載 [自由・束縛]の年表、20歳レディス換算] *1 東京エレガンス 関西系コンサバエレガンスの直後に東京系エレガンスブランドが注目された。 *2 進出ブーム 東京系ブランドも同じ間違いをときどき犯す。 【関連ページ】 花盛り 大坂の夏 エレガンスはなくならない! |
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第1章 流行の原因には「特定要因」と「循環要因」の2つがある 1-1 / 1-2 / 1-3 / 1-4 / 第2章 「曲」と「直」で流行が変る 2-1 / 2-2 / 2-3 / 2-4 / 2-5 / 2-6 第3章 デザインの流行は「上比長」「下比長」に分かれる 3-1 / 3-2 / 3-3 / 3-4 / 3-5 / 3-6 / 3-7 第4章 「同一視」と「対立視」を知って流行を読む 4-1 / 4-2 / 4-3 / 4-4 / 4-5 / 4-6 第5章 「アリ型人間」と「キリギリス型人間」は交互に現れる 5-1 / 5-2 / 5-3 / 5-4 / 5-5 第6章 「エレガンス」と「カジュアル」もしくは「束縛」と「自由」 6-1 / 6-2 / 6-3 / 6-4 / 6-5 / 6-6 / 6-7 / 6-8 第7章なぜ、まったく同じ流行が起きないのか(3つの理由) 7-1 / 7-2 / 7-3 / 7-4 |
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