優劣とくっついた循環は言い訳が要ります。
       
 大きさの流行で考えてみよう
  さきほどは硬さの流行でした。つぎは大きさの流行で考えてみましょう。
  冷蔵庫の大きさは、食品を入れる部分の容量で決まります。単位はリットルです。大型冷蔵庫を具体的に数字で表すと何リットルか知っていますか。110リットルです。110リットル以上が大型冷蔵庫です。
  ところで、あなたの家の電気冷蔵庫は何リットルですか。おそらく110リットルではありませんよね。それよりはるかに大きいはずです。110リットルは大型だという基準で言うと、あなたのうちの冷蔵庫は超特別大型冷蔵庫ですね。でもあなたは、超特別大型冷蔵庫だとは思っていませんね。それと、110リットルあるいはそれより少し大きい冷蔵庫を見たとき、大型だと感じませんね。
 
最近は400g以上ないと大型とは感じないでしょう。
  でも、昔は、110リットルでも大きい冷蔵庫でした。私が子供のころの1960年代は、電気冷蔵庫といえば、ワンドアで100リットル以下がほとんどだったのですから。以前の感覚では、110リットルは大型だといわれても納得がいく数字です。
それが、大型冷蔵庫のブームを何回も経験しているうちに、どのへんから大きいのか、どのへんから小さいのかの、みんなの判断基準が動いてしまったのです。大型小型の正式な定義は、そうちょくちょく変えるわけにはいきませんので、いまの人からみると、昔の「大型冷蔵庫」はずいぶん小さくなってしまいました。それで、昔だったら「大型」が流行しているときに売れた大きさが、最近の「大型」ブームでは売れない大きさになってしまったのです。
  大小の感覚は昔も今もあります。
 
これからだって変わりなくあります。それが、リットルという具体的な物理量になると、前とは違う流行になってしまうのです。
 
  技術革新を伴った流行は、どちらが優れているか、どちらが進歩かの判定がカンタンなものが多いので。現象の中に循環があることが見えづらくなっています。
  たとえば軽くするのが進歩なら、一気に軽くなって、機能の言い訳つきで少し重くなって、また一気に軽くなって、また機能の言い訳つきで少し重くなって、また一気に軽くなって…と変化します。進歩が限界に近づいて、一気に軽くならなくなっても、重いほうの流行に言い訳が必要なのは同じです。
  腕時計なら、「重い」方の活性期に、ただ単に重いだけの腕時計を作っても、大きな流行にはなりません。腕時計は軽い方がいいに決まっているという
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−トレンド予測 157段目−
常識がジャマをするからです。大きな流行にするには、自動巻きとか対ショック性とか、長寿命とか、高圧防水とかの言い訳つきで重くする必要があります。消費者は重い方が欲しかったのですから、重い方がいいのだという大義名分をつけてやれば、よろこんで買います。ノートパソコンを重くする場合も同様です。
 
  あなたが扱っている商品で、その機能の優劣で、劣の方が、活性期の循環要因と一致している時は、劣っているほうを採用する言い訳を一生懸命考えてください。できれば、その言い訳そのものも流行と一致させるようにしてください。言い訳を商品に取り込むことに成功すれば、あなただけ独走できます。
 
 
 
            
  
 
 
09/12/14転載 
 
目次 0 /
第1章 流行の原因には「特定要因」と「循環要因」の2つがある
1-1 / 1-2 / 1-3 / 1-4 /
第2章 「曲」と「直」で流行が変る
2-1 / 2-2 / 2-3 / 2-4 / 2-5 / 2-6
第3章 デザインの流行は「上比長」「下比長」に分かれる
3-1 / 3-2 / 3-3 / 3-4 / 3-5 / 3-6 / 3-7
第4章 「同一視」と「対立視」を知って流行を読む
4-1 / 4-2 / 4-3 / 4-4 / 4-5 / 4-6 / 4-7c
第5章 「アリ型人間」と「キリギリス型人間」は交互に現れる
5-1 / 5-2 / 5-3 / 5-4 / 5-5
第6章 「エレガンス」と「カジュアル」もしくは「束縛」と「自由」
6-1 / 6-2 / 6-3 / 6-4 / 6-5 / 6-6 / 6-7 / 6-8
第7章なぜ、まったく同じ流行が起きないのか(3つの理由)
7-1
/ 7-2 / 7-3 / 7-4
 
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