第1章 流行の原因には[特定要因]と[循環要因]の二つがある
4 流行も分解すれば超単純
こうすれば循環要因は目に見えるようになります。
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自分の目で見ることができないものの存在を仮定するわけですから、気をつけないと、オカルトや宗教などの精神世界に入ってしまいます。事実、私の話を熱心に聞く人のなかには、風水だの、占いだのに凝っている人もいます。マジメな社会学者が特定要因だけに固執する理由も理解できます。「目に見えないものなんか認めたら、錬金術や占星術のようなオカルトになって、収拾がつかなくなってしまう」と恐れるのでしょう。 流行現象は、消費者にとってはモヤ |
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モヤとあいまいなものですが、供給側から観察すると計測できます。「数が売れた売れなかった」「販売額が増えた減った」「在庫が残った残らなかった」「売って儲かった儲からなかった」、こうした事実はどれも数字で表せます。 循環要因は、見ることができませんし、多くの場合、直接計ることもできませんが、その存在を仮定することによって、数字で表せる流行現象のほとんどを説明できます。また予測することもできます。循環要因は遺伝学における遺伝子のようなものです。現在の我々は、遺伝子の正体がDNAであることを知っていますが、昔の遺伝学者はそんなこと知りませんでした。ではなぜ、遺伝子の存在を仮定したかというと、それを仮定することによって、複雑な遺伝現象が簡単に説明できますし、遺伝の予測も可能になるからです。 |
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私はやだよ、認めないよ、自分の目に見えるものしか信じないよ、…とあなたは言うかもしれません。それでもかまいません。ただ、循環要因というものを仮定することによって、流行の説明が楽になりますし、これからの予測もできるようになるのですから、実在するフリをして、ビジネスの役に立つ便利な道具としてお使いください。 循環要因は流行現象を説明する道具ですから、使い勝手がいいようにここで手直しをします。 循環要因はそれ自体が循環しています。つまり、循環要因は、「循環させる要因」ではなくて「循環している要因」です。それ自体が循環しているので、その結果である流行現象に循環が出てきます。それぞれの流行現象は、いくつもの循環要因が |
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−トレンド予測 15段目− | |||||||||||||
関係しています。流行現象はめちゃくちゃ複雑ですが、循環要因の動きは単純です。単純が組み合わさって複雑を作っています。 ここで、見えない循環要因を見えるようにするため、循環要因の模型の話をします。 シーソーを一つ考えてください。その両端には、互いに正反対の循環要因が乗っています。そして替わりばんこに上がります。上に来てから下がって再び上に来るまでの期間はいつも一定です。このカップル以外の別なカップルは別なシーソーに乗っています。周期はシーソーごとに違います。 正反対の循環要因が乗っているシーソーは、片方が上がっているときは、逆の端は下がっています。具体的に言うというとたとえば、重いものが売れているときは軽いものは売れません。「重い」と「軽い」は対(カップル)になっている循環要因で、片方が出ているときには、もう一方はお休みです。同じように、派手なものが |
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流行には逆がある
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人気のときは地味な物は売れませんし、地味な物が売れているときは派手な物がお休みです。「派手」か「地味」かというのも、同じシーソーの両端で、互いに向かい合っている循環要因です。正反対なものは、少なくとも同じ市場向けとしては共存できません。 でも、よく考えると、この「重い」「軽い」という分類はおかしいですね。重い軽いと言っても、ようするに質量ゼロの状態から、どれだけ離れているかという程度の違いです。質量という同じ性質の、同じ方向の程度の違いです。それを我々は、「重い」と「軽い」とは正反対のものであるかのように扱います。 他の例をあげましょう。あの人は背が高い、背が低い。この部屋は暑い、寒い。これも同じですね。背の高さは、身長ゼロの状態からどれだけ離れているかという、同じ性質の同じ方向の程度の違いです。部屋の暑さ寒さも、絶対零度からどれだけ離れている |
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かということで、同じモノサシの数値の違いです。どちらも正反対のものではありません。それを正反対のものであるかのように我々は扱います。 正反対の組み合わせになるのは、自然界が正反対のカップルでできているからではなくて、我々の頭が、外界をそう分類しているからです。シーソーの上で対になっている正反対の循環要因は、厳密には、人間の外にある自然会や社会には存在しません。我々人間の頭の中にだけあります。 あなたは、循環要因のシーソーをイメージできましたか。できたらそれを、時間というレールの上で動かしてみます。過去へ動かすと、流行の変遷を説明できます。説明できるようになったら未来へ動かします。未来へ動かすと、未来の流行を説明できます。つまり予測できます。 ある流行現象が、特定の循環要因ととくに相関が強い場合、その循環要因に合わせて浮沈を繰り返しますから、流行現象そのものに循環が表れます。 |
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-トレンド予測 16段目− | ||||||||
自分の扱う商品に循環があるように感じられたら、あなたは、この超簡単循環論を使って成功できるかも知れません。でもそれは確実ではありません。なぜなら、特定の循環要因と「相関が強い」は、「イコールだ」ではないからです。手抜きはやめましょう。循環要因で予測してください。 一つの流行現象にはいくつもの循環要因が働いています。だからといって、その全部を知らなければならないわけではありません。あなたが一つしか知らなかったとしても、その一つに関しては的中率100%なのですから、たくさんのハンデをもらってゴルフをしているようなものです。よほどドジを踏まない限りシングルプレーヤーに勝てます。 07/05/15転載 (続く) |
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【関連ページ】 ・流行の原因は頭の中にある ・基準点(参照点)が現状より上だとアクティブになる 「理詰めのトレンド予測 ウエブ版」1段目へ トップページへ |
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目次 0 / 第1章 流行の原因には「特定要因」と「循環要因」の2つがある 1-1 / 1-2 / 1-3 / 1-4 第2章 「曲」と「直」で流行が変る 2-1 / 2-2 / 2-3 / 2-4 / 2-5 / 2-6 第3章 デザインの流行は「上比長」「下比長」に分かれる 3-1 / 3-2 / 3-3 / 3-4 / 3-5 / 3-6 / 3-7 第4章 「同一視」と「対立視」を知って流行を読む 4-1 / 4-2 / 4-3 / 4-4 / 4-5 / 4-6 第5章 「アリ型人間」と「キリギリス型人間」は交互に現れる 5-1 / 5-2 / 5-3 / 5-4 / 5-5 第6章 「エレガンス」と「カジュアル」もしくは「束縛」と「自由」 6-1 / 6-2 / 6-3 / 6-4 / 6-5 / 6-6 / 6-7 第7章なぜ、まったく同じ流行が起きないのか(3つの理由) 7-1 / 7-2 / 7-3 / 7-4 |
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