理詰めのトレンド予測 ウエブ版                                     トップページへもどる 目次へもどる
     第7章 なぜ、まったく同じ流行が起きないのか(三つの理由)
       4 同じものなのに昔はカジュアル、いまはエレガンス
       文化はカジュアルでスタートして、エレガンスになりすぎて終わります。
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 長期間で見るとみると判断の基準点が動いてしまうのは、物理量だけではない
  私が、言葉のカジュアル度の流行について話したとき、こう言いました。清少納言が書いた「枕草子」はエレガンスだ、大多数の人にとって「エレガンス」の時期でも読みたくないほど極端なエレガンスだと。でもそれは、今の私たちにとってはです。昔からそうだったわけではありません。「桃尻語訳枕草子(上)」を書いた橋本治さんによると、枕草子の文章は当時の話し言葉だそうです。だから現代女子高生の話し言葉に直訳できるのですね。橋本さんの直訳は徹底していて、単語の数や種類、順番までそろえてあります。
  これは他の平安女流文学も同じで、どれも話し言葉で書かれていました。そして、平安女流文学は
 
当時の貴族社会での評価が低かったそうです。現在でいうと少女マンガみたいなものだったそうです。当時、権威があったのは漢文で、こちらがエレガンスを代表していました。つまり、清少納言が書いた当時の枕草子は「カジュアル」だったのです。それが1000年たつうちに超エレガンスに変わってしまいました。
  1000年前も現在も、枕草子はやはり枕草子です。同じものです。変わったのは何がカジュアルで何がエレガンスなのかという基準の方です。〔エレガンス・カジュアル〕のシーソーの中心にある軸の位置です。枕草子のエレガンス化でもわかるように、ある具体的なモノが〔カジュアル・エレガンス〕のカップルのどちら側に入るかという判断基準は少しずつ動いていて、百年、千年とたつうちに、カジュアルだったものが反対のエレガンスへ移ってしまうという例がたくさんあります。カジュアルなモノは、
 
それ自身が大きく変化しなければ、長期的にはエレガンスになるのが原則です。
  エレガンス(束縛)の流行は、12年に1回ずつ何回も何回も繰り返し起こっていて、これからも繰り返し起こりますが、正確に繰り返しているのは、エレガンズ度の感覚で、同じ商品が繰り返すわけではありません。以前はエレガンス度がたらなくて、〔エレガンス〕の活性期に大流行できなかった商品が、何周期か後にエレガンス度がちょうど良くなって大流行し、また何周期か後にエレガンス度が強くなりすぎて、「エレガンス」の活性期でも大流行できなくなります。 そういう変化が〔エレガンス・カジュアル〕の循環とは別に、同時並行で起きていますので、特定の商品に、いつまでも続く12年周期の循環があるわけではありません。
  以前の(神戸)コンサバエレガンスの流行では、シャツブラウスが人気でした。シャツブラウスはエレ
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−トレンド予測 160段目−
ガンスの象徴でした。 でも、シャツブラウスは、もともとはメンズの下着です。メンズの下着を、若い女性が着るのですから、それも外側に着るのですから、これはどう見たってカジュアル(オキテ破り)です。現に、おなじようにメンズの下着出身のTシャツは、カジュアルウエアとして扱われています。
  では、出自はTシャツとほとんど違わないシャツブラウスがなんでエレガンスあつかいなのでしょう。Tシャツとどこが違うのでしょう。それは時間です。歴史の古さです。シャツブラウスも、女性のアウターとして着られるようになって間もないころは、いまのTシャツ同様にカジュアルでした。カジュアルの流行期に着られました。それが、長い年月のうちに、そのポジションがジリジリとエレガンスの方へ移っていきました。そして、いまでは、エレガンスのときの方が売りやすい商品に変わりました。
  Tシャツは今でもカジュアルですが、私が若者だったころに比べると、かなり、エレガンスの方にずれてきています。条件付きですが、女性のビジネスウエアにも取り入れられるようになりました。これから、年月がさらにたてば、Tシャツはもっとエレガンスに移っていって、ついには「エレガンス」の活性期の方が売りやすい商品になるでしょう。
 
  ジーンズも同じですね。ジーンズは今では、エレガンスブランドのショップでも売っていますが、私が若かったころは、ジーンズをはくだけで問答無用でカジュアルでした。カジュアルの象徴でした。はくとカジュアルになりすぎるので、中年はジーンズをはけませんでした。
  今でも、どちらかというとカジュアルですが、Gパンと呼ばれていたころと比べれば、ずいぶんおとなしい服になっています。
  はじめはカジュアルだったはずのものが、時間がたつと、いつのまにやらエレガンスになってしまうというのは他の分野でもよく見られる現象です。
  以前、本を読んでいたら、こんな話が出ていました。
 「今のシンクロナイズドスイミングは悲壮感があふれている。メダルが取れるの取れないのと、かなり深刻な顔で話している。でもさ、シンクロナイズドスイミングを始めた連中が、はじめどんな気持ちでやりだしたか想像してみようよ。水の中でダンスを踊るなんて、ジョーダンやおふざけ、お遊びに決まっている」
  斜め読みのうろ覚えなので正確ではありませんが、こんな内容のことを言っていたと思います。
 
これはスキーでも同じです。私が流行について研究を始めたとき、はじめは スキーのテクニックの流行から調べました。だから知っているのですが、スキーが日本に入ってくる前の、20世紀はじめのころの本を見ると、いまは体育会系のスポーツになっているスラローム(回転、いまの大回転を含む)は、馬車の後ろにつかまって滑ったり、大勢の人がそれぞれ前の人につかまって、ムカデ競争みたいに縦に並んで滑ったりするのと同列に扱われています。
  当時の常識では、斜面を降りるときはまっすぐ降りてくればいいので、スキーの先を斜面に対して横に向けるのは止まるときだけです。昔のスキーは、今のジャンプ競技からジャンプを取ったようなものでした。止まる気もないのにスキーを左右に振るのは、おふざけのお遊びでした。
  スラロームというコトバの意味はヘビです。クネクネと曲がりながらロングに滑ることから名付けられました。ターンをしているのに止まらないということが、当時いかに新しいことであったか、ネーミングからもうかがえます。
  スラロームに比べると歴史の浅いモグールやスノーボードは、おふざけでお遊びの雰囲気が
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−トレンド予測 161段目−
まだ残っています。これも時間の経過とともにエレガンスに移っていって、ついには「巨人の星」の登場人物みたいに、眉間にタテジワをよせたり、涙を流したりしながらやるものになるでしょう。
  新しくてカジュアルなスポーツにチアダンスがあります。ちゃんとした競技スポーツなのですが、これなどは「エレガンス(束縛)」に片寄った人から見ればスポーツとは認めがたいのではないでしょうか。
 「高校野球の試合などで、ポンポンをもって踊る華やかなチアリーダーに、目を奪われる人も多いでしょう。この"応援団"から生まれた「チアダンス」が、女子高生の間で人気を呼んでいます。競技会で活躍している高校などを訪ね、その魅力を取材しました。(中1・都倉直子、中2・藤川奈央美、中3・森口真衣、高2・峰ゆかり記者)」(読売新聞2005年9月15日付夕刊16面2版より)
 「100年ほど前、米国で、アメリカンフットボールチームを応援するために誕生した『チアリーディング』から派生。このうちアクロバット的な動きを除いて、ダンス部分を独立させたのが『チアダンス』。
  30年ほど前、競技スポーツとして認められた。競技時間は約2分半。ジャズダンスや
 
ヒップホップなどを踊り、その振り付けや表現力、ジャンプやキック、ターンなどの技術力、チームワークを競う。
  我が国の競技人口(推計)は高校、大学を中心に約1万2千人で、4年で4倍増。昨年秋、初のプロチーム『Team ACUVUE(チーム アキュビュー)』も結成され、スポーツイベントのショータイムなどで活躍中。日本チアダンス協会代表理事の前田千代さん(31)は『子ども向けの教室も増えている。習いたい人が多く、インストラクターの養成に力を入れています』と話しています
」(同)
 「競技スポーツとして認められた」のが、米国で「30年ほど前」ですから、日本ではさらに新しい。できたてほやほやのカジュアルスポーツです。今回のカジュアルの活性期に急成長しました。選手の眉間には、まだタテジワが入っていません。
  話を戻しましょう。
  循環要因のそれぞれの因子は、昔も今もこれからも変わりませんが、それは我々の頭のなかの整理棚の分類基準では変わらない、感覚では変わらないということで、具体的なモノや物理量になったときは動きます。動きうるといっても、歴史を論ずるほどの長期スパンでは変わるということで、
 
短期では変化を無視しても問題ありません。

あなたが企業のオーナーで、今のビジネスが、子供や孫の代になったときにどうなっているのか知りたければ、循環要因の循環だけを考えてはいけません。循環要因のシーソーの軸(基準点、参照点)がどう動くかを知る努力をしてください。
 
  以上で私の話は終わりです。この本には、私が今まで誰にも話していなかったトップシークレットも載せました。きっとあなたのお役に立つと思います。できれば本書を繰り返し読むことをおすすめします。おそらく、あなたの流行予測能力は格段に上がることでしょう。ビジネスであなたが迷ったとき、本書が道しるべとなることを願っています。
  もし、あなたが扱っている商品の循環要因について、少しでも不安や疑問をお感じならば、そのときは、私がお手伝いできるかもしれません。
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−トレンド予測 162段目−
* ……問答無用でカジュアル
  当時は、ジーンズのままではホテルに入ることができなかった。それだけジーンズが汚らわしかったということ。

 
2010/03/25転載
 
 
 
           
 
目次 0 /
第1章 流行の原因には「特定要因」と「循環要因」の2つがある
1-1 / 1-2 / 1-3 / 1-4 /
第2章 「曲」と「直」で流行が変る
2-1 / 2-2 / 2-3 / 2-4 / 2-5 / 2-6
第3章 デザインの流行は「上比長」「下比長」に分かれる
3-1 / 3-2 / 3-3 / 3-4 / 3-5 / 3-6 / 3-7
第4章 「同一視」と「対立視」を知って流行を読む
4-1 / 4-2 / 4-3 / 4-4 / 4-5 / 4-6
第5章 「アリ型人間」と「キリギリス型人間」は交互に現れる
5-1 / 5-2 / 5-3 / 5-4 / 5-5
第6章 「エレガンス」と「カジュアル」もしくは「束縛」と「自由」
6-1 / 6-2 / 6-3 / 6-4 / 6-5 / 6-6 / 6-7 / 6-8
第7章なぜ、まったく同じ流行が起きないのか(3つの理由)
7-1 / 7-2 / 7-3 / 7-4
 
   
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−トレンド予測 163段目−
紙に印刷されたもので読みたい方へ
  07年3月に理詰めのトレンド予測の原稿を冊子にしたものを作りました。内容はこの理詰めのトレンド予測 ウエブ版と同じです。ただ、紙に印刷されたものですのでやはり液晶画面で読むウエブ版よりは読みやすくなっています。連続して読み続けるには冊子版の方が疲れないでしょう。B4版ですからかなり大きいです。92ページあります。ご希望の方に無料でお分けします。
  冊子の内容はウエブ版と同じですので、プラスアルファーの情報としておまけを付けました。「ヒット予測のエキスパートになろう」「ヒット商品はこうして生まれる」を一緒にお送りします。   
  下のボタンを押すと、メールホームがあります。文字を記入するための細長い窓がいくつか開いていますから、そこに、あなたの名前と、発送先住所(ちゃんと届くように書いてください)、連絡用メールアドレスを記入してください。         
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  請求後10日たっても届かないときはご連絡ください。再発送いたします。
 
商業版の購入について
 商業版「理詰めのトレンド予測」は、06年12月に起こった特殊な事件により購入しづらくなっています。
 
  現在、以下の2つの方法が簡単です。
◆ アマゾンで購入できます。「新品」と「ユーズド商品」の両方があります。新品と表示されていて、価格が定価の場合は、文字どおり新品です。つまり、書店で売られている新刊と同じ状態です。ユーズド商品の場合は古本ですが、実際は新品もあります。本は再販商品ですので、定価以外の価格で売る場合は、新品であってもユーズド表示になります。
  アマゾンのトップページにある検索窓に「理詰めのトレンド予測」と入れて検索してください。出てきた画面にある「○点の全新品/中古品を見る」をクリックしてください。次のページで出品者の評価やその本の状態、価格が分かります。
  これはというものを選び、その右にある[ショッピングカートに入れる]ボタンをクリックします。次に[レジに進む]ボタンをクリックしてください。あとは指示の通りに進むだけです。
 
メールアドレスの書き込みを忘れずに。
 
◆ 森田洋一までご連絡下さい。
  書店から多めに購入していましたので、実費(定価1260円+メール速達便代340円)でお分けします。
連絡はメールやファックスでもかまいません。 
Email mm@e-yosoku.com
Fax 045-721-6888
折り返し、振込先などをお知らせします。
 
 
            
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